東日本大震災から13年/復興への歩み着実に前進も/除去土壌の県外最終処分など課題

11日で東日本大震災の発生から13年の節目を迎える。原子力災害に伴い帰還困難区域に指定された地域のうち、先行して街づくりが進む特定復興再生拠点区域(復興拠点)は昨年11月末までにすべてのエリアで避難指示が解除された。復興拠点以外の「特定帰還居住区域」に指定されたエリアでも、除染が始まるなど復興に向けた歩みは着実に前進している。だが除去土壌の福島県外最終処分への取り組みなど重要課題が残されており、被災地の復興は道半ばだ。=1面参照
主に地震や津波で被災した地域でハード整備がほぼ終わった一方で、原子力災害の被災地域では、今も避難生活を強いられている被災者がいる。
政府は昨年末、原子力災害の被災地域のうち福島県大熊、双葉両町の「特定帰還居住区域」で住民帰還に向けた環境整備の初弾に着手した。除染や家屋解体、道路や上下水道といったインフラの復旧に取り組む。両町のほか、浪江町や富岡町でも区域指定が進展しており、今後帰還準備が本格化する見通しだ。
同区域の除染に伴い発生した土壌(除去土壌)などは中間貯蔵施設(大熊、双葉両町)に運搬される。政府は法律で、同施設に一時保管された除去土壌を2045年までに福島県外で最終処分すると規定。処分量を減らすためにも、減容化や再生利用の方策を検討中だ。除去土壌を道路の盛り土に再生利用する実証事業などを展開している。
政府が主導する除染や中間貯蔵施設の整備、県外最終処分への取り組みといった環境再生事業を担うのは建設業だ。環境再生事業を所管する伊藤信太郎環境相は8日の閣議後会見で「これまでの建設業の多大なる貢献に感謝している」と謝意を表明。今後の事業推進に向けても「建設業の協力は欠かせない」と活躍に期待を寄せた。
福島をはじめ東北地方の創造的復興の中核拠点となる「福島国際研究教育機構(F-REI)」の施設整備の準備も進む。復興庁は1月に施設の基本計画を決定。24年度から基本設計・実施設計に入る。着工時期は未定だが、造成工事が終わった箇所から着工していく考えだ。復興庁設置期間(31年3月31日まで)内に順次供用を開始し、可能な限り前倒しでの竣工を目指す。
復興に向けた拠点づくりや街づくりを進める上で、大前提となるのは、原子力災害の引き金となった福島第1原子力発電所(大熊町、双葉町)の廃炉への取り組みを着実に進めることだ。同発電所では現在も、東京電力ホールディングス(HD)が安全管理を重視しながら、廃炉作業を続けている。昨年8月には発電所内で発生したALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水の海洋放出もスタートした。
発災から10年以上が経過し、各省庁には復興庁に出向し被災地で復興事業に携わった経験を持つ職員が多数存在する。1月1日の能登半島地震の発生以降、そうした職員が続々と現地入りし、復興庁で培ったノウハウや経験を生かして被災自治体の職員をサポートしているという。
複合的な災害だった東日本大震災から得た教訓や知見のほか、復興を通じて育成された人材は、今後起こり得るさまざまな災害への防災・減災対応、復旧・復興に欠かせないものだ。

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