「今どき厳しく叱るのってナシですか?」…マネジャーなら押さえておくべき「正しい部下の叱り方」【組織を変えるプロが解説】

マネジャークラスによくあるのが、「辞められると困るから、若い部下に厳しく言えない」という悩み。部下に問題行動があったときの「叱り方」は、特に難しい問題です。そこで今回は、横山信弘氏による著書『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)から、部下を叱るときのポイントついてご紹介します。

部下の問題行動を変える、3種類の働きかけ

あなたは、声を荒らげて部下を叱ったことがあるだろうか?

「しょっちゅうだ」と言う人もいれば、「ほとんどない」「一度もない」と言う人もいるだろう。

おそらく、厳しく叱りたいと思っている人はいないはずだ。やむをえず、心を鬼にして叱りつける。とても負荷がかかることだが、マネジャーとしての責任を考えたら、そうせざるをえないと判断する。だから、やるのである。

私は、部下の問題行動を変えるには、3種類の働きかけがあると考えている。

(1)叱る (2)注意する (3)指摘する

「叱る」ことを奨励する書籍など、今の時代、ほとんど見られなくなった。しかし場合に
よっては、部下を厳しく叱る必要もある。

厳しく叱るべき2つのケース

厳しく叱っていいのは、重大なリスクを相手が軽んじているときだけだ。リスクがあるだけなら、言って聞かせればいい。しかし、そのリスクの重大性を理解せず、軽視していると判断したら、厳しく叱ったほうがいい。いったん相手の思考を止める必要があるからだ。

わかりやすい例でいえば、子どもが急流の川に近づいたときだ。「危ない!近づくな!」と注意を促しても、「大丈夫、大丈夫!」と言って聞かない。そういう場合は、「こらァァァァ!」と大声で叱るべきだろう。

子どもがビックリして泣いてしまうかもしれない。そのせいで嫌われるかもしれない。だが、子どもの命には代えられない。「一度溺れてみたらいい。そうすれば、川の怖さがわかるだろう」なんて、呑気なことを言ってはいられない。

では、社会人に対してはどんなときか? それは、

(1)取り返しのつかないことが起こるリスクを軽視しているとき

(2)「当たり前の基準」が下がるリスクを軽視しているとき

の2つのケースがある。

わかりやすいのは(1)だろう。30年以上前。高級レストランで、アルバイトをしていたときのことだ。ホール係として結婚披露宴の準備をしていた。その際、私が4枚の皿を一度に持っていこうとして、シェフに激しく叱られた。

「心をこめて作った料理を、そんな風に持っていくな! 料理が崩れたら、どうするんだっ!」

ウエイター経験が長かった私は、4皿を一度に持って運ぶことに慣れていた。だから店長に「絶対やるな」と注意されていたのにもかかわらず、その忠告を無視したのである。早朝から出勤し、お客様のことを思って料理をしていた3人のシェフのことを考えていなかった。

(2)は、私たちコンサルタントがとても重要視することだ。たとえば毎朝5分、10分遅れてくる部下がいたとしよう。何度も「遅刻するな」と言い聞かせても、「5分や10分の遅刻にそこまで言わなくても」と言い返されたら、「ふざけるなっ!」と言いたくなるだろう。

言葉遣いは気をつけなければならない。しかし、「徐々に、できるようになればいい」ということではなく、「即刻ルールを守らせなければならない」ときは、何よりもインパクトが重要だ。

言葉を尽くしても納得しない相手だ。そういう相手には、いったん思考停止にさせるぐらいのインパクトが必要だ。

叱るときは感情に振り回されないようコントロールする

咄嗟のときなら、仕方がない。しかし、そうでないなら、叱るときは感情をコントロールしよう。

頭にきて、唇が震えていたり、胸の動悸が激しかったりするときは、叱るのをやめたほうがいい。感情に振り回されて、「叱る」がうまく機能しないからだ。こうなると、目的が「相手の行動を変える」ではなく「詰る(なじる)」「罵る(ののしる)」になってしまう。

大事なことは、相手の行動を即刻変えることである。厳しく叱らないと相手がすぐに行動を変えないから、その手段をとるだけだ。叱ることが目的ではない。

では、どのように感情をコントロールするのか? 演技をすればいい。つまり、事前に準備したセリフと感情レベルで、相手を叱るのだ。

演技でやっているからこそ、感情に振り回されることがなくなる。役者さながらの感情コントロールができたらベストだ。

横山 信弘

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長

経営コンサルタント

※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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