震災のことを教えてください-。村山市内の中学生有志13人が9日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県女川町を訪れ、福祉施設で高齢者から被災経験を聞いた。「津波に流された」「逃げ遅れた人が目の前でのみ込まれた」。幼かったため震災当時の記憶をほぼ持たない生徒たちは、当事者に真摯(しんし)に向き合い、厳しい事実を胸に刻んだ。そして「語り継ぐことが大切」などと実感を込めた。
被災地と交流する村山市のボランティアサポート村山・みどりの会(古沢聡代表)が、記憶の伝承と、被災地に関わる次世代の人材育成を目的に企画。希望者を募り、楯岡中と葉山中の1、2年生が参加した。女川町のデイサービスセンターおながわを訪問し、利用者20人から体験を聴いた。
「自宅から避難する途中で津波に流され、あわやのところで救援ボートに救出された」。80代の女性がせきを切ったように話し出した。濁流が押し寄せてきた記憶を伝えようと懸命に言葉を継ぐ。「救助の際に背負ってくれた女性もいた。会いたい」。切実な思いが生徒の胸を打った。「おいを亡くした。どうして私は助かったのだろう」と悔しさを表現する人もいた。
13年前の壮絶な光景を、生徒は圧倒されたように、じっと聴き入った。葉山中2年井上泰志さん(14)は「テレビや本で知るよりも怖さの伝わり方が違う」と話した。「同じ被害を生まないためにも、語り継ぐことが大切」。自分に言い聞かせるように強調した。生徒は同施設で芋煮を調理し振る舞うと、利用者はうれしそうに口に運んだ。
同会は2015年から中学生と被災地を訪問。中学卒業後に再び参加する若者もいる。総務省に今春入省予定の東京大農学部4年池田佳玲奈(かれな)さん(23)=東京都豊島区=もその一人だ。「仕事で防災に関わることがあると思う」とし、「震災を知らない世代が被災地に行き、危機感を持つことは意義がある」と語った。
生徒は石巻市の震災遺構・大川小も訪れた。児童74人、教職員10人が犠牲となった場所は津波の爪痕が残り、時が止まったよう。生徒は両手を合わせ失われた命を思った。震災の5日後に生まれた楯岡中1年の佐竹莉緒さん(12)は「今を大事に生きないといけないと思わされた」と、はっきりとした口調で語った。
複数の生徒が震災について「正直、人ごとだと思っていた」と告白し、「自分の事として震災について考えなければならない」と続けた。古沢代表は「被災地で何かしたいと思う子たちの受け皿であり続けたい」と語った。