社会のしくみや置かれた環境が犯罪を生むのか?薬物乱用などの犯罪に繋がる枠組みとは?【図解 犯罪心理学】

犯罪を社会的要因から見るアノミー理論

これまで、生物学的なアプローチや心理学的アプローチから犯罪の原因を見てきましたが、人を取り巻く社会に犯罪の原因があるのではないかという研究もあります。その代表的なものが、デュルケームやマートンによって形作られた、アノミー理論です。

アノミー理論では、社会の成員が共通して持っている目標(文化的目標)を受容するか拒絶するかをまず考えます。文化的目標とは、アメリカでは富や名声などがそれに当たりますし、日本では学歴などが該当するでしょう。

一方、それに対して法律や教育、勤勉に働くことなど、制度化された手段を受容するか拒絶するかを見ていきます。このふたつの軸の組み合わせでその人のスタンスがわかるのです。

マートンは、このような状態を文化的目標と制度化された手段の緊張状態として捉えました。

この状態において、文化的目標を受容して制度化された手段を拒絶した場合、非合法な手段を使ってでも、富や名声を得るということなので、犯罪につながっていきます。また、文化的目標を拒絶し、制度化された手段を拒絶する場合は、非合法であってもその場の快楽を追求するするという態度なので、薬物乱用などの犯罪につながっていくのです。

出典:『図解 眠れなくなるほど面白い 犯罪心理学』

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太

昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。

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