「黒部熱」金沢で高まる セレネ美術館特別展、初の週末

セレネ美術館の学芸員によるギャラリートークを楽しむ来場者=金沢21世紀美術館

  ●21世紀美術館で17日まで 秘境の美浸る

 秘境の美が美術ファンの心をつかんだ。金沢21世紀美術館で開かれているセレネ美術館(黒部市)の金沢特別展「黒部峡谷 日本画展-秘境・黒部からやってきた名画たち」(富山新聞社、北國新聞社特別協力)は9日、会期中初の週末を迎え、多くの人でにぎわった。日本画の巨匠・平山郁夫氏らによる秀作群を鑑賞した来場者は「本物の風景も見てみたい」と興奮気味に語り、金沢でにわかに「黒部熱」が高まった。

  ●10日もトーク

 宇奈月温泉にあるセレネ美術館開館30周年と同温泉開湯100周年の記念企画で、同美術館が金沢で出張展示を行うのは初めて。常設作家7人のうち文化勲章受章者の平山氏、日本美術院理事長で日本芸術院会員の田渕俊夫氏、日本美術院同人の宮廻(みやさこ)正明氏の力作23点を展示している。

 この日はギャラリートークが行われ、セレネ美術館の中村賢一主任学芸員が、地上から立ち入れない場所をヘリコプターに乗ってスケッチした平山氏の「幻の瀧」をはじめ、余計な線をそぎ落とし、色彩の重なりで奥行きを表現した田渕氏の「S字峡」、綿密な取材を基に細部まで描き込んだ宮廻氏の「後曳橋」などを紹介した。

 東京から訪れたビデオグラファー薄井優果さん(43)は「作家の視点で描かれた絵を見ることで本物の景色も見てみたくなった」と関心を寄せていた。

 黒部、金沢両市は加賀藩ゆかりの歴史を共有し、広域での観光誘客を進めている。工事中の黒部ダムを見学したことがあるという金沢市の河合忠博さん(85)は、北陸新幹線敦賀開業が16日に迫ることに触れ、「金沢の多彩な文化と黒部の雄大な自然の魅力を一緒に発信すれば、より多くの人が北陸を訪れると思う。地元でも紹介していきたい」と話した。

 鑑賞をきっかけに「北陸応援割」の利用を検討する人も。羽咋市の天田淑さん(77)は「息子が黒部に住んでおり、宇奈月温泉には何度も訪れたが、セレネ美術館には入ったことがなかった。応援割を使って温泉宿に泊まり、美術館にも足を運んでみたい」と笑顔を見せた。

 会期は17日までで、入場無料。ギャラリートークは10日午前11時と午後3時からも行われる。

  ●OEK宇奈月で公演

 セレネ美術館が併設されている黒部市芸術創造センターセレネでは10日、開湯100周年を記念したオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の弦楽四重奏コンサート(富山新聞社後援)が開かれる。午後2時開演で、OEKの精鋭メンバーが出演する。

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