「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。第27回は【セージ】です。
本連載の他、桐原春子さんの記事はをご覧ください。
料理にもガーデニングにも使いやすい【セージ】
料理に使ってよし、ガーデニングによしの「セージ」。ローマ時代より「長寿の薬」として知られ、栽培されていたハーブです。
別名/ヤクヨウサルビア(和名)
科名/シソ科
性質/常緑小低木
樹高/30〜80㎝
欧米では誰もが知る代表的なハーブ
「名曲『スカボロー・フェア』の歌詞に、『パセリ、セージ、ローズマリー&タイム』とあるように、セージは欧米で1000年以上も前から使われている、基本中の基本のハーブです」と桐原春子さん。
肉料理のにおい消しと風味づけの他、いわしなどの魚料理や、豆、ポテトなどの野菜料理、パン、スープなどにも幅広く使われています。
「葉を手のひらではさんで軽くたたくと、少し薬っぽいような独特な香りが立ち上ります。この香りが絶妙の隠し味となりますが、使いすぎるとクセが強く出てしまいます。慣れない方はごく少量を入れたり添えたりと、山椒のような使い方をしてみるといいですね。生でもドライでも利用できます」
セージは古来、薬効の強い植物とされ、葉に熱湯を注いで作るティーは、歯肉炎や口内炎になったときの口内洗浄剤やうがい薬として利用されることも。歯磨き粉が登場する前は、歯を白くし、歯ぐきを丈夫にするものとしても知られていました。
ちなみにセージは明治期に日本に渡来し、薬用サルビアと呼ばれてきました。公園などで見られる赤花のサルビアやチェリーセージ、アメジストセージなどは同じサルビア属ですが薬効は期待できず、料理には基本種のコモンセージを利用します。
常緑の葉をクラフトや庭の彩りに
「葉は独特の色合いで、庭の彩りにおすすめ。やや肉厚の葉はクラフトにも使いやすく、秋に茎ごと乾燥させ、リースにしても楽しめます」
丈夫で耐寒性があり、常緑であるのも好ポイント。
「害虫の被害も少なく、雪の下でも越冬します。5年ほどたつと株が木質化するので、挿し木で苗を作っておくとよいでしょう」
葉も花も魅力的なコモンセージ
まろやかなラインを描く長卵形の葉形と、セージグリーンと呼ばれる白みを帯びた緑の葉色が、何ともいえずいい感じ。
初夏には涼やかな薄紫色の花をつけ、葉は冬にブルーグレーへと変化して庭に趣を与えます。
変種で斑入りのトリカラーセージや黒みを帯びたパープルセージと合わせて、大人っぽいシーンをつくってもすてきです。
活用アイデア① セージの葉の型押し
白いハンカチにセージをメインにした、ハーブの葉の型押しを。配置や色は自由に考えてみて。
セージの葉の裏側は、葉脈がくっきりとあらわれ、しっかりとした質感なので、絵の具は葉の裏側にのせるのがポイント。葉の上に敷いた紙の上から、葉の輪郭や葉脈を強めになぞると、きれいに仕上がります。
ハンカチ2枚を縫い合わせて綿を詰め、クッションにしてもかわいい!
作り方
❶アクリル絵の具を器に出し、筆でセージの葉の裏側に絵の具をのせる。
❷白いハンカチにセージの葉の裏側をのせ、葉の上に紙を敷く。紙の上から葉の形に沿って親指で押していく。アクリル絵の具と筆で文字などを書き足してもよい。
活用アイデア② たらのソテー セージ風味
豚肉と相性がよく、ソーセージの語源になったともいわれるセージですが、他の肉類や魚との相性も抜群。
たらのような白身魚でも、あじやいわしのような青身魚でも、いつものソテーやフライにする前に、セージと組み合わせてみましょう。葉を1枚貼りつけるだけで、全体にふんわりと香りが移っておいしさもひとしおです。
作り方(1人分)
❶甘塩たら1切れにこしょう少々を振り、小麦粉適量を薄くまぶす。
❷フライパンにオリーブ油適量を熱し、たらを皮目を下にして焼く。途中、上下を返し、中まで火を通し、火を止める。
❸たらの皮目にセージの葉(フレッシュ)1枚をのせて蓋をし、余熱でセージの香りをたらに移す。
❹③を器に盛り、オリーブ油、塩、こしょうでソテーした好みの野菜(すべて適量)を添える。
撮影/川部米応
※この記事は「ゆうゆう」2020年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
監修者
園芸研究家 桐原春子
英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。