震度5強は「すぐ避難」46.9%に増 能登地震で意識変化か 本紙アンケート

㊧震災の浸水域内で震度5強の地震が発生した際の行動㊨最大クラスの津波浸水想定を受けた自身や周囲の対策の変化

 岩手日報社が東日本大震災の犠牲者遺族や行方不明者家族に行ったアンケート調査で、震災の津波浸水域内で震度5強の地震に遭い「すぐに避難する」と答えた人は46.9%(前年度比8.6ポイント増)だった。近年低下傾向だったが、元日の能登半島地震で警戒感が高まったとみられる。一方、県が示した最大クラスの津波浸水想定を受け、自身や周囲の対策が変化したとの回答は22.3%。地域全体で避難意識を行動につなげる取り組みも求められる。

 調査は2023年12月から1月まで行い、239人が回答した。浸水域内で震度5強の地震発生時の行動は「すぐに避難」が最多。「テレビなどで情報収集」は46.0%(同5.9ポイント減)が続いた。

 調査は毎年行っており「すぐに避難」は震災直後が半数超、16年度調査以降は40%台で推移。震災10年を経て直近2年は38%に低下していた。今回の調査期間に能登半島地震が発生。津波や避難所の報道に震災当時を重ね、避難意識向上に働いた可能性がある。

 同地震は多くの官公庁や企業が休みで、1年で最も警戒が緩む元日に起きたことも被害を広げたとされる。22年に県が示した新被害想定は、冬の夕方に発生した「最悪」の場合、震災を上回る最大7100人が犠牲になると推計。その上で、即避難で犠牲者を最大87%減らせるとした。

 早期避難が重要だが、新想定を受けた自身や周囲の対策の変化は「なかった」が46.2%で最多。「分からない」も30.3%を占めた。回答した人のうち25.9%の自宅は浸水区域にある。新想定を自身の行動や地域の対応と結びつけ、備えを急ぐ必要がある。

 津波には数分で第1波が襲った能登半島地震、弱い揺れの後に巨大津波が発生した1896(明治29)年の明治三陸大津波など多様なタイプがある。

 静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)=元県立大准教授=は「積極的な避難意識が保たれていることは意義深い」と評価。能登半島地震被災地での現地調査を踏まえ「建物倒壊や道路網の寸断なども見据え、今後の津波避難を考える上では建造物耐震化の視点も一層重要になる」と指摘する。

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 【調査方法】東日本大震災犠牲者の生きた証しを残す企画「忘れない」の取材に応じた県内外の遺族や行方不明者家族300人を対象に実施。2023年12月~今年1月に岩手日報社記者が郵送または直接面談で行い、239人(男性111人、女性128人)から回答を得た。回答率79.7%。年代別は30代3人、40代22人、50代40人、60代68人、70代80人、80代23人、90代以上2人、無回答1人。回答者の割合は端数処理のため合計が100%にならないことがある。

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