勢いづく存在感「もっと海外の選手が喜んでもらえるイベント数に」SF近藤真彦会長、将来的な海外開催、レース数増を狙う

 3月9日、スーパーフォーミュラ開幕戦が行われている三重県の鈴鹿サーキットで、シリーズを運営するJRP日本レースプロモーションが記者会見『サタデーミーティング』を開催。JRPの近藤真彦会長と上野禎久社長が出席し、メディアからの質問に答えた。

 このなかで、将来のシリーズ拡大に対するJRPの基本方針が示された。海外戦の開催を含めた、イベント数の拡大を検討しているという。

 既報のとおり、スーパーフォーミュラは2023年に観客数等の数字を大きく伸ばし、2024シーズンについては年間22万人の観客数をJRPはひとつの目標として掲げている。この開幕戦の週末も予選日から多くの観客がサーキットに来場しており、上野社長によれば2日間で4万人を超える来場者数を見込んでいるという。

 会長就任から1年を迎えた近藤氏も「手応えを感じている」と今季開幕を迎えるにあたっての心境を語った。

「昨年は外から見れば『スタートダッシュを決めちゃったな』と思われたかもしれませんが、ここでもう1回自分でネジを締め直して、じっくりと今年1年様子を見させていただいて、また来年・再来年に迎えて徐々に盛り上がっていければと思います」と近藤会長。

「ただ、いま世界中でモータースポーツ(を取り巻く環境)が少し良くなってきているのではないか、と思うので、このブームの波に乗らない手はないと思っています。その波に乗って、スーパーフォーミュラを、過去すごく人気のあったF3000、F2に並ぶようなイベントにしたい」

 2024年のF1日本グランプリにおける併催レース開催を目指していたことが知られているスーパーフォーミュラだが、これに関してはF1側との交渉を「とても簡単にはいかないことだと思いました」と近藤会長は振り返っている。

「ただ、我々の側も、F1の側も、少しずつ歩み寄れていて、近い……いつの日か、F1の舞台で、エキシビションではない、スーパーフォーミュラのレースが見られる努力をしていきたい」と引き続き検討していくことを明らかにしている。

スーパーフォーミュラ第1戦のサタデーミーティングに出席したJRP近藤真彦会長

 これに関する補足として上野社長は「F1との併催だけにこだわっているわけではなく、さまざまなフィールドで我々のレースをお見せしたいという思いがありますから、(F1併催は)ワン・オブ・ゼムです」として、シリーズの今後の拡大戦略に言及した。

「当然我々は、いまの大会数で充分と思っていませんし、レースマイレージを増やしていかないとこのシリーズの価値が上がりませんから、そういった意味ではいろいろなところで、今後機会を検討していきたいと思います」

 続いて、2024年シーズンはテオ・プルシェールひとりのみとなっている外国籍ドライバーの参戦について記者から質問が上がると、上野社長は「今年プルシェール選手が来てくれて盛り上がっていますが、岩佐(歩夢)選手もJuju選手も、いわばヨーロッパで活躍して帰ってきたドライバーですから、必ずしも国籍ではなく、海外で活躍した人たちが日本にまたステップしてくるというラダー(階段)ができているのは、すごく嬉しいこと」と一概に参加ドライバーの国籍を判断基準にはしていないことを明確にした。

 ただ、「もちろん、海外の選手にたくさん来ていただこうと努力しています」と近藤会長は言う。

 実際、昨年オフのルーキーテスト前後では、海外ドライバー、マネジメントから国内チームにたくさんのアプローチがあった。その中で海外ドライバーがひとつの基準として考えているのが、実際にどのくらいの周回数、距離数を走ることができるのかという点だ。海外ドライバーはテスト走行時間、レースまでの練習走行時間などを考慮した上で、そのカテゴリーへの参戦を決めるひとつの目安としている。こういった要望に答える意味でも、JRPはレースイベント数を増やすことで応えようと考えているようだ。

「海外の選手にとって、スーパーフォーミュラはイベント数が少ないのではないか、という話もありまして、上野社長やチーム側ともいろいろ話をしまして、もっと海外の選手が喜んでもらえるイベント数にしなければいけないなと、来年以降考えています」(近藤会長)

 イベント数の増加について、これは国内大会を増やすのか、海外大会を増やすのかと問われた近藤会長は「鋭い質問すぎて……(笑)」と一瞬たじろいだが、上野社長は「『海外開催も視野に入れています』が答えになります」と明言した。

 この海外開催を含めたイベント数増加について近藤会長は「チーム側にも個々に話を聞いたことがあるのですが、大半のチームが賛成で、(イベント数を)増やした方がいいのではないか、というような意見をいただいているので、これは前向きに、少しずつ調整していきたい」とポジティブな姿勢であることを語った。

 また、海外ドライバーの参戦のきっかけのひとつになるFIAのスーパーライセンスポイント制度における獲得ポイント数の引き上げについても、「どこの扉を叩いて、点数をあげてもらおうか、どうしたら上げてもらえるのか、引き続き模索中」(近藤会長)だという。これらを総合して、シリーズとしての地位向上を狙うことになる。

 現在、F1に乗ることができるスーパーライセンスの獲得ポイント、過去3シーズン累積40ポイントに対して、FIA F2のチャンピオンが40ポイント、スーパーフォーミュラはチャンピオンは25ポイントと、スーパーフォーミュラはF2に大きく差がある状態だ。

 マシン、レース運営のクオリティの高さとは別に、スーパーフォーミュラは国内選手権、ドメスティックレースという分類でポイントが大きく下げられている背景があり、今まで以上に世界に広がるカテゴリーとなるためには、海外開催、イベント数などの見直しが必要になってくる。

 当然、上野社長が「大会数に関しても、今の数には満足していません。ただ、これはやはり我々(JRP)だけの話ではなく、チームの(経済的な)コンディションもありますし、ロジ(スティクス)の関係もあり、検討すべき課題がたくさんありますので、そこをしっかりと取り組んでいきたい」と話すように、開催に向けてのコストやリスクなどの精査が必要になるが、スーパーフォーミュラが世界的にさらに存在価値を上げるためには避けては通れない道となる。

スーパーフォーミュラ第1戦のサタデーミーティングに出席したJRP上野禎久社長

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