東日本大震災から13年 避難所から防災教育まで広がる「段ボールハウス」

3月11日で東日本大震災から13年を迎えますが、能登半島地震でも未だに避難所の寒さ対策やプライバシー確保などが課題となっています。その解決方法の一つとして注目されているのが、「段ボール」です。能登半島地震の被災地では寒さを軽減する段ボールハウスが普及しているほか、都内でも、大田区の小学校で段ボールを使った防災授業が行われています。

震災発生から2日後の1月3日。石川県輪島市の避難所に建てられた10棟の小さな家。これは、建築デザインが専門の、名古屋工業大学大学院北川啓介教授が開発した、「段ボールハウス」です。

名古屋工業大学大学院 北川啓介教授:「輪島中学校の体育館がガラスが両側割れてしまって風が吹き込んでしまっていると。すぐ向かってそこに10棟、屋内用のインスタントハウスをお届けした」

組み立て時間は15分ほど。2畳ほどの広さで、ハウス同士を連結させることもできます。北川さんは能登半島地震の直後から被災地に行き、これまでに約900棟の段ボールハウスを提供してきました。

名古屋工業大学大学院 北川啓介教授:「3歳の女の子が「おうちができた!」とすごく大きな声で言ってくれた。おうちが半壊全壊になった子供たちからもそういう言葉が出てきて、体育館から外に出て一人で号泣していた」

段ボールハウスが誕生したのは、北川さんが、東日本大震災で宮城県石巻市に行った時小学生に言われた言葉がきっかけでした。「なんで仮設住宅ができるまで3カ月もかかるの?」「大学の先生だったら来週建ててよ」

名古屋工業大学大学院 北川啓介教授:「私も建築の専門をしている一人としても悔しい気持ちもありましたし、「私がここで何もしなかったら変わらないかもしれない」と思い、研究開発していこうという気持ちになった」

この段ボールハウスの無償提供は現在、寄付で賄っていて、今後、国や自治体の支援の広がりが期待されています。

段ボールを防災に活用しようという動きは都内でも…。

日本工学院専門学校 瀧川慧主任:「三角形と三角形、これをくっつけるのは、のりとかガムテープじゃなくてクリップです」

去年11月、大田区立道塚小学校で行われたのは、子供用の段ボールシェルターを作る授業です。

日本工学院専門学校 瀧川慧主任:「(クリップなど)すぐに手に入るものでできることという縛りで、その中でできることって何だろうということでデザインした」

慣れない作業に最初は戸惑う様子も。しかしコツがつかめてくると、連携しながらスムーズに組み立てられるようになってきました。作業開始から約30分で完成です。子供たちは、楽しみながら防災について学べたようです。

児童:「楽しかったけれどちょっと難しかった。段ボールは断熱効果があるのでちょっと暑かった」「一人だとどうしても留めにくくて、チームでできたのが嬉しかった」「(Q:実際にこのシェルターが避難所にあったらどうですか?)すごく生活しやすいんじゃないかな?」

段ボールシェルターに入ってみると…。

記者:「立つことはできないが中腰くらいはできるので、お着換えとかはできそうです。そして足を延ばせるので、結構快適です」

学校側も今後、地域の防災訓練などでシェルターを活用して行きたいとしています。

大田区立道塚小学校 大場寿子先生:「避難所にはお年寄りの方も来れば、子供たちも集まる。一人一人のニーズに合わせたシェルターが今後豊かに段ボールなどで作られたらいい」

都内では備蓄用として、段ボールベッドが多くの自治体の新年度予算に盛り込まれていますが、寒さやプライバシー対策ができる段ボールハウスについても支援の広がりが期待されます。北川教授の段ボールハウスですが、現在、名古屋工業大学が基金を設けていて、3月8日までに約4700万円が集まっているということです。ただ、基金だけで賄っているということで公的な支援がないということなんです。北川教授に寄りますと、感染症対策にも役立っているということですので今後、公的な支援の広がりが期待されます。

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