「オッペンハイマー」、作品賞など最多7部門受賞 米アカデミー賞

Lisa Richwine

[ロサンゼルス 10日 ロイター] - 第96回米アカデミー賞授賞式が10日、カリフォルニア州ロサンゼルスで開かれ、原爆発明者の生涯を描いた映画「オッペンハイマー」が作品賞など主要部門で受賞した。

同作はクリストファー・ノーラン監督が監督賞、主人公の理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーを演じたアイルランド人俳優のキリアン・マーフィーが主演男優賞、ロバート・ダウニー・Jr.が主人公と対立を深めた原子力委員長役で助演男優賞をそれぞれ受賞した。

マーフィーは受賞スピーチで「良くも悪くも、私たちは皆ロバート・オッペンハイマーの世界に生きている。私はこの作品を世界中の平和の調停役にささげたい」と話した。

最多13部門にノミネートされていた「オッペンハイマー」はこのほか、撮影賞、編集賞、作曲賞も獲得し、最多7部門に輝いた。

科学と政治をテーマにした同作は批評家の評価も高く、これまでの興行収入も予想を上回る約9億5380万ドル(約1402億円)を記録している。

また、主演女優賞は「哀れなるものたち」のエマ・ストーンが「ラ・ラ・ランド」(2016年)に次いで2回目の同賞受賞。助演女優賞は「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」のダバイン・ジョイ・ランドルフが獲得した。

このほか、長編ドキュメンタリー賞は「実録 マリウポリの20日間」(ムスチスラフ・チェルノフ監督)が受賞。ウクライナ侵攻後にロシア軍に包囲・破壊される南東部マリウポリの様子をとらえた。

また、ユダヤ人のホロコーストを題材にした「関心領域」が国際長編映画賞を受賞。ジョナサン・グレイザー監督は受賞スピーチで、「昨年10月7日にイスラエルで起きた(パレスチナのイスラム組織ハマスによる)事件の犠牲者であれ、侵攻中のガザの犠牲者であれ、全てこの人間性喪失の犠牲者だ。どう抵抗すればいいのか」と訴えた。

会場では米歌手ビリー・アイリッシュ、米俳優マーク・ラファロらがガザ停戦を呼びかける赤いピンを身につけたほか、会場周辺でもパレスチナ支援者ら数百人がガザ紛争に抗議する姿も見られた。

授賞式は米コメディアンのジミー・キンメルが2年連続4回目の司会を務めた。キンメルは式終盤、この日の自身の仕事ぶりを「支離滅裂で退屈で非常に不公平」などとする投稿がインターネット上にあったと紹介。その後、トランプ前米大統領による投稿だと明かし、「ありがとう、トランプ大統領。もう刑期は終わったの?」と皮肉った。

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