「美しい友情」給水失敗の鈴木亜由子を絶妙アシスト! ドリンクを手渡した加世田梨花の振る舞いに称賛止まず!【名古屋ウィメンズマラソン】

パリ切符を争うライバルのミスをカバーする、さり気ない仕草に称賛が止まない。

パリ五輪の女子マラソン代表の最後の1枠をかけた「名古屋ウィメンズマラソン」が3月10日に開催され、東京五輪1万メートル代表の安藤友香(ワコール)が2時間21分19秒で優勝を飾るも、五輪内定の条件だった前田穂南(天満屋)の日本記録(2時間18分59秒)を上回ることができず、惜しくも五輪の代表権を逃した。

熾烈な代表争いが展開されたなか、有力選手の振る舞いが大きな脚光を浴びた。

10キロ付近、先頭集団を走っていた東京五輪代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)が自身のスペシャルドリンクを取れず、さらにゼネラルドリンクも2度掴めず水分補給に失敗。手痛いアクシデントが起きた。

だが、その直後だった。同じく先頭集団を走っていた世界選手権ブダペスト大会代表の
加世田梨花(ダイハツ)が冷静に水を手渡し、鈴木は水分補給に成功。そのまま2人は快調に日本勢の先頭集団として、レースを引っ張った。

テレビ中継で解説を務めていたアトランタ五輪銅メダリストの有森裕子氏は、この場面を見逃さず、加世田の行動を「本当に素晴らしい」と絶賛。同じくシドニー五輪金メダリストの高橋尚子氏も「鈴木亜由子さんが(ゼネラルドリンクを)取れていないことが、しっかりと見えている。視界の広さと落ち着きが非常にいいと思います」と指摘し、五輪切符を争うライバル同士の一幕を称えていた。
SNS上でもこのシーンは大きな話題を呼び、加世田の振る舞いを称える声が後を絶たない。

「加世田選手のスポーツマンシップに感動です」
「この機転。素晴らしい」
「ライバルであり、そして仲間でもある選手たちのフェアに戦いたいという思いに美しい友情を感じるレースでした」
「ミスを援護できるなんてすごいな」
「視野の広さと器の大きさなんだろうね」

レースは35キロ通過で安藤が日本勢のトップに立ち、8秒遅れて加世田は2番手を走っていたが徐々にペースが落ちていき、ラスト3キロ過ぎには鈴木にかわされた。

マラソンでの五輪代表に執念を燃やす鈴木は魂の猛追で安藤の背中を追いかけたが、一歩及ばず3位。だが自己ベストを更新する2時間21分33秒でフィニッシュすると、会場は温かい拍手で32歳のランナーの走りを称えた。一方の加世田は同22分11秒の4位でフィニッシュ。パリへのラスト切符を懸けた女子の激闘は幕を閉じた。

構成●THE DIGEST編集部

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