岸田文雄首相、斉藤鉄夫国交相/24年の技能者賃金、5%超引き上げ推進で一致

◇建設業4団体と意見交換
岸田文雄首相、斉藤鉄夫国土交通相ら関係閣僚と、建設業主要4団体のトップらが8日に首相官邸で意見交換会を開き=写真、技能労働者の賃金水準で2024年に「5%を十分に上回る」上昇を目指す方向で一致した。岸田首相は、政府として公共工事設計労務単価の引き上げや建設業法などの改正により、建設業界の賃上げと価格転嫁を後押ししていく考えを表明。その上で「(民間企業の)設備投資と公共投資を支える建設業の担い手確保と持続的な発展につなげていきたい」と意欲を語った。
賃上げ目標は国交省と4団体の申し合わせ事項として、斉藤国交相が提案した。23年の目標だった「おおむね5%」を設計労務単価の上昇率という形で上回ったことから一段と高い目標を設定。岸田首相も5%超の賃上げを「各社で強力に進めていただくようお願いする」と業界側に直接要請した。
政府には春闘の本格化を前に、大企業を中心に機運が高まっている賃上げの流れを、多くの中小零細企業が含まれる建設業界にも広く波及させていきたいとの狙いがある。岸田首相は官民の相互協力で「コストカット型から成長型の経済への転換を図る」と展望する。
申し合わせには4団体とも賛同。日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は「賃上げを民間工事の技能者にも波及させるには、その原資が発注者から得られることが必要」と指摘し、特に民間発注者に資材価格高騰分など必要な価格転嫁への協力を働きかけるよう政府に求めた。
全国建設業協会(全建)の奥村太加典会長は「物価高に負けない賃上げを実現できるよう目標達成への取り組みを進める」と応じた。全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長は、中小建設会社が賃上げ可能となる安定的な経営環境につながるような入札契約制度の改善を要望した。
建設産業専門団体連合会(建専連)の岩田正吾会長は、建設業法改正で「標準労務費」を基準とする賃金下支え施策が講じられることを念頭に「民間工事でも標準労務費が担保されるようチェック体制を強固な形に整備してほしい」と実効性の確保を訴えた。
意見交換会では、時間外労働の罰則付き上限規制の適用が間近に迫る中、国交省と業界団体のそれぞれの立場で必要な対応に万全を期すことも申し合わせた。国交省は建設業の働き方改革に特化した施策パッケージを月内にまとめる方針だ。

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