【日本一と称される福井県の「越前和紙」がスゴイ】お土産ショップもあり!見て学び体験できる「越前和紙の里」現地ルポ

2024年3月16日に北陸新幹線が開通し、東京からアクセスしやすくなる福井県越前市。約1,500年続く「越前和紙」は、その種類の多さや質のよさから日本一とも称されています。「越前和紙の里」は、越前和紙の歴史を学べるだけでなく、伝統工芸士による紙漉きの様子を見学できたり、実際に紙漉きを体験できたりと、越前和紙を見て学び体験できる施設。越前和紙や和紙を使った雑貨が買えるお土産ショップもあります。知れば知るほど奥深く、伝統と職人の技術に尊敬の念を抱かずにはいられない越前和紙の世界。現地ルポで紹介します。

伝統と職人技が光る「越前和紙」

福井県を代表する伝統工芸品「越前和紙」。江戸時代に発行されたお札(藩札)に用いられたほか、日本画家 横山大観・下村観山合作の「明暗」に使用されたり、国内外の木版画アーティストにも愛用されたりと、広く活用されています。使用用途に合わせて職人が試行錯誤しながら生み出してきた紙は、その種類も実に豊富なのです。

お札に使用された際には偽札防止の透かし技法(黒すかし)や、破れない技術も越前和紙の職人が開発したというから驚きです。まさに日本が誇る技術といえますし、約1,500年にわたり受け継がれてきた伝統の重みを感じます。

まずは紙祖神 岡太神社・大瀧神社に足を運んで

越前和紙の里から車で5分ほどの場所に「紙祖神 岡太(おかもと)神社・大瀧神社」があります。約1,500年前、村人に紙漉きの技を教えたとされる川上御前が祭神とされ、紙の神様を祀るのが岡太神社です。

何度も消滅の危機にあいながらも存続してきた祭神を、大瀧神社の相殿に祀り、摂社として境内に祀ったという伝説が語り継がれているのです。大瀧神社の本殿や拝殿は、独特な屋根の形をしており、荘厳な佇まいに圧倒されます。紙漉きに携わる人々にとって、特別な想いがある神社です。

ちなみに、御朱印については、越前和紙の里にあるパピルス館にて500円で販売されています。紙は手漉きの越前和紙が使用されているそうです。

「越前和紙の里」とは

福井県越前市五箇地区は、約1,500年もの長い歴史がある越前和紙の産地。こちらに「紙の文化博物館」「卯立(うだつ)の工芸館」「パピルス館」と、3つの独立した施設から成る越前和紙の里があります。

福井駅からは車で35分ほど。全長230mの通りにある3施設はそれぞれ100mほど離れており、入館料300円(紙の文化博物館と卯立の工芸館 共通入館券/高校生以下は無料)で見学できます。

紙漉きをしている人が描かれたマンホール

「卯立の工芸館」から見学するのがおすすめ

どこから見学してもOKですが、伝統工芸士による紙漉きの様子などが見学できる「卯立の工芸館」から見るのがよいと感じました。原料から和紙ができるまでの様子を、順を追って見ることができるので、知識がなくても理解しやすいです。

卯立の工芸館は趣のある建物が目印。こちらの家屋は実際に紙漉きを生業としていた西野平右衛門家を移築・改修したものです。

玄関正面に卯立を立ち上げた「妻入り卯立」がある珍しい家屋にも注目したいところ。こちらで見ることができる妻入り卯立は、五箇地区ならではの珍しい建築様式です。紙漉きによって「うだつを上げた」さまを示す、象徴的な家屋といえます。

和紙ができるまでの工程がわかりやすい

江戸中期に創建された建物を利用した卯立の工芸館内部は、紙漉き業を営む典型的な間取り。作業場では、原料である木の皮から和紙が完成するまでの一連の流れと作業を、実際に伝統工芸士さんが行いながら説明してくれます。

和紙の原料となる楮(こうぞ)や、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)。和紙は、これらの木の皮が使われます。

一番印象的だったのは、煮たあとの木の皮に付いているちりを取り除く地道な作業。冷たい水のなかで、ひたすら取り除いていきます。気が遠くなるような作業ですが、上質な和紙をつくるには欠かせない大切な工程なのです。

取り除く作業が終わったら、木の棒で叩き、繊維をほぐしていきます。

漉き槽(すきぶね)に水と叩きほぐした楮を入れ、「ねり」と呼ばれる「とろろあおい」の根から採取した粘液を加えるとようやく紙漉きがスタート。見ているだけでもわかるぐらいの粘り気がある液体です。

紙漉きはねりを加える「流し漉き」と、ねりの不要な「溜め漉き」があります。ここ、卯立の工芸館では流し漉きをしています。ねりを加えることにより、求める厚さに調整しやすくなるのです。

紙漉き後は、圧搾、乾燥という工程を経て和紙ができあがります。ただ和紙を作るだけでなく、用途に合わせて試行錯誤しながら技術の研鑽にも努めてきた職人さんには、本当に頭が下がる思いです。まさに日本が世界に誇れる技術だと実感しました。

卯立の工芸館は2階もあり、期間限定で企画展も開催されています。

短時間で紙漉き体験ができる「パピルス館」

卯立の工芸館では、本格的な「流し漉き」体験(1名 8,800円~/送料別途)もできるそうですが、短時間で気軽に紙漉きを楽しむなら「パピルス館」で体験してみるのはいかがでしょう。その日の空き状況にもよりますが、予約なしで誰でも体験できます。受付で紙漉き体験希望のむね、伝えればOKです。

はがき2枚や色紙、うちわ、名刺サイズ、コースター、中判や大判など作りたいものによって、かかる時間(20分~40分ほど)や料金も変わります。筆者ははがき2枚を作ることにしました。はがきなら20分程度でできるとのこと。料金は600円(現金のみ)です。

スタッフの人が丁寧に説明してくれるので、誰でも気軽にチャレンジできます。先に卯立の工芸館で紙漉きの工程を見学してきたので、ぎゅっと凝縮された手順ながらスムーズに進められました。

用意された好きな飾りをあしらったり、色づけしたり。ここはセンスが問われるポイントですね。筆者は色づけはせずに、金箔をあしらいました。

実際の紙漉きはこうはいきませんが、体験は楽しくあっという間に終了。少しの間乾燥させたあと、受付で作品を受け取ります。はがき2枚の場合、くっついた状態で渡されるので、自分で水をつけて切り離しましょう。ハサミは使わないのがポイントです。

越前和紙や和紙を使った雑貨などをお土産に

パピルス館には、和紙を使った雑貨などが販売されているショップもあります。

野菜や果物からできたノート 各550円(税込)

越前和紙を使ったヘアゴム 各880円(税込)

山次製紙所オリジナル和紙「浮紙」に天然顔料を施した茶筒 小 2,200円/中 2,530円/大 2,970円(税込)

和紙もさまざまな種類のものが販売されています。

越前和紙のミュージアム「紙の文化博物館」

越前和紙発祥の由来や歴史、製造工程などが映像とパネルで紹介されているほか、産地を代表する和紙を約360点展示しています。また、5~6回の特別展が開催されています。

越前和紙の里

卯立の工芸館

住所:福井県越前市新在家町9-21-2

電話番号:0778-43-7800

営業時間:9:30~17:00

※紙漉きの見学は16:00まで・入館は16:30まで

パピルス館

住所:福井県越前市新在家町8-44

電話番号:0778-42-1363

営業時間:9:00~16:00/ショップ9:00~16:30

※体験は16:00まで

紙の文化博物館

住所:福井県越前市新在家町11-12

電話番号:0778-42-0016

営業時間:9:30~17:00

※入館は16:30まで

休館日:年末年始・毎週火曜日

アクセス:【車の場合】武生I.Cから和紙の里まで約10分

【鉄道利用の場合】JR武生駅より福鉄バスで約40分

福鉄バス「南越線」→和紙の里行き「和紙の里」下車/福鉄バス「池田線」→金山行き「和紙の里」下車

https://www.echizenwashi.jp/

紙祖神 岡太神社・大瀧神社

https://www.echizen-tourism.jp/travel_echizen/visit_detail/36

※店舗や時期により商品の仕様や品揃え、価格が変わる可能性がありますので、ご注意ください。

※営業については最新情報をご確認ください。

[All Photos by Aya Yamaguchi]

© 株式会社オンエア