中国の若者世代が「自由」求めタイに移住、過酷でやりがいのない仕事に疲れ国外脱出

中国の若者世代が「自由」を求めタイに移住する動きが目立っている。新型コロナの流行時に長期間ロックダウンされた若者が過酷でやりがいのない仕事に疲れ、国外に脱出するようになった。写真はタイ・バンコク。

中国の若者世代が「自由」を求めてタイに移住する動きが目立っている、とAFP通信が報じた。中国では新型コロナウイルスの流行時に世界で最も厳しい対策を講じ、数億人が長期間ロックダウン(都市封鎖)下に置かれた。その結果、過酷でやりがいのない仕事に疲れた若者が国外に脱出するようになった。

米ブルームバーグ通信が紹介した米投資情報サイト「インサイダー・モンキー」の分析によると、在留中国人が多い国トップはタイの約930万人。2位マレーシア、3位米国と続き、日本は約92万人で10位だ。

AFP通信によると、タイ北部チェンマイの木々に囲まれたテニスコートで、コニー・チェンさん(26)はプライベートレッスンを受けている。中国・上海に住んでいた頃にはとてもできなかったぜいたくだ。

タイ第2の都市チェンマイがそういった中国人の人気の地となっている。期間1年の学生ビザ(査証)が取りやすく、ペースがのんびりしていて、生活費も安いのが理由だ。

チェンさんはロックダウンが最も厳しかった都市の一つ、上海で銀行に勤めていた。安定していて給料も良かったが、将来のキャリア形成に不満を抱いていた。「パンデミック(世界的な大流行)の間に自由を求める気持ちが強くなった」という。

チェンさんのような若い世代は高度成長の恩恵を受けた親世代と異なり、景気低迷の重荷を背負わされている。昇進の見込みは薄く、競争は激しい。燃え尽きてしまう人も多い。

チェンさんは外国語コースを調べ、タイに決めた。昨年5月、1年の学生ビザを取得し、夫のゴードン・リン(32)さんと共に移住した。 二人とも今では長期間、外国に住むことを決めている。「国外には機会も多く、希望も感じる」とチェンさんは語った。

夫のリンさんは電子商取引の会社に勤めていた。一生懸命働き貯金をし、早期退職を計画していた。しかし、紋切り型の周囲の考え方に息苦しさを感じるようになった。

上海ではロックダウンに抗議するデモが発生した。中国ではデモはまれだが、すぐに他の主要都市に拡大し、政府は取り締まりに乗り出した。今回取材した中国人は政治に関する発言は控えたが、全員が中国とは異なるライフスタイルを追求したかったのが移住の動機だと話した。

中国のSNS・微信(ウィーチャット)をのぞくと、国外への脱出願望の高まりが見て取れる。「移住」という単語は昨年10月、1日当たり5億1000万回検索された。昨年1月末には「タイ移住」という言葉が1日に30万回以上検索された。

タイには各種の長期滞在ビザがあり、欧州や北米よりも移住しやすいとされる。1年間の語学コースの費用は約700~1800米ドル(約11万~27万円)で済む。ドイツのマックス・プランク社会人類学研究所に勤務する社会人類学者のシャン・ビャオさんは「中国脱出願望は急に広がったと考えている」との見方を示した。(編集/日向)

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