東日本大震災で福井へ避難…21歳女性が能登支援へクッキー商品化「ちょっとずつ、元気に」

能登半島地震の被災地支援のために作ったクッキーを手にする柑本明里さん(右)と恩師の岩堀美雪さん=3月7日、福井県鯖江市

 2011年の東日本大震災で被災し、福島県から一家で福井県鯖江市に避難した21歳女性が、能登半島地震の被災地を支援するクッキーを商品化した。8歳で被災し、ふるさとよりも長く過ごした福井で恩師と慕う元小学校教諭と考案。同じ大災害に遭った一人として伝えたい。「ちょっとずつでいいから、元気になって」―。

 女性は鯖江市在住の柑本(こうじもと)明里さん。震災当時は福島県中部の二本松市に住み、小学2年生だった。一家は東京電力福島第1原発事故の直後に避難を決断した。「寝て起きたら福井にいた」という感覚だった。

 転校先の鯖江市立待小で3年生の学年主任だった岩堀美雪さん(63)に出会った。岩堀さんは当時、ヒマワリの種を育てて被災地へ贈る復興プロジェクトに学校として参加。柑本さんを含む3年生85人で汗を流した。オリジナルソング「ひまわり」も作り、全国的に大きな反響を呼んだ。

 以来、岩堀さんが学年主任を離れても、教諭を退いた後も一緒に復興支援を続けてきた。柑本さんは「福島のために何かできることが、すごくうれしかった」と話す。

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 元日の能登半島地震。惨状を目にし、悲しみがこみ上げた。「何かできることは」と考えていたとき、岩堀さんから電話があった。お菓子作りが得意なことを知っていた恩師からクッキーを売って寄付する提案を受け、「やりたいです」と即答した。

 2人で材料を買い込み、レシピを考案。ヒマワリの種の復興プロジェクトでつながっていたNPO法人チームふくしま(福島市)の協力も得て、現地の福祉事業所が製造を担った。

 その名も「ひまわり能登応援クッキー」。福島県産の米粉生地に、ひまわり油を混ぜ込んだ自然派のクッキーだ。10日に鯖江市内のスーパーで販売。同NPOのホームページでも売っている。縁があった七尾市の被災者には直接プレゼントした。13年前、助け合える人を育てると誓った岩堀さんは「こんなにうれしいことはない」と教え子の成長に目を細める。

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 柑本さんは現在、通信制の大学に通う。「福井に住んでいる期間の方が長くなったけど、福島はやっぱり特別だし、大好き」。能登の復興を願い、いつまでもふるさとを好きでいられる幸せをクッキーに込めた。

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