貯金はしたいが、なかなか思うように貯まらない、と嘆く人も多いのではないでしょうか。収入からあらかじめ貯金分を引いておく「先取り貯金」を、貯蓄テクニックとしてよく耳にしますが、「毎月一定金額を貯められる人にとっては、かえって遠回りに思える」と、「月7万円」生活を実践する人気YouTuberのかぜのたみ氏は言います。かぜのたみ氏の著書『低コスト生活 がんばって働いている訳じゃないのに、なぜか余裕ある人がやっていること。』(朝日新聞出版)より、詳しく見ていきましょう。
先取りするのは「貯金」ではなく「生活費」
節約や貯金の話で必ずおすすめされているのが収入から先に貯金分を引いておくという「先取り貯金」ですが、私の生活には合いませんでした。
毎月一定金額を貯める余力があるなら、先取り貯金はかえって遠回りに思えたのです。
私が色々な貯蓄法を試す中で、先取り貯金について気になった点を挙げてみます。
一つ目は、収入によって生活水準が上下する、という点です。
かつての私は、転職などをして収入が上がったとき、一緒に生活水準も変化していました。
貯金額を固定(先取り)すると、収入の変動に応じて生活費に回せる金額が変わってしまうのです。
できることが増えた! 買えるものが増えた! というポジティブな面がある一方、なんらかの事情でまた収入が下がったら、できることが減ってしまいます。
ずっと収入を右肩上がりにできればいいですが、会社員だと難易度が高すぎます。
収入の増減に一喜一憂するのに、疲れたことがありました。
毎月の余剰金が「頑張ったご褒美」に消えていく…
二つ目は、余裕ができてもその分使いがち、という点です。
残業代が多いなど、いつもより臨時で収入が増えた際、突如発生した金額を扱うのが結構面倒でした。
「収入の20%を貯金する」として先取り貯金するにも、毎回、今月の給料×20%の計算をして、先取りしておくのが超絶手間なのです。
いつもより多めの分は丸ごと貯金! というルールを自分で決めていればいいですが、そうはいかないのが世の常……。
会社に勤めていたときの私は、「頑張ったご褒美」に毎月の余剰金を普通に使っていました。残業代が多くてもその分、出勤前に気合を入れるためのモーニング代、息抜きのためのお菓子やお酒代、残業が続いて気力が尽き果てた際の外食代……などにお金が消えることになり、“生活するための本来の生活費”の見直しをしたいのに、「日々のストレスの対処」に振り回されて、上手く支出を見直せないことがありました。
月々一定金額を貯金できる人は、生活費を固定にした方が貯蓄スピードが速くなるのではないか、というのが私の結論です。
「先取り生活費」方式なら、必要な生活費を明確に把握できる
そんな私が最終的にたどり着いたのは、「生活費を先取り」して、それ以外の金額は全て貯金にまわす方法です。
この“先取り生活費”方式に切り替えてから、貯金のスピードは速まり、生活費の無駄もかなり削減できるようになりました。
“先取り生活費”方式を採用することで、「よりよい生活のために(無限に)稼ぎ続けなきゃ!」という思いから解放された気がします。
自分の生活費の目安を自分で決めて過ごせるようになると、心地よく日々過ごすにはどのくらいの生活費が必要なのか、明確に把握できるようになります。
生活費をあまり変動させないのなら、どのくらい収入を確保すればいいのかの匙加減がはっきりするのもいいところです。
自分で生活費を決めて、支出を管理して、その範囲で暮らす。
自分で自分の生活のフレームを先に決めてから過ごす方が、貯蓄額をずっと気にし続ける生活よりも俄然ラクで、精神衛生的にもとてもいいと思っています。
そして自分で生活費を決めていくうちに、不思議と「もっと小さくできないのか」と思うようになってくるのです。
私は、この生活費を先取りするパターンがあったからこそ、自分なりの低コストライフを深めていくことができました。
では実際に、私がどんな流れで生活費を管理しているのかをご紹介します。
一番見直しが効くのが「交際費」
私は、「固定費」と「変動費」をそれぞれの金額の把握と支払いがしやすいように、大まかには次のような支払い方法に振り分けています。
私にとっての支出管理は、日常生活の中で支出頻度が高い項目の節制と、自分の最低限の生活費を把握するためなので、それがわかればよし、としています。
・家賃など生活のハード面的な「自分の工夫で金額を変えにくい」ところ→口座引き落とし
・食費など生活のソフト面的な「自分の工夫で金額を変えやすい」ところ→手元のお金から支払い
「自分の工夫で金額を変えやすい」支出の中で、一番見直しが効くのが交際費です。
多くの人が聖域にしがちな費用ですが、「交際費はかかるもの」と放置するのではなく、もし会社の飲み会代なら「自分の工夫で変えにくい」、友達とのお茶代なら「自分の工夫で変えやすい」と分けてみるのです。
見極めのコツは、相手や状況によって「自ら払いたい交際費」なのか、「あまり払いたくない交際費」なのかを考えてみることです。
つまり、交際費の見直しから、人間関係の見直しに変化させるのです。
ドライに聞こえるかもしれませんが、いくらお付き合いが大事だとはいっても、自分は一人しかおらず、時間にも限りがあり、全てには対応しきれません。
それならはじめから、自分が無理せず対応できる広さと深さで人間関係を築いた方が、大切な人との時間を有意義に過ごすことができると思うのです。
人付き合いのために自分と生活費を削り、自分を削った分ほかの娯楽費などで補填しなければならなくなってしまうのは、本当に本末転倒です。
お金や持ち物の管理と同じく、人との関係も自分がきちんと管理できる範囲に留めておく必要があるということを、私は生活費の見直しをしていて気づきました。
いまの生活にかかっているお金=本当に暮らしに必要な金額なのだろうか。
ということを確かめるためにも、身の回りの整理整頓も大事ですが、まず着手すべきは支出の見直しだと思います。
生活費が低く抑えられていると、環境や収入が変わっても暮らしがブレにくくなる、ということを私はいまの生活で実感しました。
収入との兼ね合いで、必要に迫られて金額を抑えるというよりは、自ら望んで実行するからこそ、このメリットを最大化させることができると思っています。
かぜのたみ
Youtuber