バイデン氏演説に代表反論の共和党議員、誤解させる意図ないと 20年前の外国事件に言及

7日夜にアメリカのジョー・バイデン大統領が連邦議会に施政方針を示した一般教書演説のすぐ後に、恒例の野党側の代表反論を行った共和党議員が10日、自分のスピーチの中で約20年前にメキシコで起きた性的人身売買事件を大きく取り上げたのは、バイデン政権下でのことだと有権者に誤解させるためではなかったと弁明した。

共和党のケイティー・ブリット上院議員(アラバマ州選出)による代表反論は、その内容に加え、自宅の台所だという撮影場所や、議員のドラマチックな話し方などが、テレビ放送中からアメリカで大きな話題となっている。

ブリット議員は大統領の演説に反論する中で、「麻薬カルテルによる性的人身売買組織の被害者となり、12歳の時に何千回も強姦された女性」の経験を劇的に語った。議員の報道担当は米紙ワシントン・ポストに対して、この女性とはカルラ・ハシント・ロメロ氏のことだと認めた。

ロメロ氏は自分が受けた被害について、過去に連邦議会などで証言しているが、自分がメキシコの売春宿などで強制的に働かされたのは2004年から2008年にかけてのことだと説明していた。

ブリット議員は代表反論の中で、自分が語っているこの女性の被害はいつ、どこでのことか言明しなかった。共和党のジョージ・W・ブッシュ政権中にメキシコで起きた事件について、ブリット議員は「これが第三世界で起きたことでも私たちは容認できない。ここはアメリカ合衆国で、もういい加減、それにふさわしく行動しなくてはならない」と、自宅の台所から力説した。

議員はこの前後では、アメリカとメキシコの国境に押し寄せる移民が急増しているのはバイデン政権のせいで、「バイデン大統領の国境政策は、まったくみっともない」などと力説した。

保守派FOXニュースに10日に出演したブリット議員は、「この恐ろしい話がバイデン政権下でおきたという印象を与えようとしたのか」と司会者に質問されると、「いいえ」と答えた。

議員は、バイデン政権が国境警備を弱体化させていると主張し、自分は代表反論でそれに言及したのだと説明。「バイデン大統領のもと、人身売買は増えている」と議員は続け、「性的人身売買がどういうことか、沈黙させようとするなどとんでもないことだ」、「現時点で天文学的なペースで起きていることで、そこに注目を集める必要がある」とも述べた。

共和党内からも批判

大統領が「連邦の状況」を議会に報告する一般教書演説に対する、野党からの代表反論は、その党の新進気鋭の若手が担うのが通例となっている。42歳のブリット議員は、共和党の女性上院議員の最年少。

しかし、ブリット議員の反論には共和党内からも批判的な意見が出ている。

連邦議会で演説した大統領に、議員がアラバマ州にある自宅の台所から反論するという演出について、ドナルド・トランプ政権でホワイトハウスの報道顧問だったアリッサ・ファラ・グリフィン氏はソーシャルメディアで、「彼女にとって一番大事な演説のひとつになるものを、どうして台所ですることにしたのか、理解できない」と書いた。

共和党関係者の間からはほかにも、議員のドラマチックな語り口が「演出過剰」で「練習させられすぎた」ものだという批判が出た。

政治風刺で有名な国民的コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」は9日夜、人気俳優スカーレット・ヨハンソン氏がブリット議員を演じ、そのしゃべり方や内容をあてこすり、話題となった。

ブリット議員を演じながらヨハンソン氏は、議員が語った性的人身売買事件の内容について「安心して。この話のディテールはぜんぶ本物です。何年のことで、起きた場所はどこで、この当時だれが大統領だったか……以外は全部」と指摘した。

他方、共和党の大統領候補になる見込みのドナルド・トランプ前大統領は、ブリット議員の反論から間もなくソーシャルメディアで、「移民犯罪に関する彼女の話は強力で、洞察力に優れていた。ケイティー、よくやった!」と書いた。

(英語記事 Katie Britt denies misleading voters in Biden State of the Union rebuttal

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