「彼の調子の良さは見て取れた」FC東京で輝きを放つ荒木遼太郎にU-23指揮官も関心。パリ五輪出場を懸けた戦いに呼ぶべきか

Jリーグが開幕し、2週間が経過した。3節まで進んでいるJ1では、パリ五輪世代の選手たちが各クラブで輝きを放っている。

「今年は試合に出ている選手が多いので、視察に行っても空振りがない(笑)。発足して2年が経ち、クラブでの立ち位置が変わったと思う。それはそれぞれの選手が成長している証拠ですね」と、U-23代表を率いる大岩剛監督が口元を緩めるほど、ポジションを掴んで結果を残している選手が多い。

とりわけ目立つのが、攻撃陣の活躍だろう。昇格組の東京Vでは京都から期限付き移籍で加わった2人が躍動。横浜との開幕戦(1-2)でMF山田楓喜が直接FKを決め、続く浦和戦(1-1)ではFW木村勇大が豪快なボレーシュートでJ1初ゴールをゲット。相棒のFW染野唯月も攻撃の格として懐の深いポストプレーで存在感を示している。3節・C大阪戦(1-2)では染野の抜け出しから木村が2戦連発となるゴールを決めた。

同じく昇格組の町田では、2節・名古屋戦(1-0)でFW藤尾翔太が決勝点を奪取。3節・鹿島戦(1-0)ではその藤尾のお膳立てからMF平河悠がネットを揺らした。

そして、何より強烈なインパクトを放っているのが、FC東京の荒木遼太郎だろう。

一昨季と昨季は怪我の影響で満足のいく活躍ができなかった21年シーズンのベストヤングプレーヤーは、今季に鹿島から期限付き移籍で青赤軍団に加入。4-2-1-3のトップ下に君臨し、キレのある動きで変幻自在のプレーを見せている。

C大阪との開幕戦(2-2)では挨拶代わりの2発。33分に同じパリ五輪世代のMF松木玖生が放ったシュートをワンタッチでコースを変えて同点弾を決めると、1-2で迎えた75分にはクロスに合わせてネットを揺らす。

2節・広島戦(1-1)では東福岡高の先輩でSB長友佑都の右クロスをニアで受け、相手を背負いながら反転して右足シュートを突き刺した。3節・神戸戦(1-2)では不発に終わったが、輝きを取り戻したと言っても過言ではない。

「コンディションも良いですし、(神戸戦の)パフォーマンスも悪くないと思っている。これをゴールに繋げられたらもっといい」と話した荒木の言葉からも充実感が伝わる。

「自信もどんどんついてきているし、試合に出られなくて空いた期間のところは少しずつ取り戻している」

神戸戦で視察に訪れた大岩監督も、荒木の活躍を気に留めている。

「我々のターゲットは(パリ五輪出場権が懸かる)4月のアジア最終予選(U-23アジアカップ)。限られた人数で戦わないといけないし、中2日で良い準備ができているのが大前提にあるので、そこも含めて選手の状態を見ている」としつつ、「彼の調子の良さは見て取れた」とコメントした。

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4月16日に初戦を迎えるU-23アジア杯では海外組の招集が不透明で、国内組の選手が重宝される可能性は高い。荒木は22年3月のドバイカップを最後に大岩ジャパン入りしていないが、MF鈴木唯人(ブレンビー)などの海外組が不在となった場合には、個で局面を打開できる選手として貴重な存在となる。3月22日のマリ戦、同25日のウクライナ戦が組まれている代表活動では試すべき人材だろう。

「旬の選手を呼びたい」と大岩監督は常日頃から口にしているなかで、では荒木を招集した場合にどのポジションで使うべきか。

大岩ジャパンの基本布陣は4-3-3で、守備時は4-4-2に可変する。最も得意とするトップ下のポジションはない。一昨年のドバイカップでインサイドハーフや左サイドで起用された際は攻撃で違いを生んだ一方で、守備強度の部分で課題が見えた。

最終予選を見据えると、大岩監督が求める守備やプレスの掛け方を理解するための時間があまり残されていない。現時点で最適解はゴールを奪いに行く際のジョーカー役が適任だろう。短い時間でもアイデアに富んだプレーでチャンスを生み出せる存在として、ベンチに控えていれば心強いのは確かだ。

「サッカーができて楽しい」。笑顔を取り戻したファンタジスタが再び、日の丸を背負うことはできるか。本人は「(クラブのプレーに集中して)それで選ばれたらいい」と色気を見せないが、 現状のコンディションを維持できれば、間違いなく日本の力になるはずだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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