56歳で夫が死亡。ずっと専業主婦でしたが「遺族年金」だけで生活していけるでしょうか? 夫の年収は「600万円」でした

配偶者が受け取れる「遺族年金」とは

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者が死亡した場合に、その人に生計を維持されていた遺族が受給できる公的年金です。公的年金保険には基礎年金(国民年金)と厚生年金があるため、遺族年金にも遺族基礎年金と遺族厚生年金が用意されています。それでは、配偶者である妻の受給要件や受給額をみていきましょう。

・遺族基礎年金の受給要件
妻が遺族基礎年金を受給するための要件は、基礎年金の被保険者だった夫に生計を維持されていたことと、一定年齢未満の子どもがいることです。そのため、被保険者に生計を維持されていたとしても、子どもがいなければ受給できません。

・遺族基礎年金の受給額
妻が受給できる遺族基礎年金(令和5年4月分から)は、妻本人の年齢によって異なります。67歳以下の場合は年79万5000円と「子どもの加算額」で、68歳以上の場合は年79万2600円と「子どもの加算額」です。「子どもの加算額」は、2人目までが1人年22万8700円で、3人目以降は1人年7万6200円になります。

なお、「子ども」というのは、18歳になった年度の3月31日までの未婚の子と、障害年金の障害等級が1級か2級の20歳未満の子です。また、被保険者の死亡時に胎児だった子どもは、出生後に対象になります。

・遺族厚生年金の受給要件
妻が遺族厚生年金を受給するための要件は、厚生年金の被保険者だった夫に生計を維持されていたことです。子どもの有無は関係ありません。

・遺族厚生年金の受給額
妻が受給できる遺族厚生年金は、「夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額」です。これは、本来なら65歳から支給されるはずだった老齢厚生年金の、おおむね4分の3の金額ということになります。

被保険者の年収や被保険者期間などによって異なる報酬比例部分は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、自分で計算することも可能です。そこで、次の項目では、56歳で死亡した会社員の夫の報酬比例部分を計算したうえで、妻が受給できる遺族厚生年金を試算してみましょう。

56歳で死亡した会社員の夫の「遺族年金」はいくらか?

前記のとおり、妻が受給できる遺族厚生年金は、「夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額」です。では、56歳の会社員の夫が死亡した場合の遺族厚生年金はいくらになるのでしょうか。なお、夫は平成15年4月から老齢厚生年金に加入して令和5年に死亡、その期間の賞与を含む平均年収は600万円という条件で計算します。

・遺族厚生年金の計算例
賞与を含む報酬比例部分は、「平均標準報酬額×5.481÷1000×平成15年4月移行の加入期間の月数」という計算式で算出できます。平均標準報酬額は、各月の標準報酬月額と標準賞与の平均のため、年収600万円の平均である月額50万円を平均標準報酬額とします。

また、平成15年4月から令和5年までの加入期間は20年です。なお、加入期間が25年未満の場合は、加入期間の月数は300月とみなされます。そのため、報酬比例部分の計算式は「50万円×5.481÷1000×300ヶ月」となり、報酬比例部分の金額は年82万2150円になります。遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3のため、妻が受給できる金額は年61万6612円です。

まずは自分が受給できる「遺族年金」を試算してみよう

56歳で死亡した平均年収600万円の夫の遺族厚生年金を試算してみたところ、年額61万6612円という結果になりました。受給できる遺族年金が遺族厚生年金だけの場合は1ヶ月5万円程度のため、この金額だけで暮らしていくのは簡単なことではないでしょう。

もし足りないと思うのであれば、「中高齢寡婦加算」を申請してみましょう。「中高齢寡婦加算」は、「夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子どもがいない」といった要件を満たしていれば、受給が可能です。加算額は年59万6300円で、40歳から65歳までの間、遺族厚生年金とともに受給できます。

ただし、遺族基礎年金も受給できるのであれば、79万5000円と子どもの加算額が上乗せされます。そのため、遺族厚生年金と合わせれば、年150万円以上の遺族年金が受給できます。いずれにしても、まずは自分がどの遺族年金を受給できるのかを知ったうえで、受給額を試算してみることが大切です。

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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