新星アコスタ、「期待しない」と語るも……ドライもウエットも変わらぬ速さで、MotoGPデビュー戦初日3番手/第1戦カタールGP

 大型ルーキーとして注目を集めるペドロ・アコスタ(レッドブルGASGASテック3)の2024年MotoGP開幕戦カタールGP初日は、その期待を集約したようなリザルトだった。アコスタ自身は「特に期待は持たずにここに来た」と語るが、結果はそう言っていない。

 期待通り、あるいは、期待以上と言っていいかもしれない。MotoGPクラスのルーキー、アコスタの開幕戦カタールGP初日である。

 初日は夜に降った雨によってスケジュールが変更され、フリープラクティス1のあと、フリープラクティス2が行われた。予選Q1とQ2を分ける唯一のセッション、プラクティスは土曜日の最初のセッションに変更されている。

 初日のアコスタの結果は、フリープラクティス1が3番手。そして、ウエットコンディションとなったフリープラクティス2も3番手で終えた。ドライコンディションでもウエットコンディションでも速いことを証明したわけだ。

 開幕前の公式テストから素晴らしいパフォーマンスを見せ、注目を浴びていた大型新人のデビュー戦初日は、テストでの印象を裏切らないものだった。しかし──Moto3とMoto2でチャンピオンを獲得して、実力は間違いないとはいっても──、デビュー戦をここまで周囲の期待通りの結果でスタートできるものだろうか。

 アコスタ自身は金曜日後の囲み取材で「特に期待は持たずにここに来た。僕はただ、楽しんでいる。MotoGPに上がったことを楽しんでいるし、チームが変わったことを楽しんでいる」と語っていて、クレバーな姿勢を貫いている。

 例えば、木曜日、マルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)とともに出席したプレスカンファレンスでは、マルケスが持つ最年少優勝記録を破る可能性について期待するか、と問われ、こう答えている。

「(レコードブレイクができるとは)思わない。今のMotoGPは(マルケスがレコードブレイクしたときとは)違う時代だ。レースで、集団で走っているときのバイクは大きく変わった。僕はたくさん走り込んだけど、多くのライダーの後ろについてレースを走ったわけじゃない。きっとタフになるだろう。みんなの期待がすごく高いとはいっても、期待で何かが変わるわけじゃないからね。今はこの(最年少優勝)記録について考えるときじゃないんだ」

 セパン公式テストから取材していると、上々のタイム結果であっても、アコスタに浮足立った様子は見られなかった。むしろ、己のやっていること、そして、己がやらなければならないことを明確に理解し、ただそこに向き合っているように見えた。その姿勢は、開幕戦カタールGPを迎えても変わらないようだ。

 こう聞けばちょっと堅実なライダーにも思えるが、一方で、アコスタはユーモアを交えて話す、茶目っ気のあるキャラクターを持っている。木曜日の囲み取材では、こんなことがあった。

 バイクの限界について質問されたアコスタは、「そこまでじゃないよ。プレシーズンではあまりクラッシュしていないし、僕には時間が必要なんだ。今はすべてがうまくいっているけどね。『仕事の80%は、努力の20%で達成され、残りの20%は、努力の80%で達成される』という言葉がある。だいたいそんな感じだ。とにかく、最善の方法で前進を続けなくちゃいけない」と言い、横に立っていたチームのプレスオフィサーに「どう思う?」と視線を向けた。そして「イエス? ほら、彼女もイエスって」と言って、また我々に視線を向けてにっこりと笑う。アコスタをぎゅうぎゅうに取り囲んだジャーナリストたちから、どっと笑いが起こる。アコスタ流のジョークなのだ。そんなとき、その場に流れるムードは弱冠19歳のアコスタがつくりだすものである。

 さて、初日を終えたアコスタの言葉は、つまり「そこまで結果を期待してここに来てはいないよ」ということになるだろうが、果たして、彼の言葉をそのまま受け取っていいものか。テストから(おそらくは、もっと以前から)、アコスタはすでにチャンピオンシップを「戦う」つもりでいるのが、語られるコメントに内奥されているように感じるのである。そして、それを裏付けるように、例えば金曜日後の囲み取材に現れたアコスタの表情には、自信が浮かんでいた。

 確かに、まだ開幕戦の初日を終えたばかりだ。けれど、アコスタにはすでに、「期待」をせずにいられない存在感がある。

カタールGP時点で19歳のアコスタは、マルケスが持つ20歳63日という最年少優勝の記録を破る可能性を持っている

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