大小200以上の凧が大空を舞う凧揚げの祭典「こうた凧揚げまつり」。愛知県三河地方の幸田町で開催され、県内外から凧愛好家が集まる人気の祭りです。平均年齢72歳の「芦谷区たこの会」も「こうた凧揚げまつり」に参加するチームの1つ。参加チームの中で最大となる13畳もある大きな凧を、走ることなく大空に揚げるといいます。
走らなくても揚がる大凧
「芦谷区たこの会」の会長を務める本田幸弘さんは、自動車の整備工をしていました。ものづくりのスペシャリストとしての知識と経験を活かし、15年前から「芦谷区たこの会」の会長に。少しの風でも高く舞い上がる大凧の設計を行っています。本田さんは「走らなくても揚がる凧に必要なことは凧の精度が重要」と話します。
少しでも良くしようと改良を続ける本田さん。今回改良したポイントは和紙を使う枚数です。1枚の和紙を大きくすることで貼り合わせる際ののりしろ部分を減らし、さらなる軽量化に成功しました。
「芦谷区たこの会」では、改良が加えられる本田さんの設計図に基づいて毎年大凧を制作。山から採取してきた竹を切断し、カンナをかけて1つずつ組み合わせ。出来上がった骨組みに45枚の和紙を貼り、絵を描いて糸をつけます。この一貫した流れはすべてメンバーによる手作業で行われます。
大人も子どもも凧揚げに夢中
凧揚げの祭典が行われる幸田町では子どもたちも凧が大好き! 幸田町立中央小学校でも、創立当時からある凧クラブの子どもたちが、ミニチュアサイズの凧づくりにチャレンジしていました。
ミニ凧の骨は凧の真ん中に縦に置かれた1本のみ。それでも糸を貼る位置が正確であれば、教室の中を静かに歩いた風だけでもミニ凧はふわりと空中へ舞い上がります。
無風の厳しい状況に 大凧は揚がるのか?
気持ちの良い青空が広がった2024年の「こうた凧揚げまつり」。しかし今回はほぼ無風と凧揚げには非常に厳しい状況となりました。そんな中、2畳分の大凧を制作してチャレンジしたのが「中央小学校凧クラブ」の子どもたち。ひもを持って一生懸命走ると、大凧は無事に大空へと舞い上がりました。
子どもたちに負けないようにと大人たちも奮闘。大人たちがひもを引きながら懸命に走ると、8.5畳もの大凧がふわりと空へ浮かびます。とはいえ走るのをやめるとすぐに凧は地面へと逆戻り。やはり今年はコンディションが厳しいようです。
そんな中で、意外な解決方法を見せたチームも。滑車を使って同じ場所をぐるぐると周りながら凧を引き続け、8.5畳の大凧を飛ばすことに成功! 大凧が空高く舞い上がりました。
そしていよいよ「芦谷区たこの会」も大凧揚げの準備を開始。ひときわ大きな13畳の大凧をひもで引っ張り、反りをつけていきます。わずかなズレも失敗の原因になるため、満足できるまで何度でもやり直し。ようやく満足する反りとなると、会長の本田さんの「GO!」サインでいよいよ出陣です。
続々とギャラリーが集まる中で迎えた本番。ようやくわずかに吹いた風にタイミングを合わせてひもを引くと大凧がふわりと浮かびました。しかし、一瞬浮かび上がったのも束の間、風が止まってしまい大凧は地面へ降りてしまいます。
その後も風を待ちますが、コンディションは無風のまま。残念ながら、2024年は走らずに大凧を飛ばすことはできませんでした。
それでも本田さんたちは諦めずに再チャレンジ。無風の悪いコンディションでも走ってなら大凧を飛ばせると、力を合わせてひもを手に走り始めます。すると、大凧はふわりと浮かび高く上空へ。およそ2分間にわたり、幸田の空を舞い続けました。
コンディションさえ良ければ全く走らずに大空高く舞い上がる大凧。本田さんたちは、早速「来年こそは」とリベンジに燃えていました。