除染土は「県外で最終処分」進まない理解と計画 残り21年、約束の行方は 福島

福島第一原発周辺の中間貯蔵施設に一時保管されている除染土について、国は2045年に福島県外で最終処分すると法律で定めていますが、その道筋は立っていません。県外への理解も進まない中、中間貯蔵施設の地権者は危機感を募らせています。

大熊町出身の門馬好春さん(66)。現在、東京で暮らしています。

門馬好春さん「原発事故は多くの方々の人生を変えてしまいましたので、あっという間という言葉では言い表せない年月でした」

実家は、中間貯蔵施設の敷地にあります。門馬さんはいま、危機感を抱いています。

門馬さん「13年が経って、赤信号に警報音が鳴り出した。不信感を含めて、問題が複雑化している」

決まらない処分候補地 除染土の量「減らす」対策も

大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設には、サッカーコート2200面あまりの敷地に、除染で出た土や廃棄物が一次保管されています。

環境省 中間貯蔵総括課・服部弘課長「2年前に市街地で行われていた除染で生じた除去土壌については概ね搬入完了というところまで来ている。現在は、帰還困難区域で行われている除染で発生した除去土壌を中間貯蔵施設に輸送して保管している」

2015年3月から始まった除染土の搬入。これまで、東京ドーム11杯分の量に及んでいます。帰還困難区域の避難指示解除に向け、今後、搬入量は増える見通しです。こうした除染土は、2045年までに県外で最終処分することが法律で定められています。しかし、その候補地は、決まっていません。

浦部智弘アナウンサー「除染土はたまり続ける一方だが、今後対策は何が大事になってくるか?」 服部課長「県外最終処分の約束に向けて、貯蔵している『除去土壌の量を減らすこと』が重要だと考えている。一つの対策は、放射能濃度が低い土壌については『再生利用』ができると考えていて、公共工事などでしっかりと管理したうえで土壌を資材として使っていくことを考えている」

最終処分に向け、重要となるのが「除染土の量を減らすこと」です。施設内では、再利用に向けた実証事業が進められています。そこには、高さ5メートルほどの盛り土に道路が作られていました。国は、1キロあたり8000ベクレル以下のものを公共工事で再利用する計画を進めています。

服部課長「真ん中の部分の下、約3メートル部分で除去土壌を用いています。上の方は、汚染されていない土を被せています。再利用の用途を拡大していきたい。実際ものを作ってモニタリングをしていく中で安全性を確認していき、一般の方々にも知っていただきたい」

しかし、計画をめぐっては問題も…。

除染土再利用 都内では反対の声

おととし、国は、除染土を東京と埼玉で再利用する実証事業の計画を発表しましたが、現在も実施には至っていません。東京では、新宿御苑の花壇で再利用する方針でしたが、住民から反対の声が相次ぎました。

新宿御苑への放射能汚染度持ち込みに反対する会・平井玄さん「福島の復興というのは非常に重要なことだと思う。本当にそのためになるのだったらそれは協力していいと思うが…」

新宿御苑の実証事業に反対する平井玄さん(71)。これまでの国の説明では、十分に理解を深めることはできないと話します。

平井さん「最初の環境省の説明会は、新宿の住民だけに限定して28人のみが参加。新宿御苑の問題についてはもっと広域で東京都全体、西部全体の誰でも参加できる説明会をやってきちんと答えてほしい」

浦部アナ「処理水の時には、理解が得られないまま放出したとの声もあったが今回の場合『理解の基準』は何になるか?」 環境省 中間貯蔵総括課・服部課長「私どもとしましては『理解の基準はない』と考えている。しっかりと丁寧な説明が続けていくことが重要だと思う」

「いつの間にか批判の矛先が福島に…」

福島県外での理解が進まない状況について、大熊町出身の門馬さんは、福島とそれ以外の地域で対立構造が生じるのではないかという懸念を抱いています。

門馬好春さん「本来、国・政治側が批判を受けなければいけないが、いつの間にか批判の矛先が福島県に向けられてくる。事故を起こしたわけではない被害者側に向けられる」

この問題を、他人事ではなく自分のこととして考えて欲しいと訴えています。

門馬さん「開かれた対話、それがまず必要だと思っています。30年でも短いのに、あと21年と近づいている中で、やはり時間というのは非常に足りないと感じている」

環境省が去年行った調査では、除染土の福島県外での最終処分についての認知度は、県外では2割程度ということで、まだ全国的な理解は進んでいません。約束の時まで残り21年、最終処分までの道のりは、不透明なままです。

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