取材ノート 無駄だと思われる仕事も大切に

 ■約10年前。ある企業の役員の自宅先で指摘された言葉が印象に残っている。「君たちは記事で働き方改革の重要性ばかりを説いているが、その働き方改革を実践していたら、こんな夜遅くに今ここに僕の話を聞きに来ていることがおかしいじゃないか」。その時すでに夜9時前。ご指摘通りと苦笑いしたことを覚えている。
 当時は中部の企業の間で働き方改革が広がり、それまでの長時間労働が当たり前という考え方が見直され始めているタイミングだった。仕事の効率が一層重視され、無駄な仕事は敬遠された。
 個人的には一見無駄だと思える仕事も大切に思ってきた。どんな仕事でも次の取材のヒントなどが潜んでいるからだ。根性論だと嘲笑されそうだが、今もその考え方は変わらない。
 その一方、人の時間と体力は限られているため、仕事の効率化は非常に重要だ。両立しない仕事の効率化と無駄な仕事。これからも最適な配分を模索したい。
 ■勝又 佑記(かつまた・ゆうき)40歳。自動車、鉄鋼業界を担当。最近、妻から「おじさんみたいなこと言うようになったね」と言われた。常に気持ちは若く、柔軟性を持っていたい。

© 株式会社中部経済新聞社