東日本大震災13年、女性は息子の戒名をペンネームに物語紡ぐ

将成さんの二つの遺影に見守られながら、執筆に励む紺野直子さん=10日、陸前高田市小友町

 大切な人を思い、生きていく。東日本大震災の犠牲者を悼み、命の重みをかみしめる日がまた巡ってきた。陸前高田市小友町のパート紺野直子さん(53)は、震災で亡くした長男将成(まさなり)さん=当時(14)=の戒名「祐峰将護(ゆうほうしょうご)」をペンネームに、童話や短編小説の執筆に励んでいる。「『時薬(ときぐすり)』という言葉、本当にそうだと思う」。震災から13年がたち、少しずつ前を向けるようになった。

 紺野さんは10日、将成さんの遺影が見守る部屋でパソコンに向かった。「天国の息子と一心同体だから。彼にも読んでもらいたい」。時間を見つけて創作に打ち込む。

 震災当時は、夫と中学3年の長女、同2年の将成さん、小学2年の次女の3人の子どもと小友町で暮らしていた。大船渡市内の勤め先で地震に見舞われた紺野さんは、湾口防波堤を越え、市内に迫る津波を左に見ながら、車で国道45号を南下した。

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