パチンコホール経営企業の売上・利益動向調査を実施(2023年)~パチンコホール経営企業117社の2022年度決算平均、営業利益率1%未満という厳しい状況が続く~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、パチンコホール経営企業117社の決算情報から主要指標の平均値を算出し、売上・利益動向を明らかにした。

1.調査結果概要

本調査では、当社『YANOパチンコデータベース』に収録されている全国のパチンコホール経営企業1,842社から、企業規模を考慮し任意に117社を抽出した。それらの決算情報の主要指標平均値を算出し、2020年度から2022年度までの3ヵ年の業績推移分析を行った。

2022年度においては、117社の売上高平均149億8,600万円に対し、売上原価平均128億6,200万円(構成比85.8%)、販売管理費平均21億1,100万円(同14.1%)、営業利益平均1,400万円(同0.1%)であった。
売上高は2021年度に前年度比1.6%減と、コロナ禍が直撃した2020年度から更に減少した。2022年度は同0.5%増の微増に留まり、厳しい状況が続いている。2022年度はパチスロ6.5号機とスマートパチスロ※(以下、スマスロ)の導入によってパチスロ部門の復調が顕著となったが、対照的にパチンコ部門は厳しさが増しており、売上高の本格的な回復には至らなかった。

※「スマートパチスロ(スマスロ)」は、遊技メダルを電子データ化することで、物理的な遊技メダルを使用せずに遊技できるパチスロ機。内規変更によって従来機と比較してスペック設計の幅が広がり、多様なゲーム性を持つスマート遊技機の開発が可能になる。

2.注目トピック~パチンコホール経営企業117社の売上・利益動向

【売上高・売上原価】
売上高は2021年度が前年度比1.6%減、2022年度は同0.5%増と微増に留まった。コロナ禍の直撃を受けた2020年度の売上高を2年度連続で下回るという、非常に厳しい状況が続いている。
2022年度の売上原価の構成比は前年度から0.7ポイント上昇して85.8%となった。数年来、売上原価の構成比は85%以上の水準を保っている。

【売上総利益】
2022年度は売上高が前年度から微増したが、売上原価が前年度比1.4%増と売上高の増加率を上回ったことで、売上総利益は4.6%減少した。売上総利益の構成比も0.7ポイント低下している。

【販売管理費】
販売管理費は2021年度、2022年度と削減が続き、2022年度の構成比は前年度比0.2ポイント減の14.1%となった。
ただし、2019年度の販売管理費の構成比は12.5%(集計対象の企業が異なる2022年調査結果)であり、2020年度以降は3年度連続で構成比が14%台で推移している。過去の同様な調査結果によると、販売管理費の構成比は2008年度を境に構成比が10%を超えており、それ以降ホール経営を圧迫し続けている。
販売管理費構成比の高止まりは、2022年1月末を期限とした新規則機への移行、2022年11月からのスマスロの導入で、遊技機および付随する設備機器の多大な購入費用が必要となる状況が続いていることが背景にある。営業利益の増大には販売管理費の大胆な削減が必要だが、今後も市場での競争力を維持していくには普及期にあるスマスロ・スマパチ※をはじめ、短期間で移り変わるパチンコ・パチスロファンの遊技トレンドに対応するための遊技機の積極的な新規購入を継続していく必要がある。
また、2024年には新紙幣の発行に伴う設備機器刷新も発生するなど、パチンコホール経営企業は当面、投資が先行する状況が続くことになるだろう。

【営業利益】
2022年度の営業利益は前年度から85.5%減、構成比は0.5ポイント低下して0.1%と低調な結果となった。売上総利益や販売管理費の構成比がともに14%台で推移していることで、営業利益の構成比は1%に満たないという状況が続く。

※「スマートパチンコ(スマパチ)」とは、遊技機の内部に遊技球を封入して循環させることで、遊技球に直接触れることなく遊技できるパチンコ機。

© 矢野経済研究所