バニャイア、開幕戦スプリントでは問題発生で4位。しかしなお漂う“強さ”/MotoGP第1戦カタールGP

 2024年チャンピオンのフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)は、開幕戦カタールGPスプリントを4位でフィニッシュした。デスモセディチGP24が抱える問題が背景にあったようだ。ただ、ライダーとしてのバニャイアの強さは、依然としてそこにある。

 2024年シーズンMotoGP開幕戦カタールGPスプリントのトップ3のなかに、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)はいなかった。バニャイアはスプリントを4位で終えていたのである。表彰台圏内で走行していたが、終盤、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)にかわされたのだ。

 さらに、予選もフロントロウを逃し、2列目5番グリッドからのスタートだった。2023年チャンピオンの「らしからぬ」結果に、当然、「なぜ」という疑問が浮かぶところだ。

 予選についてはシンプルな理由で、「最後の二つのコーナーでミスをしてワイドになってしまった」のだという。では、スプリントレースは?

 じつは、バニャイアはフロント、リヤ両方のタイヤの空気圧とチャタリングの問題を抱えていたというのである。レース後の囲み取材で、バニャイアはこう説明している。

「ブラッド(・ビンダー)の後ろにいるときはより苦しんだ。フロントの挙動に苦しみ、リヤからはトラクションが得られなかった。加速のはじめのほうで跳ねてしまってね」

「僕たちはそこを改善しなくちゃいけないだろうね。バイクは新しく、新しい状況の中にいる。リヤのチャタリングや空気圧(の問題)などは、これまでになかったわけだから」

 バニャイアは「テストでは何の問題もなかったよ。たぶん、コンディションが違ったからなのかもしれない。(テストでは)グリップも得られ、バイクはよく曲がり、チャタリングもなかったんだ」と語っており、症状はこの日に起こったことだという。

 一方、テストからリヤのチャタリングに悩まされていたのは、優勝したホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)である。マルティンはこの日のスプリントレースで、ポールポジションからスタートし、追走するブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリーレーシング)にオーバーテイクを許さずに優勝した。2023年の速さをそのまま持ってきたかのような勢いのあるポール・トゥ・ウインだったが、マルティンはレース後のパルクフェルメでのインタビューで、喜びの笑顔を浮かべながら「まだリヤのチャタリングはある。何度もクラッシュしそうになって厳しかったよ。今日は優勝できたけど、明日もこういう状態なら、(優勝は)できないだろう」と語っていた。チャタリングはレース序盤から発生していたのだという。マルティンは、囲み取材で、こうした問題についてデスモセディチGP24の問題だと思うか、と問われ、「そうじゃないかと思っている」と答えている。

 そして、バニャイアのチームメイトで、6位で終えたエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)にもやはり、バニャイアとマルティンと同様の症状が発生しており、「(デスモセディチ)GP24を走らせるほかのライダーたちと同じように、リヤタイヤに問題があった。明日も出る問題かもしれない」ということだった。

 また、バスティアニーニは「ホルヘは、テストで僕よりもタイヤに問題があったと思う。でも、いま、問題は同じだ」とも語った。

 ライダーのコメントを踏まえると、バニャイアに起こったチャタリングの問題は、ドゥカティの2024年型マシンを走らせるライダーたちが多かれ少なかれ抱えていたものだったと考えられる。

 バニャイアに話を戻そう。バニャイアは金曜日の初日も、あまりうまくはいっていなかった。最初のセッションであるフリープラクティス1では問題があって10番手に終わり、フリープラクティス2も雨(ウエットコンディション)での走行だったのである。カタールでは雨が珍しいため、週末に雨の予報でもなければ、ウエットコンディションの走行はレースに向けたセッションとはいいがたい。

 そうした状況で、金曜日の囲み取材に応じたバニャイアの表情には印象的なものがあった。あまり感情を表に出さず、淡々と質問に答えるのがバニャイアではあるが、それを考えても、いい走り出しとは言えない初日を終えて、どこまでも落ち着き払って見えたのである。囲み取材のなかで「僕のフィーリングもバイクのフィーリングもいい。明日はもうちょっと、ラッキーが必要だね」と語っていたが、そこには自身の速さとバイクへの信頼が感じられた。

 そして、バニャイアの揺るがない姿勢は、土曜日のスプリントを終えても変わらなかった。そんなバニャイアに──まだ開幕戦のスプリントを終えたばかりだけれど──、2024年の強さがうかがえるようだった。

木曜日会見で、MotoGPクラスの2024年チャンピオン予想に自分の名前を書いたバニャイア。どんなシーズンとなるのか……

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