郷土芸能で移住促進 テレワーカー呼び込みへ【花巻】

神楽幕の裏で出番を前に準備する神楽衆

 花巻市職員で構成する市地域おこし研究所は、同市の郷土芸能を活用し、移住定住を推進する実証研究を始めた。花巻の魅力である郷土芸能をワーケーションの一つのコンテンツとして組み込むことでテレワーカーなどを呼び込み、移住者の獲得を目指す。郷土芸能は地域に根差した活動であることから、移住者の地域での居場所や役割づくり、郷土芸能団体の後継者確保にもつなげる狙いだ。

 同市の郷土芸能団体は161あり、全国有数の郷土芸能の宝庫だが、団体によっては少子高齢化に伴う後継者不足が深刻で、コロナ禍で停滞した活動の継承や、郷土芸能に対する認知度の向上が課題となっている。一方で郷土芸能には地域との関わりを生む効果があり、実証研究では移住者にとっても地域に溶け込む手段になり得ると仮説を立てた。

 2月24日には通常の公演とは違った角度で郷土芸能を見ることで身近に感じる体験会「のぞき神楽」を初めて企画。同市の上根子神楽保存会の初舞いの場を借りて、県内の小学生から60代まで男女7人が裏方として参加し、舞台設営から道具準備、公演本番、片付けなどまでの流れを神楽衆と共に体験した。

 参加者からは「普段見ることができないところ。一体となってつくり上げていて感銘を受けた」「いろいろな世代の関係が築かれ楽しそうに活動していた」などといった感想が聞かれた。

 今後は、一定期間を花巻で過ごすテレワーカーをターゲットに郷土芸能に触れる機会を設定する。余暇の時間でその土地ならではの体験を求めているテレワーカーが、郷土芸能などに触れるコンテンツを通じて地域と関わったり、将来の定住先の候補として花巻を考えたりするきっかけにする。

 同研究所班員で同神楽保存会のメンバーでもある市定住推進課の北山健介主査(36)は「郷土芸能は敷居が高いと思われることも多く、体験を通じて交じりたいと思ってもらえればうれしい。自分にとっても生まれ育った地域との接点を持ち続ける手段になっている。郷土芸能をきっかけに関係人口、移住者が増えてほしい」と話す。

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