「専門用語を一般の人にわかるように説明してください」と言われたら…〈説明上手な人〉のさすがの回答

物事を理解するうえで重要なことは「具体と抽象の行き来を繰り返すこと」です。人に物事を説明する際に、説明上手な人は、これを必ずやっています。具体的にはどのようなことでしょうか? 本記事では、CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役の国見健介氏による著書『一生モノの「学ぶ力」を身につける:国見流結果を導く会計学習メソッド』(中央経済社)から、説明上手になるために意識するべきポイントについて解説します。

「なぜ」を考え続ける

理解を深めていけばいくほど、世の中には似たようなロジックのつながりが至るところに存在していることに気づき、学びが加速していきます。

ロジックのつながりを100個しか持っていない人に比べると、1万個も持っている人は何か新しいことに取り組む時に「あ、これはこのロジックと一緒だ。こっちはあのロジックが活かせる」と物事に対して早く構造化したり、理解ができたりします。

資格の勉強をしている人は、受験勉強を通してさまざまな論点や結果を出す技術を習得し、ロジックのつながりを強化するトレーニングを半ば強制的に行っています。それは本来、受験勉強でなくても磨ける力です。

ビジネスであれば、「部下や後輩のモチベーションをどうしたらもっと高くできるのか」、「どうしたらもっと仕事を効率化できるのだろうか」、「どうしたらもっとお客さんの期待に応えられるのだろうか」というように、「どうしたら」、「なぜ」と考え続けている人は物事のロジックのつながりがどんどん強化されていきます。

説明の上手い人が実践していること

説明が上手な人は、具体と抽象の行き来を繰り返す力があります。つまり、具体の話をしている時に大きな考え方である抽象の話にまで戻って、それをまた他の具体でも説明するということを繰り返します。

勉強はどうしても具体(簿記であれば会計処理)を学ぶ機会のほうが増えます。しかし、だからこそ「大きな考え方」にも定期的に触れて、理解を深める必要があるのです。そうすることでつながりがわかりやすくなっていくのです。

とくに、例えが身近な話だと納得しやすくなります。たとえば、会計の学習でのれんの解説をする際、次のように1本のペンを使って例え話をするだけでぐっと身近に捉えられるのではないでしょうか。

「このペンは150円で販売されています。しかし、もし自分の好きな芸能人が使っていたペンだとすれば、10万円出してでも欲しいと思うかもしれません。この150円と10万円の差額というのが、のれんになるわけです。

つまり、150円の商品を、なぜ10万円で買うのかというと、本人は150円以上のメリットがあると判断したからです。

これが経済活動であれば、企業を買収することでブランド力やシナジー効果が高まり売上が上がると見込み、のれんの金額以上の価値があると判断することと同じですね」

このようにペンという身近な存在を用いて、同じような理屈を説明することで納得感が得やすくなります。

論理がかみ合わない原因

具体と抽象の行き来で、もう1つ大事な視点があります。それは論理がかみ合っているかどうかを意識することです。もし自分の中でスッキリせず、理解ができていないと思うのであれば、それは論理がかみ合っていない可能性が高いです。

論理がかみ合わない時は、具体と抽象の話をしているレベルが違うことも多いです。

友人に「お腹が減ったから魚を食べたい」と言われたら、マグロやサンマという具体的な魚が頭に思い浮かぶのではないでしょうか。魚という抽象概念からすれば、マグロやサンマは具体という関係が成り立ちます。

では、もし「お腹が減ったから何か食べたい」と、抽象概念が食べ物に変わったらどうでしょうか。そうすると、今度は魚自体が具体になります。

つまり、具体と抽象は、人によって「何を抽象と捉えていて、何を具体と捉えているか」というレベルが全く違うのです。結果として、見ている世界観が全く違ってくるのです。

これは仕事でも厄介な話をしばしば巻き起こします。仕事で上司と部下で捉えている具体と抽象がずれているというケースです。

同じ課題でも、上司はより上の概念から捉えているのに対し、部下は目の前の仕事だけを捉えていると、それぞれの具体のレベルが全く違うため議論がかみ合わなくなるのです。

だから、理解をする時には、「自分が今、何を大きな考え方として捉えていて、何を具体で捉えているのか」を客観視しないといけません。論理がかみ合わない理由は、大体の場合においてこういったすれ違いが起きていることが多いです。

国見 健介

CPAエクセレントパートナーズ株式会社 代表取締役

公認会計士

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