<これでいいのか三重> 多文化共生 外国人住民に「言葉の壁」 日本語教育支援の拡大急務

【「外国人との共生を考える三重の協働円卓会議」で市の取り組みについて話す末松市長=鈴鹿市南玉垣町の市ふれあいホールで】

 三重県内の外国人住民数(昨年末現在)が過去最多を更新した。労働力不足に伴い加速する多文化共生社会の中で、多国化する外国人住民の日本語能力や教育レベルの引き上げが、急務となっている。

 多文化共生の実現に向けて取り組むNPO法人愛伝舎の坂本久海子理事長(62)は「持続可能な社会づくりを進めるためには外国人が経済的に自立し、地域の担い手となって共生していくことが必要不可欠」と話す。令和5年1月1日現在の県における住民基本台帳年齢階級別人口をもとに、県国際交流財団がまとめた20―30代の外国人比率は、約11.2%。すでに多くの若い外国人労働者が、地域の産業を下支えしている。

 坂本理事長は、南米系の定住者が日本語を話せないまま高齢化し、生活保護などの問題につながっていることや、技能実習生などで増加するアジア圏の若者は、会社以外で地域とつながる機会がないため、日本語が上達せず孤立してしまうことが多いと指摘。「日本語能力向上が外国人住民の経済的、社会的自立につながるのに、市民団体などボランティアに委ねられている部分が大きい。行政や企業の責任は大きい」と話す。

 鈴鹿市南玉垣町の市ふれあいホールで1月31日、初開催した「外国人との共生を考える三重の協働円卓会議」では、幅広い関係者が多文化共生の取り組みや課題について意見交換した。

 日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は講演で、「外国人がいなければ社会が回らない状況が広がりつつある。(外国人から)選ばれる国になるためには、ともに地域の将来を担う仲間として、外国人を受け入れる意識転換を図る必要がある」と課題を提起。

 6県の11自治体で構成する「外国人集住都市会議」に、県内から唯一参加する鈴鹿市の末松則子市長は、小中学校で取り組む市独自の日本語教育システムや、その効果などにより外国人生徒の高校進学率が高いことを挙げ「外国人住民をいかに地域の『生活者』として受け入れていけるかが、今後の多文化共生の実現に向けた重要なポイント」と話した。

 7歳の時にペルーから来日した本田技研工業社員の宗沙ルイスさん(37)は、学校や地域の学習支援などを糧にして高校、大学を卒業し、就職した経験をもとに「外国人が日本で活躍するためには、安心して幅広く人生を選択できる環境の実現が必要」と意見を述べた。県が2月28日に発表した令和五年末現在の外国人住民数は、115カ国・地域の6万2561人で、前年より5282人増加。

 県は多文化共生関連の新年度予算に約1億300万円を計上。現在県内の日本語教室は13市町に37教室あるが、行き渡っていないとして、新規事業でオンラインの日本語教室を試験的に立ち上げるほか、新たに1月を「多文化共生月間」と定め相互理解を図る。

 どこで住みたいか、外国人にも選択する権利がある。選ばれる「三重」になれるのか、受け入れる私たちの覚悟とともに、真に必要とされる施策の見極めが求められる。

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