理論的には説明できないものの経験的に観測されるマーケットの規則性を「アノマリー」と呼びます。相場で囁かれるアノマリーを無条件に信じてしまうケースも多いのですが、実際の株価の推移とどこまで合致するのでしょうか。本記事では、『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』(KADOKAWA)から、著者の〈なのなの氏〉が実際の株価と照らし合わせて、アメリカの投資格言のひとつである「セルインメイ(Sell in May)」について詳しく検証します。
「株は5月に売却せよ=セルインメイ」の意味とは
アノマリーとは、理論的には説明することができないものの、経験的に観測されるマーケットの規則性のことを言います。ここでは、相場で囁かれ続けているアノマリーについて、実際当てはまっているのか、実際株価はどのような動きを見せているのか、検証しながら話をしていきたいと思います。
皆さまは「セルインメイ」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
「セルインメイ」は、保有している株式は5月に売却するのが望ましいということを示したアメリカの投資格言の一つです。
なお、この「セルインメイ」には続きがあり、格言の全体は「Sell in May and go away. Do not come back until St.Leger day. 」(5月に売り逃げなさい。(9月第2土曜日の)セント・レジャー・デー(※)まで戻ってきてはいけません)となります。
(※)イギリスで競馬レース「セントレジャーステークス」が開催される日。
この格言は、単に5月に株を売るよう注意喚起しているだけではなく、「5月から9月中旬にかけて株価は下がる傾向にあるので、5月のうちにいったん売却しておきましょう。そして、9月中旬からは株価は上がる傾向にあるので、投資を再開するのはそれ以降にしましょう」という意味を含んでいます。
この他にも、株価は特に10月末頃から堅調となる傾向にあることから、毎年10月31日に開催されるハロウィーンにちなんで、「株はハロウィーンに買え」との投資格言もあります。
投資格言の戦略が有効か、実際に見てみると…
それでは実際、売った方がいいと言われる5月直前の4月末に売って10月末に買い戻す、という戦略は有効なのでしょうか。1991年10月~2023年4月の日経平均株価データから、以下それぞれの戦略を取った場合の株式パフォーマンスを調べてみました。
① 10月末に買い、4月末に売る戦略
② 4月末に買い、10月末に売る戦略
③ 売買せず継続保有する戦略
結果として[図表1]の通り、パフォーマンスに圧倒的な差異を見出すことができました。
[図表1]株を買うタイミングの検証(1991年~2023年)
① 10月末に買い、4月末に売る戦略:資産は391%となる(100万円が391万円になる)
② 4月末に買い、10月末に売る戦略:資産は47%となる(100万円が47万円になる)
③ 売買せず継続保有する戦略:資産は177%となる(100万円が177万円になる)
一方で、アベノミクス(※)の取り組みが始まって以降ここ10年(2013年4月~2023年4月)にデータを絞ると、先ほどとは少し傾向の異なる結果が得られました([図表2]参照)。
(※)2012年12 月に成立した第二次安倍晋三内閣の経済政策。
[図表2]株を買うタイミングの検証(2013年~2023年)
① 10月末に買い、4月末に売る戦略:資産は125%となる(100万円が125万円になる)
② 4月末に買い、10月末に売る戦略:資産は171%となる(100万円が171万円になる)
③ 売買せず継続保有する戦略:資産は223%となる(100万円が223万円になる)
長期的には、10月末に買って4月末に売るという戦略は有効かと思われますが、ここ10年については、売買をせずにずっと持ち続ける方がパフォーマンスは高くなっています。
なのなの
サラリーマン兼業投資家
※本記事は『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。