近畿整備局/インフラDXで業務の変革推進/アクションプログラム策定

近畿地方整備局はインフラ分野のDXを推進するため、具体的な施策を盛り込んだ「近畿インフラDXアクションプログラム」を策定した。データとデジタル技術を活用し、建設生産システムの効率化や労働環境の改善、調査・監督・点検業務の変革を進める。工程表には2024年度から3年間の取り組みや将来の目指す姿も示している。同局では今後のデジタル技術の進歩に応じて継続的に更新する予定だ。
プログラムは、同局が設置した「近畿インフラDX推進本部」(本部長・見坂茂範近畿整備局長)がまとめた。下部組織の幹事会の8部会で報告された施策を盛り込み、DXを支える環境を整備することで、行政手続きの迅速化やサービスの向上、現場の安全性や効率性を高めるほか、調査や監督、点検・監理業務を変革し、働き方改革を後押しする。
具体的な取り組みは36項目。河川部会の10項目が最も多く、監督検査のICT活用推進部会と道路部会の6項目が続く。
BIM/CIM推進部会は3Dモデルを活用した建設生産システムの効率化・高度化を挙げ、24年度以降もBIM/CIMを原則適用し、品質の確保とともに受発注者双方の生産性を高める。営繕事業では3000平方メートル以上の設計業務にBIM活用を指定しているが、24年度以降は対象範囲の拡大を検討する。
ICT施工・無人化施工推進部会は小規模土工のICT促進を位置付け、小型建機への後付けICT機器の導入を促す。24年度は出来形管理要領(案)の作成を進め、26年度までに公表する。3Dデータの取り扱いに不慣れな地域建設業者もICT施工にチャレンジできるよう、データ作成の手引案を作成する。自治体への普及にも取り組む。
監督検査のICT活用推進部会は、遠隔臨場やAIを活用した検査や管理を挙げた。主な取り組みでは山間部などの通信不感地帯の現場でも低軌道周回衛星によるインターネットサービスを活用することで遠隔臨場が可能になり、監督検査の迅速化・効率化を実現する。24年度に実装化を目指す。コンクリートのスランプ試験にAIによる画像解析を活用し、現地立ち会いを迅速化。全数検査による構造物の品質向上を実現する。
道路部会では監視カメラの映像を活用してAI技術で立ち往生などの発生をいち早く確認し、迅速な対応につなげる取り組みのほか、のり面など構造物の異常を自動通知する手法の手引書作成、地下埋設物情報の3D化を盛り込んだ。
河川部会はウエアラブルカメラによる施設点検の効率化や、自律飛行するドローンと赤外線カメラAIを活用した遊水地巡視の高度化を挙げた。上野遊水池で実装を目指す。このほか湖沼やダム湖の水質・地形調査の自動化、ドローンを活用したダム・えん堤の巡視点検の効率化・高度化などに取り組む。
港湾部会では、港湾施設の維持管理を効率化するため、点群データ解析手法の効率化や多様な施設の適用性を検討する。
人材育成支援部会では自治体職員や建設会社を対象に研修会を開き、インフラDXを推進。デジタル技術を活用できる人材の育成に力を入れる。防災部会は災害時にドローンを活用して危険箇所の調査を迅速化する取り組みなどを盛り込んだ。

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