古墳時代の大規模集落跡から朝鮮製の鉄器出土、交易拠点か 鹿児島湾を望む高台、指宿・尾長谷迫遺跡「副葬品以外では非常に珍しい」

尾長谷迫遺跡で見つかった朝鮮半島製の「鋳造鉄斧」=指宿市西方

 鹿児島県指宿市の尾長谷迫(おばせざこ)遺跡で、古墳時代中期から後期(5~6世紀)の約100基の竪穴建物を含む大規模集落跡と、朝鮮半島製の鉄器5点が見つかった。鉄器は古墳の副葬品として出土することが多く、発掘した指宿市教育委員会は「集落跡で確認されるのは非常に珍しい。海を通じた交易活動の結節点となる拠点集落だったと考えられる」としている。

 市教委によると、集落跡には直径約8メートルの円形や、4メートル四方の建物跡が約1000平方メートルの範囲に密集していた。一方、権力者の存在をうかがわせる大規模な建物跡は現時点では確認されていない。

 集落跡からは「鋳造鉄斧(ちゅうぞうてっぷ)」と呼ばれる朝鮮半島製の鉄器も見つかった。長さは最も大きなもので13センチ、小さなもので5センチ。横幅は3~5センチだった。鹿児島大学総合研究博物館の橋本達也教授(考古学)は「当時の日本には作る技術はない。希少品で基本的には古墳の副葬品として出てくる」と話す。県内でもこれまで成川遺跡(指宿市)や二子塚遺跡(大崎町)から出土しており、いずれも埋葬に関連すると考えられている。

 橋本教授は「交易で外来の物や情報を入手できる有力な集落だったのだろう」としつつ、「この地域一帯には古墳がない。鋳造鉄斧が見つかったことは、古墳を造る社会とつながりつつも、自分たちはその選択はしなかったことを示すのでは」と解説する。

 尾長谷迫遺跡は、鹿児島湾内を一望できる高台にあり、県内初となる飛鳥時代の「暗文土師器(あんもんはじき)」も見つかっている。発掘は2027年度まで続き、残り約1000平方メートルを調査する予定。

 16日には現地説明会を開く。要事前予約。時遊館COCCOはしむれ=0993(23)5100。

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