『離婚しない男』最終話前に怒涛の畳み掛け 観月ありさの『奪い愛、高校教師』パロディも

「気付いてるんだろ、俺の目的? 俺は絶対に心寧の親権をとる!」
「私だって心寧は譲らない」

ついに岡谷夫婦が正面切って宣戦布告し合った『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)第8話。

妻・綾香(篠田麻里子)の不倫に気付いていながらもソファーの下に潜り込み、不倫相手のマサト(小池徹平)との情事の証拠を押さえようとしていた渉(伊藤淳史)の姿が思い出される。同じようにナオミ(藤原紀香)と渉の関係を疑いベットの下に潜り込んでいた綾香の姿もまた然りだ。

今話が最終話前話だけあって、怒涛の畳み掛けが続く。まず親権取得に強い凄腕弁護士・財田(水野美紀)には、息子の親権を奪われた過去があったのだ。元夫・孝弘(高橋克典)には愛人がいて、財田が不倫をするようにハニートラップを仕向け、シナリオ通り離婚し息子の親権を獲得した。

そしてそれ以来財田が会わせてもらえなかったという息子こそが、探偵の裕(佐藤大樹)だったのだ。「私には子どもはいなかった、そう切り替えて生きてきました」「いないんですから、会いたくなるはずがありません」と自分に言い聞かせるように断言する財田だが、あれだけ察しの良い彼女が、近くにいる裕のことに気付かないなんてことがあるのだろうか。財田と裕が同じようにプロレス話で息ぴったりな掛け合いを見せていたが、そんな瞬間に何か共有できる懐かしい空気感があるのではないだろうか。

息子の裕は、マサトから大切な人を傷つけると脅され、彼に協力することになったが、母親である財田を守るために財田と渉の邪魔をしなければならないなんて、なんとも皮肉な因果だ。

今話で初登場した強烈なキャラクターは、芸能事務所社長の大洗(観月ありさ)だ。マサトの子どもを妊娠した綾香は、そのことを聞きつけた大洗からどうしても産みたいのなら渉の子どもとして産むようにお達しを受ける。妊娠をマサトに報告し受け入れられた時、また大洗に自分の産みたいという想いを否定された時、思わず涙をボロボロと溢す篠田麻里子の演技に見入ってしまった。

そうとなれば綾香は家族での温泉旅行を計画し、渉を酔いつぶさせると、あたかも事後であるかのように装い、こじつけの“既成事実”感を演出した。

もはやあっぱれなのが、マサトはこの大洗のことも手懐け、自身の意のままに動かしていたことだ。観月ありさが主演を務めた鈴木おさむ脚本ドラマ『奪い愛、高校教師』(ABEMA×テレビ朝日系)と同じく、バイオリン演奏姿を披露していた。この時も感情が高まると身体に電流が走るというシーンが何度か描かれたが、本作でもその“電流ビリビリ”が形を変えて登場していた。

本作の挿入歌「最後の雨」に合わせて財田のドラム演奏シーンが流れた時には、思わず『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)での田中みな実扮する秘書による恐怖のシンバル連打を思い出してしまった。

ラストシーンで綾香に突撃しようとした自転車の男もマサトの差し金に違いないが、綾香を助けた上で、全て自分がお見通しであることを伝えた渉。今回ばかりは彼の方が一枚上手だった。

ついに次週が最終話となるが、岡谷夫婦はどんな選択をするのだろうか。マサトの気は済むのだろうか。娘の心寧(磯村アメリ)が神社で願う「ずっと家族みんな仲良くいられますように!」はどうにか叶うのだろうか。
(文=リアルサウンド編集部)

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