東日本大震災13年 除染廃棄物全国知事調査 最終処分7割超賛否示さず 受け入れ「国の責任で対処を」

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から11日で丸13年。この日に合わせ、福島民報社は全国の都道府県知事を対象に、原発事故に伴う除染廃棄物に関するアンケートを実施した。中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に一時保管されている除染廃棄物の福島県外最終処分に関し、自らの都道府県内での最終処分場の建設受け入れへの賛否を尋ねたところ、「どちらともいえない」「その他」との回答が計34人で、7割超が賛否を明確にしなかった。「国の責任で対処すべき問題」との指摘が多く、政府の主導力が問われる結果となった。

 除染廃棄物について、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法は2015(平成27)年3月の搬入開始から30年以内に福島県外で最終処分すると定めている。期限まで残り21年となるが、現時点で最終処分場の設置に関する具体的な手続きは決まっていない。ただ、中間貯蔵施設の整備を巡っては、当時の福島県知事が双葉郡の首長らと協議を重ねた末に建設を容認した。こうした事例を踏まえ、アンケートは福島県を除く46都道府県の知事の考えを聞いた。

 各知事の回答は【表】の通り。「どちらともいえない」は11人、「その他」は23人、「賛成」はゼロだった。「どちらともいえない」と答えた長野県の阿部守一知事は「国が具体的な方針を示し、科学的根拠に基づく安全性確保について説明責任を果たし、国民理解の醸成に努めるべきだ」と求めた。秋田県の佐竹敬久知事は「必要性は理解するが、技術的課題など不明な点が多く、現時点では判断できない」との考えを示した。

 「反対」と答えたのは4人だった。鹿児島県の塩田康一知事は「住民の不安や風評被害が懸念される除染廃棄物を受け入れる考えはない」と拒否の姿勢を明示した。福島県に隣接する栃木県の福田富一知事は「除染土壌などを福島県に次いで多く抱えており、処分のめどが立っていない」と地元でも原発事故による課題が残されている事情を説明した。

 福島県の内堀雅雄知事は8日に開かれた政府の復興推進委員会で、除染廃棄物の最終処分の期限まで「あと21年しかない」と危機感を示した。詳細な計画が示されていない2025(令和7)年度以降の具体的な方針と工程を早期に明示するよう政府に求めた。

■最終処分場の建設受け入れの賛否

▼賛成=0人

▼どちらかといえば賛成=0人

▼どちらかといえば反対=0人

▼反対=4人

山形、栃木、山梨、鹿児島

▼どちらともいえない=11人

岩手、秋田、埼玉、福井、長野、愛知、滋賀、奈良、山口、長崎、宮崎

▼その他23人

北海道、青森、宮城、茨城、群馬、千葉、新潟、富山、静岡、三重、京都、大阪、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、徳島、香川、高知、福岡、佐賀、熊本

※東京、神奈川、石川、岐阜、和歌山、愛媛、大分、沖縄は無回答

■自らの都道府県内での最終処分場の建設受け入れへの賛否と理由

北海道・鈴木直道知事 その他 国において適切に対応されるべきと考えている

青森・宮下宗一郎知事 その他 仮定の質問には答えられない。回答を差し控える

岩手・達増拓也知事 どちらともいえない 本県における処分も進んでいないので判断しかねる

宮城・村井嘉浩知事 その他 処分基準や安全性担保の考え方などが示されていない。本県でも大量の除去土壌や除染廃棄物が保管されている

秋田・佐竹敬久知事 どちらともいえない 必要性は理解するが、技術的な課題や県民の考えなど不明な点が多く、現時点では判断が付かない

山形・吉村美栄子知事 反対 風評被害への懸念があり、県民の理解が得られない

茨城・大井川和彦知事 その他 県内で保管している除染土壌を処分することが優先事項と考える

栃木・福田富一知事 反対 本県は除染土壌に加え指定廃棄物も福島県に次いで多く抱えており、その処分のめどが立っていない

群馬・山本一太知事 その他 国が研究・技術開発の推進、最終処分の方向性について検討している段階。具体的なことが決定していないため回答を控える

埼玉・大野元裕知事 どちらともいえない 除染土壌の処分などのための減容化、再生利用の厳格な在り方を見据え、国の動向を見守りたい

千葉・熊谷俊人知事 その他 国は最終処分場に関する基準などを策定する予定としており、引き続き国の動向を注視していく

東京・小池百合子知事 無回答

神奈川・黒岩祐治知事 無回答

新潟・花角英世知事 その他 国において減容技術、最終処分の方式、最終処分場の構造などについて検討中と承知。現段階では判断できない

富山・新田八朗知事 その他 国の責任で適切な対応を検討し決定されるべきもの

石川・馳浩知事 無回答

福井・杉本達治知事 どちらともいえない 国が実証事業などを行っている段階であり、結果を見ていく必要がある。国の責任で国民の理解醸成を進めるべき

山梨・長崎幸太郎知事 反対 現時点で国から最終処分に関する基準などは示されていない。安全性など正確な情報を得る必要があるため現状では受け入れできない

長野・阿部守一知事 どちらともいえない 国が具体的な方針を示し、科学的根拠に基づく安全性確保について説明責任を果たし、国民理解の醸成に努めるべき

岐阜・古田肇知事 無回答 

静岡・川勝平太知事 その他 国による検討段階であるため、受け入れについて判断できない

愛知・大村秀章知事 国の責任で対応すべき問題。都道府県が主体的に対応する性格のものではない

三重・一見勝之知事 その他 具体的な議論を行っておらず、現段階で回答いたしかねる

滋賀・三日月大造知事 どちらともいえない 県として受け入れの賛否を示す段階にはない

京都・西脇隆俊知事 その他 国が責任を持って結論を導き出すべき

大阪・吉村洋文知事 その他 国から自治体に対し具体的に何も示されていない状況にあるため、府として回答を控える

兵庫・斎藤元彦知事 その他 国の責任において取り組みを進めるべき

奈良・山下真知事 どちらともいえない 建設受け入れによる周辺地域への安全性が不明瞭

和歌山・岸本周平知事 無回答

鳥取・平井伸治知事 国から十分な説明を受けていないことから受け入れの可否について検討は進んでいない

島根・丸山達也知事 その他 県として十分な知見を有していないため、回答を差し控える

岡山・伊原木隆太知事 その他 現段階では具体的な国の方針が示されていないことから、回答は差し控える

広島・湯崎英彦知事 重要な課題と認識しているが、国は未だ検討中であり、安全性についての住民の理解と信頼を得られていないことから判断できない

山口・村岡嗣政知事 どちらともいえない 国の動向が不明であり、検討する段階にない

徳島・後藤田正純知事 その他 国が最終処分に関する具体的な方針を検討している段階で、国が責任を持って主体的に対応している事案である

香川・池田豊人知事 その他 国において具体的な方針が定まっていない段階であるため、回答は差し控える

愛媛・中村時広知事 無回答

高知・浜田省司知事 その他 国において議論されるべき内容であると考えており、回答は差し控える

福岡・服部誠太郎知事 その他 国民理解を深めるために、国が前面に立って取り組むべき事案であり、県としては今後の国の動向を注視したい

佐賀・山口祥義知事 その他 国全体としてどう向き合うのか、国が責任を持って対処方針を示してほしい

長崎・大石賢吾知事 どちらともいえない 国において最終処分の方向性が検討されているところであり、現時点での判断は困難だ

熊本・蒲島郁夫知事 その他 具体的な話を聞いていないため、判断できない

大分・佐藤樹一郎知事 無回答

宮崎・河野俊嗣知事 どちらともいえない 現時点で受け入れ賛否の判断は難しい

鹿児島・塩田康一知事 反対 住民の不安や風評被害が懸念される除染廃棄物を受け入れる考えはない

沖縄・玉城デニー知事 無回答

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