『アイのない恋人たち』怒涛の告白ラッシュのセミファイナルに “愛”に気づいた7人の男女

うまくいかないと分かっていても、心の奥底では常にあの人のことを思い出してしまう。日常のちょっとした瞬間、些細なことを分かち合いたくなる人がいる。

綺麗な思い出だけではなくても、“今を共に生き抜きたい”と思える存在がいることの尊さを、『アイのない恋人たち』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第8話は優しく教えてくれる。それは恋愛だけではない、家族愛や友情といった広い意味での「愛」に当てはまる感情だ。

第8話は、前回のハイライトとなった淵上多聞(本郷奏多)と冨田栞(成海璃子)の恋の行方から。ついに一夜を過ごした2人だが、栞はすでに父親の世話のため実家へ帰る決意を固めていた。多聞が関係の終わりを望まないと訴えても、栞は「良い思い出にしましょう」と長野に戻ってしまう。

自分の至らなさに向き合い、栞にまっすぐ愛を伝えるようになった多聞は、前半から振り替えれば、男子3人の中で最も成長した存在ともいえるのではないか。公式X(旧Twitter)から、「好きな人に『スマホ捨てて』と言われたらみなさんは……」と、ややイジられ気味なのも微笑ましい。

一方で、郷雄馬(前田公輝)は、意識不明の状態で倒れた祖母・元子(丘みつ子)の世話に病院を頻繁に訪れている。孤独を感じながらも、元恋人の近藤奈美(深川麻衣)へ連絡しようとしては躊躇する雄馬。奈美もまた、雄馬の状況を知らずに実家を出て一人で新生活を始めるが、無意識のうちに雄馬のことを思い出してしまう。

各男女の恋心がすれ違う中、今回は友情にもヒビが。こんなときこそ友達同士で支えあうべきにも関わらず、真和・雄馬・多聞の3人はZoomで口論を始めてしまう。「俺たち、親友だろ?」という雄馬の言葉を冷たくあしらった久米真和(福士蒼汰)の大人気なさが喧嘩の発端ではあるものの、突然今村絵里加(岡崎紗絵)が母親を連れてきたことを思うと真和だけを責める気にもなれない。

ちなみに、この毎話お馴染みのZoomのシーンは別撮りで行われているとのこと。Zoomならではのそれぞれの自宅の個性が垣間見えるだけでなく、女子3人がブックカフェで女子会を開いているのに対し、男子3人はオンラインという対比も面白い。

そして何より、福士蒼汰・前田公輝・本郷奏多の自然体な演技が、この3人のキャラの“昔からの友情”に説得力を生んでいる。画面の向こうの私たちへの「近況報告」っぽさも感じられるこのやりとりを、毎回楽しみにしている視聴者も多いのではないか。

ドラマが来週ついに最終回を迎える流れもあり、恋愛ドラマというよりは人間ドラマとしての側面が色濃く表れてきた第8話。今回のエピソードでは、“アイ(愛)がない”と言われ続けてきた真和が過去と決着をつける。そのきっかけになったのが、愛(佐々木希)が真和のもとに連れてきた自身の息子・晴人(立野空侑)だ。

「僕にも見つかるかな? ママのピアノみたいなもの」と不安そうな晴人を、見事に勇気づけた真和。きっとそれができたのは、真和が晴人に幼い頃の自分を投影して話をしていたからなのだろう。

晴人に言わせた「僕にはママがいる!」は真和自身がずっと信じたいと思いながらも、現実には叶わなかった願いなのかもしれない。そう思うと、真和が自らの母に聞きたかった「何でお母さんは僕を捨てたの?」がひときわ切なく響く。

さらに絵里加から真和への「やっぱり、私はあなたが好きです」という告白を皮切りに、第8話のラストは怒涛の告白ラッシュを迎える展開に。

ここまでに、それぞれが痛みを抱えながらも“アイ”の重みを知ったからこそ、今度は誰かと“アイ”を分かち合いたいと思えるようになったのかもしれない。相手の過ちや弱さに、悩んで向き合ってぶつかって……そして最後には許すこと。今の7人なら、きっとそれができるに違いない。

(文=すなくじら)

© 株式会社blueprint