中国の科学者、ホタル成虫の発光器形成メカニズムを解明

中国の科学者、ホタル成虫の発光器形成メカニズムを解明

ホタルの成虫の発光器が5~7日のさなぎの期間に新たに発生し、急速に成熟して発光機能を備える過程を示す図。(資料写真、武漢=新華社配信)

 【新華社武漢3月9日】中国の華中農業大学植物科学技術学院の付新華(ふ・しんか)教授のチームが、ホタルの成虫の発光器が形成されるメカニズムを解明した。発光昆虫の発光や明滅制御の研究に新たな視点を提供した。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に論文が掲載された。 

 付教授によると、ホタルの発光は一種の生物化学反応で、腹部にある特有の発光器で行われる。ホタルの発光器は幼虫と成虫で形態が異なる。幼虫は腹部の後ろから2番目の節に球形または半球形の発光器が1対あり、暗闇で不規則に明滅し、天敵に警告する。成虫の発光器はこれとは別に発達し、さなぎの期間にわずか5~7日で何もない状態から発生して急速に成熟し、発光機能を備えるようになる。

 ホタルの成虫の発光器がいかなるメカニズムで形成されるかは、これまで研究者を悩ませてきた問題だった。同チームは、比較ゲノミクス、比較トランスクリプトミクス、RNA干渉などの技術を用い、水生ホタルの一種、Aquatica leiiのさなぎの前期、中期、後期における発光器を研究した。研究の結果、カギとなるホメオボックス転写因子AlAbd-BとAlUnc-4が相互作用し、ルシフェラーゼ発現の開始と調節を行うことを発見。いずれの転写因子を抑制してもホタルは発光しなくなった。

 研究では、ホタル成虫の発光器の形成過程において、ルシフェラーゼが細胞質で大量に発現することが重要な要素であることが明らかになった。もう一つの重要な要素は、ペルオキシソームの膜輸送タンパク質が細胞質中のルシフェラーゼをペルオキシソーム内に輸送するのを制御する必要があることで、ホタルの発光の生物化学反応はペルオキシソーム内でしか正常に行われない。研究により、AlAbd-BとAlUnc-4がまさにペルオキシソームの膜輸送タンパク質によるルシフェラーゼの輸送を制御する転写因子であることが確認された。

 付教授は、ホタル成虫の発光器の形状と明滅頻度はホタルの種多様性の基礎であり、ホタル成虫の発光器の形成メカニズムの解明は、ホタルの種多様性の形成メカニズムをさらに深く理解するのに役立つと説明した。(記者/侯文坤)

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