STU48今村美月 グループ卒業を機に「羞恥心を取っ払った」写真集で見せた“キャプテンの背中”

今村美月

サンタクロースの赤い衣装に身を包んだメンバーたちが華やかに歌い踊る。ますますヒートアップする会場。ファンにとっては幸せなクリスマスを迎えられるはずだった……。

2023年12月24日の夜、広島港にほど近いライブハウスで開催された「STU48 Christmas Live 2023」も終わりに近づいたとき、ステージ上でSTU48のキャプテン・今村美月さんが突如、卒業を発表した。客席からは「えー!?」と驚きと嘆きが入り混じった声が上がる。目を真っ赤にして今村さんを見つめるメンバーもいる。現場は騒然となった。

あの日から約2カ月が経った2月中旬、どこかすっきりとした表情でインタビュー取材に応じた今村さんは、卒業を間近に控えた今の心境や、近い将来のことなどを語ってくれた。

●写真集の経験がステージでも生きる

実はインタビューの前日、今村さんはソロコンサートツアー「Beautiful moon」東京公演で2時間を超える熱演を見せていた。7人から成るビッグバンドを後ろに従えて、STU48、EGO-WRAPPIN ’、椎名林檎などの楽曲をアレンジしたナンバーを堂々と歌い上げた。普段のアイドルとしてのフレッシュな立ち振る舞いとは違い、大人びた雰囲気を醸し出していた。

そうしたパフォーマンスができた要因の一つに、写真集の経験があったと今村さんは明かす。3月4日に発売した自身初の写真集『月の位置』では、水着やランジェリーといった露出の多い姿にも挑戦。本人の言葉を借りるまでもなく、すべてをさらけ出した作品となっている。

「今までは恥ずかしさもあって見せなかったものを出すきっかけになりました。(写真集の撮影によって)羞恥心みたいなものを取っ払うことができ、人としてまた一つ強くなれたと思います」

具体的には、メンタル面がより強固になったそうだ。そこで得た経験がさっそくソロツアーで生きた。

「カッコいい曲を歌ってキメキメ過ぎている自分を見て、周りから引かれないかなという不安はありました。でもステージに立ったら、逆にやり切らないとカッコ悪いし、写真集で度胸もついたから、むしろ『もっと私を見て!』という気持ちになれましたね(笑)」

もともとダンスと歌には定評がある今村さんに新たな武器が加わった。また、個人的な感想だが、彼女の中低音域の歌声はジャズやブルースの音楽にしっくりきていて、可能性の広がりを感じた。米国・ニューヨークやフランス・パリあたりに武者修行へ出てみてはどうかと今村さんにぶつけたところ、海外で見聞を広めることにも興味を抱いた様子だった。

●「ずっと好きでした」

新たな世界との出会いもあれば、これまで過ごした場所との別れもある。

1期生としてグループに加入し、およそ7年間在籍したSTU48を3月末に卒業する。今村さんはアクターズスクール広島時代にもアイドルグループ・SPL∞ASHで活動していたため、実に10年以上に及んだアイドル人生にも終止符を打つことになる。

STU48では2020年1月、岡田奈々さんからバトンを受け取り、2代目キャプテンに就任。個性あふれるメンバーたちをけん引してきた。個人活動においても意欲を見せ、グループとしての「初」を次々と達成した。主演舞台、映画出演、書道の個展、そしてソロツアー。このような前例を作ったことで、後進に道を切り拓いたという自負がある。一個人の活動としてはやり残したことはないと言い切る。

他方、グループのキャプテンとしては不甲斐なさもあったと言葉を詰まらせるが、どんな時でもメンバーにとって一番の味方でいられたと胸を張る。「STU48のことがずっと好きでした」と一点の曇りもない瞳で語るほど、今村さんにとってかけがいのない居場所だった。

●キャリアの見本になりたい

これからはどんな道を歩んでいくのだろうか。女優として芝居に打ち込みたいと今村さんは力を込める。もちろん、歌やダンスも続けていきたい。そして、いつかはミュージカルに出演できれば嬉しいと夢を語る。

「自分がやりたいことを突き詰めていきたいと思っています。歌もダンスもお芝居も好き。元々が楽観的な性格なので、好きなことをして、楽しく幸せに暮らせたらいいなって」

STU48からは離れてしまうが、変わらず他のメンバーのことも気にかけていく。自分の新しい挑戦が、彼女たちのセカンドキャリアの見本になることを望む。

「今いるメンバーにいい背中を見せる、じゃないですけど、卒業してこういう活動もできるんだっていう希望を与えられたらいいなと思います。STU48にいたことだけが誇りになるのではなくて、その先の人生にも誇れるものを皆が持ってもらえるように頑張りたい」

今村さんの卓越した能力は、ひとたびステージに上がったり、大勢の人前に出たりすると、瞬時にスイッチが切り替わり、歌手や役者といったプロフェッショナルの顔つきになること。そして、常に笑顔を絶やさず、周囲の人たちを巻き込みながら多幸感ある空気を作り上げることではないだろうか。

さらには幼少期から長年培ってきたダンスと歌もある。これらにいっそうの磨きをかけていくことで、前途洋々たる未来が待っているはずだ。

いまむらみつき
24歳 2000年2月19日生まれ 広島県出身 O型 趣味:音楽鑑賞 特技:歌にハモリをつけること 2017年よりSTU48の1期生として活動を開始。2020年よりSTU48のキャプテンを務める。昨年末グループからの卒業を発表し、3月31日には卒業コンサートを開催予定。そのほか最新情報は公式X(@michu219_stu48)にて

※STU48今村美月1st写真集「月の位置」は東京ニュース通信社より発売中

写真◎HIROKAZU

(取材・文/伏見学)

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