【震災・原発事故13年】新たな課題を明確に(3月11日)

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から丸13年を迎えた。この1年、復興の現場はいくつかの大きな節目と向き合い、次の一歩を踏み出した。一方で新たな問題も浮かび上がってきている。政府が手厚く支援する「第2期復興・創生期間」も期限が近づく。取り組むべき課題を明確にし、克服への決意を固める一日としたい。

 難題の一つと言われてきた放射性物質のトリチウムを含む処理水は昨年8月、福島第1原発からの海洋放出が始まった。これまで4回実施され、大きなトラブルはない。海水の濃度は国の基準値を下回っているが、関連する作業では汚染水の漏出や作業員が放射性物質に触れる人為的ミスが相次いでいる。

 帰還困難区域の避難指示解除も進展を見せている。六つの町村に設定された特定復興再生拠点区域(復興拠点)は、昨年11月の富岡町の解除で全てが完了した。新たに除染を進める特定帰還居住区域の復興再生計画策定も大熊、双葉、浪江、富岡の4町が政府の認定を受けた。

 政府、東電は福島第1原発の廃炉をスムーズにするため、海洋放出は不可欠と主張してきた。さらに政府は帰還困難区域全体の避難指示解除を長い時間をかけても成し遂げると約束している。それぞれが新たな段階に入った。「3.11」以前に増して豊かさが実感できる社会をつくり上げる「創造的復興」にどう結び付けるかの正念場に差しかかっているともいえる。

 まずは計画遅れが懸念されている福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)の取り出し作業を着実に前進させてほしい。現状を広く国民に周知し、原発事故は国全体の問題だと強く認識してもらうことも忘れてはならない。

 避難指示の解除と合わせて産業の集積も欠かせない。住民帰還では最も厳しい環境にある双葉町に高い技術を誇る撚糸工場が進出し、大熊町には世界最先端の半導体メーカーが立地を決めた。浪江町に開設された福島国際研究教育機構(エフレイ)の研究と合わせ、科学と技術の最先端の地に育て上げていきたい。

 国内は大規模な災害が相次ぐ。元日に起きた能登半島地震の被災地、被災者にも希望が見いだせるような復興の姿を示したい。(安斎康史)

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