石垣島『知念商会』~学生の知恵が生んだ楽園の新名物「オニササ」~

「オニササ」って知っていますか? 石垣島へ行ったら、『知念商会』でこれを買わなくちゃ。お店には食料品だけでなく、ローカル感あふれる日用品なども並び、島の日常が垣間見られます。さぁ、お店に入りましょう。はいさ~い!

今回のゴー!ゴー!

『知念商会』(沖縄県石垣市)

オニササ発祥の店として知られるスーパー『知念商会』は、昭和56年(1981)創業。町なかの本店と宮良(みやら)店、2店舗の規模は大きくありませんが、知名度は絶大です。

オニササとは、おにぎりとカツなどのおかずを合体させたオリジナル総菜の総称で、その代表がおにぎり+ササミカツの略「オニササ」。その誕生はユニークです。

知念功・秀子夫妻が店を始めた頃、秀子さんは幼い子どもたちの子育て中。おにぎりやフライを作ってもパック詰めする時間がなかったため、セルフ方式にしたのです。すると、お昼ご飯をよく買いに来る近くの高校の生徒が、おにぎりとフライを袋の中で合体させる食べ方を発明。瞬く間にそのスタイルが生徒を中心に店のお客さんに広まると、やがて自然発生的に「オニササ」と呼ばれ始めました。いまから20年以上前のことです。

その手軽さと安さで、近隣の学生、通勤途中の人、近所の人々にオニササが知れわたると、マスコミも取材。個性的なスタイルを体験しようと、観光客も続々来店するようになりました。そしてみんな、そのシンプルかつ自分の好きな味の組み合わせのおいしさに驚き、いまも口コミで人気の輪が広がっています。

女将である秀子さんによれば、早番のスタッフは朝5時に出勤して米を炊き始め、7時には温かなおにぎり5種とおかず20種ほどをケースに並べ、開店させるとのこと。しかし午後遅い時間には、オニササも総菜も品薄に。閉店までにすべて売り切ることで、ロスにしません。

それでも、お客さんがひっきりなしに訪れる時間帯には、厨房からあつあつのおにぎりとフライを補充。一日に炊く米は5㎏を20回。なんとおにぎり約2000個分です。次々に補充されるおにぎりを見ると、温かいオニササを食べさせたいという女将の愛を感じます。そんな女将がうれしいのは、高校生が大人になって里帰りして会いに来てくれること。新名物もすでに故郷の味なのです。

女将の知念秀子さん。「オニササは袋ごとレジに持ってきて、お会計しようね~」。
オニササの手順 ①ポリ袋をかぶせた手で、ケースからおにぎりとおかずを取る。②備え付けの調味料で好みに味つけしたら、袋ごとギュウ~ッと握る。
オニササの人気ベスト3。1位(右):シソおにぎり+ササミカツ「オニササ」、2位(中):のりたまおにぎり+ポーク天「オッポー」、3位(左):ジューシー(炊き込みご飯)+カレーコロッケ「オニコロ」。

島の味がたっぷり、魅惑の石垣島総菜

「オニササ」以外も魅力満点! ご飯ものと相性のいい「八重山そば」も中サイズで。自社製造のチャンプルーや三枚肉煮付のほか、近隣7~8店の総菜が朝から勢ぞろい。

そば(中)は自家製三枚肉煮付入り。レジで箸と粉末だしを受け取り、セルフでお湯を注げば、あつあつの八重山そばに。
め~りぃ家手作りの沖縄おやつ「ちんびん」は、翌日の朝食にも。
山の郷 とぅーるの「島らっきょう塩漬け」。手間なく食べられ絶品。

お土産にもぴったりのご当地定番商品

島の特産品ほか、沖縄で愛される地元定番のメーカー品が多数。地域で生活する人々の日常食を置いています。オキハムの常温保存食「てびち」「中味汁」などもおすすめ。

石垣の人気乳酸飲料「ゲンキクール」に、新しい仲間「さんぴん茶ミルクティー」が登場(ともに473㎖)。ジャスミン茶とゲンキ牛乳のカップリングで南国カフェ気分を自宅でも楽しめる。
沖縄特有の茶葉たち。さんぴん茶、野草茶、グァバ茶はアイスティーでも美味。
日持ちする密閉タイプなので、お土産向きのジーマーミ(落花生)豆腐「石垣島プリン」(要冷蔵)。 
左から。泡盛に島唐辛子を漬け込んだコーレーグース「島とうがらし」、石垣特有の調味料「石垣の塩」「激辛 石垣島ラー油」「ヒバーチ」など、人気メーカー品も。
スタッフの新盛かなえさん。「私も愛飲する『石垣島珊瑚焙煎珈琲』ま~さんど~(おいしいよ~)」。

この棚に注目!

入って右側の生活雑貨売り場は必見! 「島ぞうり」に履き替えれば、心身ともにリラックス。ご長寿を祝うカジマヤーの必需品「風車」や、ご先祖様にお供えするあの世のお金「うちかび」なども並び、島の文化を知ることができます。

『知念商会』の詳細

知念商会(本店) 住所:沖縄県石垣市登野城1249-18/営業時間:7:00~19:00(オニササを含む総菜は売り切れ次第終了)/定休日:無/アクセス:新石垣空港から車20分

取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2023年6月号より

菅原佳己
スーパーマーケット研究家
執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、全国のご当地スーパーを行脚。埋もれた日常食の発掘とその魅力を伝えている。著書に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)など。

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