親子のうどん「さぬきや」復活 長崎蒲鉾が事業継承 長崎・梅香崎 「守り続けた味 これからも」

新しい「さぬきや」の前に立つ重寿さん(左)と髙﨑社長=長崎市梅香崎町

 長崎市役所のそばで半世紀近く市民に愛された、うどん店「さぬきや」は昨年末、のれんを下ろしたが、今年2月、新天地で“復活”を果たした。事業を受け継いだのは「かまぼこ長崎一番」ブランドで知られる老舗の長崎蒲鉾(かまぼこ)(同市)。独りで味を守り続けられるか悩む店主の馬場重寿(しげひさ)さん(53)に、その味にほれ込んだ髙﨑一正社長(64)が手を差し伸べた。
 さぬきやは1976年、重寿さんの父勉さん(84)と母妙子さん(82)が同市桜町の雑居ビル1階で始めた。素朴なだしと「県民の好みに合わせた」という少し軟らかく、つるんとした自家製麺。昼時は市職員や会社員らでにぎわった。同市出身のシンガー・ソングライターさだまさしさんも創業当時からよく訪れていたという。
 20年前から重寿さんも加わり、家族3人で営業してきたが8年前、手のけがを理由に勉さんが引退。腰が曲がってきた妙子さんを見かねた重寿さんは「母にもゆっくりしてもらいたい」と考えるようになった。だが新たに人を雇おうにも経営的に厳しく、妙子さんが体調を崩した時に一度、親戚に頼ったきりで不安を拭えなかった。 「どう経営していけばいいのか分からない」。長年ここに通う髙﨑社長は2年前、重寿さんから悩みを打ち明けられた。社業に追われていた時期だったので「跡取りとして責任持って続けろ」と鼓舞するしかできなかった。ただ、重寿さんの窮状も、両親から受け継いだ味を守りたいという熱意も知っていた。「この味は残さんばいかん」と昨年夏、引き継ぐことを決断。1914(大正3)年の創業以来初めて飲食店経営に乗り出した。
 同市梅香崎町の「長崎一番籠町本店」内の倉庫を改装。旧店舗内の木柱を削ってテーブルの脚に再利用し、椅子はそのまま持ち込んで面影を残した。重寿さんを社員にして新店舗を任せ、従業員を数人配置。「長崎一番手打ちうどん さぬきや」の名称で2月1日にオープンした。
 だしも麺も変わらず、長年愛された「かけうどん」(500円)や「ごぼう天うどん」(600円)などを提供。かまぼこメーカーの強みを生かし、県産魚の練り物をのせた「長崎地魚天うどん」(600円)や、旬を迎える彼岸ブリのつみれと春雨を入れた「つみれ汁」(600円)をメニューに加えた。かまぼこ購入客が立ち寄り、移転前の常連客も来てくれる。

「長崎地魚天うどん」(左)と「つみれ汁」

 「守り続けてきた味をこれからも残せるのが本当にうれしい」と話す重寿さん。髙﨑社長は「『ここにしかない』と言えるうどんを作り続けて、次世代に残してほしい」とエールを送る。
 営業時間は午前11時15分~午後7時。水日曜定休。

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