【金鯱賞】本命候補は芝2000mがベストのノッキングポイント 能力値1位プログノーシスの前から動けるのが強み

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過去7年で逃げ馬の3着以内が6回

金鯱賞は2016年まで12月開催で2017年にこの時期に移行。それ以降の過去7回中3回が稍重~重で行われたが、それでも高速馬場だった。この開催は最終日に高松宮記念が行われることもあり、クッション性が硬めで芝状態も良好のためタイムが出やすい。また開幕週らしく内枠の逃げ、先行馬が活躍しているのが特徴だ。

その中でも芝2000mはゴール手前の急勾配の途中からスタートして、向正面半ばまで坂を上っていくコース。この影響でより前が残りやすくなっている。昨年の金鯱賞では3~4角の外からプログノーシスが差し切ったが、逃げたフェーングロッテンが2着、その直後の2列目の最内を追走していたアラタが3着と前有利な展開ではあった。

過去7年で逃げ馬が1着2回、2着3回、3着1回と活躍しているレース。特に3~4角でペースアップしていくことが多い中で、最短距離を立ち回れる逃げ、先行馬の一発には要注意だ。

能力値1~5位の紹介

【能力値1位 プログノーシス】
これまで12戦して着外に敗れたのは6走前の中日新聞杯と前走の香港Cのみ。6走前は前後半5F61秒9-57秒5の極端なスローペースで、3角手前の下り坂から一気にペースアップする展開。1、2、3、5着馬が3~4角で内を通った馬だった。一方、プログノーシスは6番枠から好スタートを決めながらもブレーキをかけて後方2番手を追走し、4角で大外をぶん回していた。直線序盤で外に出されると1頭だけ違う末脚で伸びて、勝ち馬キラーアビリティとクビ+クビ+ハナ差の4着。絶望的な位置から距離ロスの大きい競馬になりながらも崩れなかったあたりに強さを感じさせた。

また前走も前後半5F63秒13-58秒87(推定。また、日本の計測法だと前半5Fはおおよそ62秒13)と極端なスローペースで、3~4角で一気にペースアップする展開。6番枠から出遅れて後方から追走し、道中は前にスペースを作って最後方付近の内目で進めていた。3~4角でそのスペースを詰めて4角で外に誘導したが進路を作れず、馬群を割ってラスト1Fで進路を取り切った。しかし、最後はジリジリとなって上位3頭から1馬身近く離された5着に。ここでもそれなりの強さを見せているが、3着ヒシイグアスに見劣ってしまったのは確かだ。

プログノーシスは出遅れ癖があって、前半で位置を取ることができない馬。昨夏の札幌記念のように馬場が悪化して時計が掛かれば、出遅れて序盤は後方でも向正面で捲って3角までに好位にもってくることも可能だ。しかし、高速馬場では道中でよほどペースが緩まないとそれができない。

ただし、今回は何が何でも逃げたい馬は不在で先行馬もそこまで揃っておらず、案外3角までにある程度の位置が取れている可能性もある。昨年の金鯱賞のように極端なスローペースにならなければ、末脚の速度の違いで勝ち負けする可能性もある。能力値上位馬では最有力だが、例年の金鯱賞の傾向に沿った馬ではないので、対抗くらいに止めたい。

【能力値2位 ドゥレッツァ】
未勝利勝ちから破竹の5連勝で菊花賞を制した上がり馬。前々走の日本海S(3勝クラス)は前有利の流れだったが、中団馬群の中目から3~4角で内目を通って、直線で上手く外に誘導すると、序盤でスッと3番手に上がった。ラスト1Fで先頭のレッドラディエンスから3馬身ほどあった差を一気に差し切って半馬身差で勝利した。ドゥレッツァはこの日本海Sでキャリア5戦目にしてソールオリエンスらと同等の指数を記録。まだ伸びしろが見込めることや同馬よりも前の位置から動けることから菊花賞では本命に推した。

その菊花賞は大外17番枠からやや出遅れたが、そこから先行して1周目の3角手前でじわっとハナを取り切った。スタンド前でペースを落として外をチラッと見て、1~2角でさらに1F13秒台までぺースを落とし、2角で外から並びかけてくるパクスオトマニカを行かせた。向正面で外からリビアングラスも上がって2列目の3番手。3~4角でペースアップして行く中で最短距離を通って4角で前2頭の間を縫ってスッと外に出し、先頭のリビアングラスと3/4差で直線へ。直線では同馬もしぶとかったが、ラスト1F手前でかわし、外から迫るタスティエーラも突き放して3馬身半差で完勝した。

菊花賞はC.ルメール騎手の天才的な騎乗が光った。また、あれだけの出入りの激しい競馬をノーブレーキでやれてしまう技術にも感服した。ステイヤー色の強い馬でなければああいう競馬はできないが、勝ちに行って消耗度の高いレースをしたことでそのあと強いダメ―ジが出てしまったようだ。その後、予定していた香港ヴァーズも有馬記念もスキップしてここに出走となった。

今回は万全の状態ではないこと、斤量59kgを背負うことだけでなく、この距離だと中京開幕週で前有利の展開が想定される中で、前の位置は取れないなどの弱点もある。ただし、ここでは唯一のGⅠ馬であり能力上位。通用する可能性はある。

【能力値3位 ヤマニンサルバム】
前々走のオクトーバーSと中日新聞杯を連勝した馬。前々走は1番枠からまずまずのスタートだったが、外からハナを主張するシルトホルンを制してハナを取り切った。道中は2番手のシルトホルンとは約2馬身差だったが、3番手以下には大きな差を付けて単騎逃げに近い形。3~4角でペースを引き上げて、2馬身差のリードを保ったまま直線へ。ラスト1Fでシルトホルンにやや差を詰められたが、1馬身半差で完勝した。

前走の中日新聞杯は7番枠から五分のスタートだったが、外からハナを主張したホウオウビスケッツについて行く形で進出して上手く2列目の内に収めた。道中は前にスペースを作って3列目に下げ、3~4角で最内を通りながら仕掛けて、4角でスペースを潰して直線で外に誘導。直線序盤で追い出されると、しぶとく伸びてラスト1F地点で先頭に立った。ラスト1Fで外からハヤヤッコに追撃されたが、振り切って3/4馬身差で勝利した。

ヤマニンサルバムは昨年の金鯱賞では7着に敗れたが、近2走は前に行く競馬で成績が向上。久々に逃げた前々走で自己最高指数を記録していることから、逃げがベストと言える。今回はエアサージュ陣営がハナを示唆するコメントを出しているので2番手からの競馬になる可能性もあるが、前に行ける優位性はある。しかし、今回は休養明けで相手強化の一戦。前走からさらなる上昇度があるかが微妙だ。

【能力値4位 ヨーホーレイク】
2021年の皐月賞5着、日本ダービー7着馬。そこから7ヵ月の休養明けとなった前走の日経新春杯は、同世代で皐月賞、日本ダービーでともに3着のステラヴェローチェを下して優勝。嬉しい重賞初制覇を達成した。

前走は10番枠から出遅れて後方からとなり、そこから中団馬群の中目まで挽回していった。道中は我慢して動かず、3~4角では前のステラヴェローチェを追いかけるようにして徐々に進出。直線序盤で外に誘導して追い出されると一気にステラヴェローチェに並びかけた。ラスト1Fではマッチレースとなったが、最後までしぶとく伸び続けて3/4差で勝利した。

前走は差し有利の展開ではなかったが、3着馬に3馬身3/4差をつけており強い内容だった。ただしヨーホーレイクはその後に屈腱炎を発症し、今回は2年2ヵ月の長期休養明けからの復帰戦。ライバルのステラヴェローチェは先週の大阪城Sで、屈腱炎による1年7ヵ月の長期休養から復活を果たしたが、復帰1、2戦目は芝とダートのマイル戦を使われ、7、16着に敗れていた。

ヨーホーレイクに関してはかなりの長期休養明けの重賞でいきなり通用するのは簡単なことではないと見ている。無理に走らせてしまえば、また故障してしまうリスクもある。さらに今回は直前までプール調教をしており、底知れぬ力はあるが狙いにくい。

【能力値5位 ハヤヤッコ】
もともとは芝からダート路線に転向し、レパードSを追い込み勝ちした馬。ところが近年は再び芝路線に転向し、2022年に函館記念を優勝。当時の函館記念は極悪馬場で前後半5F60秒1-63秒5のかなりのハイペース。本馬は1番枠からまずまずのスタートを切ると、そこからかなり押して積極的に位置を取り、好位直後の最内を追走した。道中も前が飛ばしていく展開を徐々に位置を上げ、3~4角で外に誘導。4角で先頭に立ったタイセイモンストルに外から並びかけ序盤で先頭に立つと、食らいつく道悪の鬼マイネルウィルトスを振り切って3/4差で勝利した。

この函館記念の勝ちっぷりから「ハヤヤッコは時計の掛かる馬場でこそ」というイメージが作られたが、近走では時計の速い決着にも対応できるようになった。前走の中日新聞杯はかなりのスローペースで好位の最内を立ち回ったヤマニンサルバムの勝ちパターンだったが、3~4角で中団の外を回り直線で大外に出されると、最速の上がり3Fタイムで抵抗。勝ち馬ヤマニンサルバムに3/4差まで迫った(勝ち時計は1分58秒8)。

ハヤヤッコは完全に芝馬に姿を変えたと言っていい。ただし、前走でおおよその能力を出し切っており、状態面をピークに持ってくるのは難しいと見ている。また、末脚ではプログノーシスに見劣ってしまうだけに、今回で勝ち負けを意識するとなると前の位置を取る必要性がある。

【能力値5位 エアサージュ】
3歳1月の新馬戦を勝利し、デビュー4戦目には古馬混合の芝2600m2勝クラス札幌日刊スポーツ杯を勝利。菊花賞では伏兵評価されたほどの馬だ。その翌年に屈腱炎を発症し、長期休養を余儀なくされた。復帰初戦にダートを使い、無理をさせなかったことが吉と出て、その後はしっかりと体調が良化。芝に戻ってからは3勝クラスで3連続2着に善戦し、前走で飛鳥Sを勝利してオープン入りを果たした。

前走は1番枠から好スタートを決めたが、外からマテンロウアレスがハナを主張してきたので、同馬を行かせて2番手を追走。道中はスローペースを楽な手応えで追走し、3~4角では持ったままマテンロウアレスに並びかけた。直線序盤では同馬にやや離されたが、そこから盛り返してラスト1Fで先頭に立つと、そのまま突き抜けて1馬身半差で完勝した。

今回は逃げを示唆するコメントが出ており、ここならマイペースで逃げられる可能性が高い。しかし相手が一気に強化されるので、いきなり通用するかは何とも言えないところがある。上手く脚をタメて逃げられればチャンスはあるが、重賞クラスとなると後続各馬が3~4角から動いてくるだけに、善戦はあっても馬券圏内となると微妙だ。

本命候補は芝2000mがベストのノッキングポイント

ノッキングポイントは一昨年6月の東京芝1600mの新馬戦で、ラスト2F11秒2-11秒1を記録。一昨年のこの時期の2歳馬でラスト1Fを加速しながらの11秒1は驚きの数字で、記録した指数も優秀だった。まともなら重賞も取れると見ていたが、その後伸び悩み、皐月賞にも出走できなかった。しかし、日本ダービーでは15番人気ながら、最後の直線で中団中目からしぶとく伸び続けて見せ場のある5着に善戦。そして2走前の新潟記念では古馬を相手に重賞初制覇を達成した。

2走前は3番枠からまずまずのスタートだったが、二の脚で楽に先行。そこからじわっと好位に下げて、外の各馬を行かせて3列目の最内を追走した。3~4角も最短距離を通って直線へ。序盤でスッと反応してすぐに2列目に上がり、ラスト2Fでは半馬身差で先頭。そのまま踏ん張って、外から伸びるユーキャンスマイルを振り切って1馬身差で完勝した。

毎日杯→日本ダービー5着→新潟記念1着といえば、2018年のブラストワンピースを思い出す。そのブラストワンピースは休養明けの新潟記念で優勝した反動で、菊花賞では指数ダウンの4着。ノッキングポイントも菊花賞で反動が出ると見て軽視したが、想定どおりの結果だった。

ただし、15着と大敗したのは、デビュー2戦目で東京芝2400mのゆりかもめ賞を勝利したブラストワンピースと違って、長距離適性がなかったことが大きい。また、鞍上も距離延長を意識して折り合い重視で乗り、向正面で動きがあった時に中団の内で包まれ、動きたいところで動けなかったのも敗因のひとつだ。

ブラストワンピースは菊花賞4着後の有馬記念で優勝している。ノッキングポイントは同馬ほど強くはないが、今回は有馬記念クラスのメンバーではないので通用してもいいはず。また距離も芝2000m前後が好ましく、巻き返しを期待する。芝3000mを使った後の一戦になるので、そこまで前には行けないだろうが、ライバルのドゥレッツァやプログノーシスよりも前から動ける点は好ましい。今回の本命候補だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)プログノーシスの前々走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。



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