【ファルコンS】シュトラウスは距離短縮でも全幅の信頼は不可 サトミノキラリに大物の予兆

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シュトラウス登場

2024年3月16日(土)に中京競馬場で行われるファルコンS(GⅢ・芝1400m)。3歳限定の短距離重賞だ。

中長距離馬はダービーの2400m、短距離馬はNHKマイルCの1600mを一旦の大目標とする3歳春のJRA重賞体系において、このファルコンSは微妙な立ち位置にある。「GⅠを勝つためのステップ」という色は薄い。本当は1200mを使いたいが適鞍がなく出走してくる馬、1400mがベストの馬、マイルに限界を感じて短縮を選ぶ馬。各々の思惑が交錯する。

今年は朝日杯FSで2番人気10着に敗れたシュトラウスが参戦する。ポテンシャルの高さと折り合いの難しさを併せ持つ大器は、1400mで反撃ののろしを上げることができるか。過去10年のデータをもとに展望する。

距離延長組は不振

まずは人気別成績から。1番人気【1-3-0-6】勝率10.0%、複勝率40.0%は明らかに頼りなく、ダノンスマッシュ、ラウダシオン、グレナディアガーズといった面々でも勝ち切れなかった。続く2番人気【2-1-2-5】、3番人気【3-3-0-4】も強調するほどではなく、6番人気【1-0-2-7】、10番人気以下【1-1-2-72】など中穴~大穴にも出番がある。

ただし良馬場で行われた5回に限ると勝ち馬はいずれも4番人気以内で、8番人気以下【0-0-1-44】と大波乱は見られていない。荒れた決着が多いのは、たまたま道悪での開催が多かったから、とも考えられる。当日の天気には注意しよう。

続いて前走距離別成績。1400m重賞ではよく見られる現象だが、距離延長組【1-0-2-42】勝率2.2%、複勝率6.7%が苦戦を強いられている。同距離【4-3-1-46】勝率7.4%、複勝率14.8%、距離短縮組【5-7-7-48】勝率7.5%、複勝率28.4%だから、前走は長い距離を経験しているほどよい。

ちなみに距離延長組の馬券絡み3頭のうち2頭は、昨年の1、3着馬だった。傾向が急変したと見るか、昨年を“ハズレ値”と割り切るか。後者の方が妥当な気はする。

具体的な臨戦過程だと、前走シンザン記念【3-0-0-5】勝率、複勝率37.5%が理想。大敗から一気に巻き返した例(17年コウソクストレート、シンザン記念14着→ファルコンS1着)もあり、10着のタイキヴァンクールが出走するなら要マークだ。

同じ左回り芝1400mのクロッカスSは連対馬が【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%に対し、3着以下だと【1-0-0-13】勝率、複勝率7.1%と明暗。ロジリオン、オーキッドロマンスはいいが、ダノンマッキンリーは減点対象だ。

前走朝日杯FSは【0-4-3-14】で未勝利ながら複勝率は33.3%。なお、間に他のレースを挟んだ例を含む「前年の朝日杯FS出走馬」は【2-5-3-29】勝率5.1%、複勝率25.6%。ここは後述する。

シュトラウスを念頭に置き、前年朝日杯FSでの内容別で成績を見る。朝日杯FS出走馬はそこで1~3着なら【0-2-0-1】複勝率66.7%、4~9着【1-2-1-8】勝率8.3%、複勝率33.3%、10着以下【1-1-2-20】勝率4.2%、複勝率16.7%。当たり前といえば当たり前だが、朝日杯FSでの着順と好走率が正比例する。10着に大敗したシュトラウスは信頼できない。

ただ、朝日杯FSで「4角先頭だった馬」は【0-2-1-3】複勝率50.0%。1着はないが悪くない。マイルGⅠで快速を飛ばして玉砕した逃げ馬が、200m短縮と相手緩和で反撃する、というシナリオはこれまでにもあった。

最後に枠別成績。3~4角を下りながら回る中京コースは内有利の傾向が出やすく、ファルコンSも例外ではない。1~4枠【6-6-8-56】勝率7.9%、複勝率26.3%、単回収率172%、複回収率143%に対し、5~8枠は【4-4-2-80】勝率4.4%、複勝率11.1%、単回収率26%、複回収率25%とその差は歴然。内枠勢に狙いを定めるのがセオリーだ。

ビッグアーサー産駒の大物候補

「1番人気の信頼度が低い」「距離延長組が苦戦」「クロッカスS連対馬が好成績」「朝日杯FS着順と好走率が比例」「内枠有利」などのポイントを押さえたところで、登録馬について具体的に考えていこう。

シュトラウスは6月東京の芝1600m新馬戦で9馬身差勝ち。サウジアラビアRCは道中引っかかりながら3着を確保、東スポ杯2歳Sは3番手で辛くも折り合い、重賞タイトルを手にした。

能力は折り紙付きだが、前進気勢が強すぎて乗り難しい面があり、それが暴発してしまったのが朝日杯FS。T.マーカンド騎手が抑えるのを諦め、2~3F目10.9-10.7で一気に脚を使い切ってしまった。距離短縮は歓迎だろうが、そもそもD.レーン騎手やJ.モレイラ騎手のような世界的名手でもなければ初騎乗ではコントロールできない馬とも言える。今回も鞍上が替わって北村宏司騎手の想定。関東のベテランはこの難題にどう答えるか。馬券としては手を出しにくい。

楽しみなのは朝日杯FS6着のサトミノキラリ。父はスプリント種牡馬ビッグアーサーだ。ビッグアーサー産駒はJRAの芝1600m以上、特別戦で通算【0-0-0-12】。掲示板に載った馬すらいない。そんな“守備範囲外”のマイル、それもGⅠで6着となると、先日重賞3勝目を挙げたトウシンマカオとこのサトミノキラリしかいない。トウシンマカオに続き、こちらも将来的には短距離で重賞を複数勝つ大物かもしれない。朝日杯FSの結果はその予兆ではないか。

クロッカスSは前後半35.2-33.8のスローペースで、単純ながら2番手から粘ったオーキッドロマンスよりも差したロジリオンを高評価。休み明け+14キロの前走を使った上積みも見込めるはずだ。重ねてになるが、枠順による有利不利が大きいレース。最終結論は枠を受けてから固めよう。



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