「もしトラ」に備える ~「前回のトランプ政権時代」に株価はどう動いたか【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】

(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

●2016年の米大統領選挙ではトランプ氏が勝利し大型減税策への期待で世界的に株価が上昇。

●2017年は税制改革の推進で米国株は大きく上昇したが2018年は米中貿易摩擦問題で株安。

●2019年は利下げで株高、トランプ勝利に過度な警戒は不要で経済・金融政策の見極めが大切。

2016年の米大統領選挙ではトランプ氏が勝利し大型減税策への期待で世界的に株価が上昇

3月8日付レポートでは、トランプ前大統領の公約集「アジェンダ47」の要点を整理したところ、トランプ政権時代と変わらず、米国第一の保護主義という基本方針が確認されました。そのため、11月5日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合、市場への影響を考えるにあっては、トランプ政権の4年間で株、為替、金利がどう動いたかを検証しておくことが重要と思われます。

そこで、今回はトランプ政権時代の株価動向を振り返ります。2016年11月8日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、大規模減税策への期待から世界的に株価が上昇し、いわゆる「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生しました。米国でも年末にかけて主要3指数が大きく上昇し、業種別では金融、通信サービス、エネルギーが好調なパフォーマンスとなりました(図表)。

【図表】前回のトランプ政権4年間における米国株の動き

2017年は税制改革の推進で米国株は大きく上昇したが2018年は米中貿易摩擦問題で株安

2017年のトランプ政権1年目も、米国株の堅調推移は続きました。トランプ氏はこの年、中間所得世帯を中心とする減税や、法人税率の引き下げを柱とする税制改革を推進し、米主要3指数は年間で2ケタの上昇となりました。また、業種別では情報技術の上昇率が36.9%と最も大きく、大手ハイテク株の上昇が目立ちました。情報技術に次いで高い上昇率となったのは、素材、一般消費財でした。

2018年の政権2年目において、トランプ氏は通商政策で対中強硬姿勢を鮮明にし、米中貿易摩擦問題が株式市場の懸念材料となりました。また、同年11月6日の米中間選挙では、民主党が下院の過半数議席を奪取する結果となりました。この年、米主要3指数は年間でそろって下落し、業種別ではヘルスケアと公益事業を除く9業種がマイナス圏に沈みました。最も下落したのはエネルギーで、素材、通信サービスが続きました。

2019年は利下げで株高、トランプ勝利に過度な警戒は不要で経済・金融政策の見極めが大切

2019年の政権3年目において、トランプ氏は中国製品に対する制裁関税を段階的に導入し、米中貿易摩擦問題は一段と深刻化しました。こうしたなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は、貿易問題を巡る不確実性を挙げ、7月、9月、10月と、連続利下げに踏み切りました。その結果、この年の米主要3指数はそろって2ケタの上昇、業種別でも11業種全て上昇し、ハイテク株の急反発で情報技術、通信サービスが特に好調でした。

2020年の政権4年目は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、金融市場は世界的に大きく混乱しましたが、米国では大規模な経済対策と積極的な金融緩和が株式市場を支えました。このようにトランプ政権の4年間は、減税政策は株高要因、米中対立は株安要因となり、米金融政策の舵取りも重要で、ハイテク株の成長が顕著だったといえます。つまり、トランプ勝利に過度な警戒は不要で、経済・金融政策の見極めが大切と考えます。

(2024年3月11日)

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「もしトラ」に備える ~「前回のトランプ政権時代」に株価はどう動いたか【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン