線路横断、チェーンソーで木々伐採… 撮り鉄のマナー違反急増 JR西日本、新型やくも運行控え警戒

撮影ポイントの「交渉応じます」と書かれた張り紙を手に「撮り鉄」のマナーの現状を説明する和田隆根雨駅長=鳥取県日野町根雨、町役場

 JR西日本の特急やくも伯備線運行開始50周年を記念した「国鉄色」のリバイバル企画などで人気の撮影スポットとなっている山陰両県の沿線地域で、「撮り鉄」と呼ばれる撮影目的で訪れる鉄道ファンのマナー違反が広がっている。線路の横断や私有地の立ち入りが後を絶たず、4月6日のやくもの新型車両導入を控え、地元は一層神経をとがらせている。

 線路を横断する危険行為に、鉄道標識の損壊、ごみのポイ捨てや不法駐車、田畑など私有地への無断立ち入りや、電動チェーンソーを使った木々の伐採…。8日午後、鳥取県日野町根雨の町役場で開かれたJR、警察、沿線の日野町と江府町、住民代表の意見交換会で、撮り鉄のマナー違反が次々と報告された。

 JR西日本中国統括本部によると、被害は山陰線沿線の出雲市や安来市などでも確認。5日には江府町内の江尾駅で停車した試運転中とみられるやくもの車両に抱きつく男性の写真が、交流サイト(SNS)で拡散された。警察が調べているという。

 現地巡回を重ねる日野町の根雨駅の和田隆駅長は、踏切近くの鉄道設備に「ローからアイアングル 交渉応じます」と書かれた張り紙があり、撮影位置を巡った不法な場所取りが横行している可能性があると指摘した。

 22年3月に始まったやくもの復刻企画、新型車両導入に伴う国鉄時代の車両の引退などの話題性もあり、訪れる人はさらに増加。住民から地元の黒坂署への2023年の相談件数は、前年の10件から50件に急増している。

 日頃撮り鉄と接する住民代表からは「来るなと言っても無理」「いたちごっこ。言っても駄目」という諦めの声も。JR西日本中国統括本部は、写真撮影が多い曜日や時間に警備員を配置する具体策を示し、同本部の槙拓男課長は「警察や行政と協力しながら、何ができるか引き続き検討する」と話した。

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