【3.11東日本大震災から13年】今こそ見直したい育児中ファミリーの防災「大地震が起きたら、どこにどう避難する?」

能登半島地震の被災地では、いまだ日常に戻れない方々がたくさんいます。写真提供/清永奈穂先生(2024年2月奥能登にて撮影)

2011年3月11日に発生した東日本大震災から、13年がたちます。日本は世界でもっとも地震が多い国の一つ。もし今、大きな地震が起きたら、育児中のファミリーはどこに避難したらいいのでしょう?そして避難時は、抱っこひもとベビーカーどちらがいいのでしょうか?
実際の災害現場に行って調査をしたデータを基にした安全教育を行っている防災の専門家、清永奈穂先生に子連れ避難の注意点について聞きました。

「大地震では、発生から8秒が生死を分ける!」2歳を過ぎたら親が隣にいない想定で身を守る力をつけて【専門家】

【揺れたときの初めの動作】ワンオペ育児中に地震!?赤ちゃんの「頭と首の後ろ」を守ることが何より大切

防災訓練で首の後ろを守る「かめのポーズ」を練習する子どもたちの様子。「両手で頸椎を守るのがポイントです」 写真提供/清永奈穂先生 

――赤ちゃんとママ、またはパパの2人だけのいわゆる「ワンオペ育児中」に地震が起きたらどうすればいいのでしょうか?

清永先生(以下敬称略) 地震が発生したら、赤ちゃんと自分の身を守ることが何より大切です。赤ちゃんを抱っこし、頭と首の後ろを守るようにして、テーブルや机などの下、または、「物が落ちてこない・飛んでこない・倒れてこない・動かない」安全なスペースに体を隠します。

ママかパパがけがをするとその後の避難に大きな影響が出て、赤ちゃんの身が危険になる可能性があります。とくにワンオペ育児中に被災した場合は、赤ちゃんの身を守りつつ、自分の身もおろそかにしないでください。

――頭と首の後ろはどのように守るといいのでしょうか?

清永 近くに座布団やクッションがあれば、それで赤ちゃんの後頭部から首の後ろを覆って守ってあげましょう。首の後ろを守るのは、頸椎(けいつい)がダメージを受けると命にかかわる可能性があるためです。

子どもが2歳ごろから身を守るポーズを練習しておくのもおすすめです。両手で頭を守る「だんごむしのポーズ」も有名ですが、頭は頭蓋骨にある程度守られているのに対して頸椎は無防備のため、私は両手を首の後ろに回して指をしっかり組み、体を小さく丸める「かめのポーズ」をおすすめしています。

2011年の東日本大震災は強い揺れが約3分続きました。地震の揺れがおさまるまで「5分は頑張る」という気持ちでいるといいでしょう。大切なのは、揺れがおさまってもすぐにはむやみに動かないこと。倒れた家具や割れたガラスの破片が家の中に散乱している可能性があります。周囲をよく観察してから、慎重に行動を開始します。ただし、今年1月の能登半島地震のようにすぐに続けて大きな余震が起きることもあります。そのときはためらわずに安全なところに動きましょう。

赤ちゃんが歩ける年齢なら靴を履かせ、まだ歩けない年齢なら抱っこを続けます。大人も靴を履きましょう。赤ちゃんを手で抱っこすると、両手がふさがってしまい、ワンオペ育児中だと避難の準備に支障が出ることも。できれば両手が空くよう抱っこひもで抱っこできるといいですね。テレビやラジオで情報を収集し、屋外の状態も見ながら、必要に応じて避難の準備を始めます。近所に頼れるママ友(パパ友)や親せきが住んでいる場合は、一緒に行動するのもいいでしょう。

【避難所について】大きく分けて2種類。 必ず自宅の最寄りの避難所の確認を

指定避難所の様子。写真提供/清永奈穂先生(2024年2月奥能登にて撮影)

――避難する場合はどこに行けばいいのでしょうか?

清永 避難所には大きく分けて2つの種類があります。「指定緊急避難場所」と「指定避難所」です。

指定緊急避難場所とは、公園や緑地、グラウンドなどで、大きな地震後に発生しがちな火災や大きな余震などから避難者の命を守るための広いスペースのことを指します。大きな地震のあとは、まずは指定緊急避難場所に避難します。いざというときに迷わないために、自宅の最寄りの指定緊急避難場所までの道順などを平時に必ず確認しておきましょう。

また、避難のために外に出るときは、火事などの被害を防ぐために、自宅のブレーカーをおとし、ガスの元栓を閉めるのが基本です。

指定避難所とは、地震などで自宅の倒壊や焼失などの被害があった場合、または被害が起こる恐れがある場合に、避難者を一時的に受け入れ、保護するために開設される場所のことです。学校や公民館などの建物が利用されることが多いです。指定避難場所に避難する必要があるかどうかは、自宅の状況によります。指定緊急避難場所に避難したあと、自宅の被害が大きくなければ、自宅に戻っていいでしょう。

【避難時のポイント】ベッド代わりにも活躍するベビーカー。でも避難時に持ち出すのなら、進めなくなったら置いていく覚悟で!

被災後はがれきが道に散らばっていることも。写真は、床にいろいろなものを置き、ベビーカーで通れるか試している防災訓練の様子です。写真提供/清永奈穂先生

――指定緊急避難場所に避難するときは、抱っこひもとベビーカー、どちらで移動するのがいいのでしょうか?

清永 赤ちゃんと親の状況や、地震の被害状況にもよるので、どちらがいいかは一概には言えません。ただ、私は子連れ避難では抱っこひもがあったほうがいいと思います。赤ちゃんと密着して抱っこすることができ、リュックなどで荷物を持つこともできます。おんぶができるタイプの抱っこひもならおんぶをすると、抱っこよりも足元が見えやすいため安全性が高く、両手も空くので荷物も持ちやすいでしょう。

ベビーカーは赤ちゃんだけでなく、荷物を載せることもできますし、ベビーベッド代わりに利用することもできます。ただし、地震後の道路にはがれきやガラスの破片などが散乱しています。ベビーカーががれきにはばまれて進めなくなったり、エアータイヤの場合はパンクしたりする恐れも。また、ベビーカーに載せていると赤ちゃんの位置が地面に近いため、地震で発生したこまかいチリなどを吸い込んでしまう危険性があります。ベビーカーを持って避難したい場合は、ベビーカーに荷物を載せて進めるところまで進み、いざとなれば置いていく覚悟でいるのがいいと思います。

――そのほかに移動時に気を付けたいことはありますか?

清永 避難のために移動している間も、自分と赤ちゃんの安全を守ることが最優先です。人の多い場所や障害物の多い場所では、赤ちゃんを抱っこした大人がバランスを崩して転倒する恐れもあります。大人が倒れると、抱っこされている赤ちゃんにまで危険が及びます。ハザードマップなどでなるべく安全なルートを確認ししながら避難するのが理想です。また、何か困ったことがあったり心細かったりする場合は、周囲の人に助けを求めるのも大切です。一人で何とかしようとせず、互いに支え合えるといいでしょう。

監修/清永奈穂先生

取材・文/たまひよONLINE編集部

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大きな地震のあとはパニックになりがち。いざというときに少しでも落ち着いて行動するために、普段から赤ちゃんと一緒に自宅の最寄りの指定緊急避難所まで歩いてみるなどの練習をしておくといいでしょう。赤ちゃんを抱っこひもでおんぶして荷物をベビーカーに載せる、赤ちゃんをベビーカーに載せて荷物を持つなど、いろいろな状態をシミュレーションしておくのが理想です。家族で一緒に“セルフ防災訓練”をしてみてください。

●記事の内容は、2024年3月の情報で現在と異なる場合があります。

『おおじしん、さがして、はしって、まもるんだ: 子どもの身をまもるための本』

子どもが1人のときに大地震が来たら、子どもはどのように自分の身を守ればいいかを、親子で読んで学べる絵本。練習方法や、日ごろから親子でやっておきたいことも。清永奈穂 文・監修 石塚ワカメ 絵/1430円(岩崎書店)

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