とどまる所を知らない音質追求。ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 4」レビュー

ゼンハイザーはコンシューマ向けのワイヤレスヘッドホン・イヤホンについて、絶えずその「音質」を向上することに全身全霊を傾けているオーディオブランドだ。

現在のラインナップの中で、特にプレミアムクラスの“MOMENTUMシリーズ”については最新鋭のワイヤレステクノロジーも貪欲に盛り込んでいる。完全ワイヤレスイヤホンの新しいフラグシップである「MOMENTUM True Wireless 4」(以下:MTW4)はその代表格だ。

「MOMENTUM True Wireless 4」(予想実売価格:税込49940円前後)

MTW4は2022年に発売した前機種の「MOMENTUM True Wireless 3」(以下:MTW3)からデザインをほぼそのまま踏襲しつつ、内容はさらに充実させている。

MTW4(左)と前機種MTW3(右)は、ケースを含めて形状面でほとんど差異が無い
色合いについては、MTW4(左)では存在感のあるメタリックカラーを採用した

オーディオ的にはQualcomm Snapdragon Soundにも対応した。aptX Adaptiveによる接続時には最大96kHz/24bitの可変ビットレート方式によるハイレゾワイヤレス再生が楽しめるほか、aptX Losslessにも対応したことから、CD音質の非圧縮ワイヤレス再生ができる。

利用可能なBluetooth接続品質は、アプリ「Smart Control」からも確認できる

前機種にはなかったBluetooth LE Audio再生の機能がMTW4に加わる。発売後に実施を予定するソフトウェア・アップデートを経て、スマートフォンなど音楽プレーヤー側とLE Audioでつながる際には音質と低レイテンシ、接続安定性などバランスに優れるLC3コーデックが選べるようになる。なおLE Audioのブロードキャスト機能である「Auracast」もアップデートにより加わることが予告されている。

最初にゼンハイザーが磨きをかけたMTW4の音質からチェックした。ドライバーは自社開発による7mm口径のTrueResponseトランスデューサーを前機種から引き継ぎ、チューニングをアップグレードしている。

カラーバリエーションは、ブラックグラファイト/ホワイトシルバーから選べる

年初に米ラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー「CES 2024」に出展していたゼンハイザーのブースを訪問した際、本機の担当者は8kHz周辺に残っていたわずかにピーキーなバランスを整えて、3 - 5kHzの高音域は見晴らしを改善したことがチューニングのポイントと語っていた。

自社開発のダイナミックドライバーは前機種と共通だが、チューニングをさらに追い込んでいる
ケースはイヤホン本体のメタリックカラーと馴染む色合いに

試聴はiPhone 15 Proに加え、aptX Adaptiveの再生はAQUOS R8 proでも聴いた。Apple MusicでReiのアルバム『VOICE』から「Love is Beautiful」を再生。ボーカル、エレキギターのメロディが力強く浮かび上がる。音の輪郭線がMTW3よりも一段と鮮明に浮かび上がる印象だ。シンセサイザーやコーラスによるハーモニーはとてもふくよかで色鮮やかだ。ベース、ドラムスの低音は重心が低く抜群に安定している。

特定の音域だけを目立たせることなく、それでいて煌めくエネルギーを伝えるサウンドがMOMENTUMシリーズの魅力。バンドが演奏する「生の音」を全身で浴びているような臨場感に引き込まれ、思わず同じ曲を何度も繰り返し聴いてしまった。

角野隼斗の楽曲「かすみ草」を聴いた。ピアノ、ヴァイオリンが演奏する繊細なメロディは芯をしなやかに、そしてダイナミックに描き出す。楽器の音色が豊かに響き、空間の広がりに限界を感じさせない。ピアニストの指先が鍵盤を優しく、軽やかにタッチする動きが活き活きと蘇る。

MTW4は前機種よりも音楽の足もとが安定感を増したようだ。音楽のジャンルを問わず、ソースのうまみを余すところなく引き出せる実力がさらに一段、飛躍を遂げた。映画にアニメ、ゲームのサウンドもMTW4で聴くと大きな充実感が得られると思う。多くの音楽ファンにぜひ一度試聴してほしい。

同じ楽曲を繰り返し聴き込みたくなる、そんな前機種のサウンドを、MTW4はさらに高い次元へ押し上げた

ノイズキャンセリングや外音取り込みすら“音が良い”

アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)はMTW3と同じく、周囲の騒音レベルに合わせて消音効果を自動で最適化する「アダプティブノイズ除去」とハイブリッド方式を組み合わせている。最新鋭のマイクユニットに合わせて設計したノイズフィルターにより、自然な消音効果が得られるという。

筆者は騒音量の多い地下鉄の車内、中程度に賑やかなカフェなど色んな場所で試してみた。ANCの効果がビシッと決まり、煩わしい環境ノイズがスッと抑えられる。耳の奥を突くようなプレッシャーはない。ANCのオン/オフを切り替えても音楽リスニングのバランスが崩れない。経験に富んだゼンハイザーらしい、とても丁寧なチューニングだ。

モバイルアプリ「Smart Control」から選べる「風切音の防止」機能は、MTW3よりもさらに効果がブラッシュアップされていた。本機を屋外で使う際には常時オンにしたいくらいだ。

様々な設定やカスタマイズができるアプリ「Smart Control」
「風切音の防止」機能は、屋外では常にオンにしてもよいくらいに効果が高まった

外音取り込み(トランスペアレントモード)の機能もまた環境音の聞こえ方がいっそうクリアになり、心地よさが増していた。Smart Controlから外音取り込みの強度がスライダー操作から無段階で細かく設定できる。

外音取り込みの程度は無段階のスライダーで調整できる

ANCとメリハリを効かせて使い分けるなら、プリセットから効果を「高」に決め打ち設定にしてもいい。屋外の環境音がよく聞こえるので、歩きながら安全に音楽やYouTube動画の音声が聴ける。オフィスや自宅でオンライン会議に参加する際にも外音取り込みをオンにしておけば、周りから声をかけられた時にもすぐ反応できる。

トランスペアレントモードをオンに切り替えた時に、再生中の音楽を一時停止する設定もアプリから選べる。飛行機による空の旅で、時折キャビンクルーと会話を交わす際などにはイヤホンを着けたまま、より聞こえが良くなるのでおすすめだ。

MTW4は左右イヤホンの側面がタッチセンサーリモコンになっている。マルチタップ操作でANCや外音取り込みモードの切り替えが素速くできる。センサーの反応も良い。

タップ操作はユーザーが覚えやすいように、利用可能なオプションの範囲内で自由に操作方法をカスタマイズできる。欲を言えば「風切音の防止」をもっと頻繁に使いたいので、本体のタップ操作でオン/オフが切り替えられるようにしてほしい。ソフトウェア・アップデート等でオプションが追加されることを期待したい。

タップで呼び出せる機能はある程度カスタマイズ可能。アップデートでより多くの機能を割り当てられることにも期待したい

MTW4は左右イヤホンのノズル内に通話用マイクを内蔵している。ハンズフリー通話時にユーザーの声だけをピックアップして相手にクリアに伝えるノイズリダクション技術などが搭載されている。長時間に渡るオンライン会議の通話用デバイスとして本機を使ってみたところ、確かに疲れにくさを実感した。

ノズル内のマイクが通話時にも活躍。ちなみに、イヤーピースのフィルター形状がMTW3から変更されている

今シーズンは“MOMENTUMシリーズ”の新顔であるスポーツタイプの「MOMENTUM Sport」も登場するが、MTW4もイヤホン本体がIP54相当の防塵・防滴仕様なのでスポーツシーンで本格的に使える。MOMENTUM Sportはハウジングをセミオープンとしているのでサウンドや使い勝手が違う兄弟機だ。密閉型のMTW4はパッシブな遮音性能も高いので、より幅広いシーンで使い回しが利くと思う。

MTW4は“MOMENTUMシリーズ”の顔として、様々なシーンで極上の音を届けてくれるはずだ

MTW4で最良の音質と遮音効果を得るためのTIPSとして、Smart Controlアプリが搭載する「フィットテスト」を活用して、イヤーピースのサイズ選択や装着状態を逐次確認することをおすすめしたい。ゼンハイザーの最新プレミアムイヤホンが最高のリスニング体験を届けてくれるはずだ。(企画協力:Sonova Consumer Hearing Japan)

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