続く計画延期、相次ぐ人為ミス…原発内部で見た廃炉の行方 東京電力福島第一原発

東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から13年。30年から40年とも言われる廃炉作業は今もなお、道半ばの状況です。今年は最大の難関と呼ばれるデブリの取り出しが計画されている一方で、廃炉作業ではトラブルが相次いでいます。これまで東京電力が何度も口にしてきた「着実かつ安全な廃炉」は本当に実現できるのか。福島第一原発に入りその現状を取材しました。

原発事故によって溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」は、1号機から3号機の原子炉や原子炉を覆う格納容器に溜まっているとみられています。デブリの取り出しは廃炉の最大の難関ともいわれ、東京電力は内部調査が進んでいる2号機から試験的に取り出す計画です。

奥秋直人アナウンサー「(5号機の)こちらにある大きな穴、この奥に格納容器があるということです。直径が55センチ、奥行が2メートル弱、2号機ではこの穴からデブリを取り出すための装置を入れていきます。」

試験的取り出し 量は「耳かき1杯分」

計画では、伸縮可能な釣り竿型の装置を使用します。格納容器につながる穴から挿入し、圧力容器を支える土台に通して、デブリを取り出すことにしています。

奥秋アナ「ちょうど今入って来たここが、5号機の圧力容器の真下です。2号機ではこの下に燃料デブリが溜まっていると思われます」

しかし、取り出せる量は、3グラム以下「耳かき1杯分」ほどです。1号機、2号機、3号機にある推定およそ880トンある燃料デブリをすべて取り出すのは、極めて難しいのが現状です。

さらに、去年発表した計画では、2号機の試験的取り出しを今年3月末までに実施する予定でしたが、今年10月ごろまでに延期されました。延期となるのは、今回が3回目です。計画の遅れは、1号機でも。

奥秋アナ「爆発で鉄骨がむき出しになった1号機ですが、現在大型カバーの設置工事が行われています」

水素爆発で骨組みがあらわになった1号機では、がれきの撤去の際に放射性物質が飛び散らないよう建屋全体を覆う、大型カバーの設置工事を行っています。しかし、1号機では高い放射線量が確認された場所もあり、工事が難航しています。

今年度の完成を目指していましたが、1号機の建屋の壁で毎時300ミリシーベルトの極めて高い放射線量が測定されるなどしたため、追加の工事が必要になり、来年の夏頃に延期しました。

度重なる計画の延期。東京電力は「着実かつ安全に廃炉を進めるため」と説明しますが、廃炉作業ではトラブルも相次いでいます。

「人為ミス」で相次ぐトラブル

2月7日、福島第一原発の汚染水を浄化する装置の排気口から、放射性物質を含む汚染水1.5トンが漏れました。汚染したとみられる土壌はすべて回収されましたが、配管の弁が開いたままだったことが漏えいの原因でした。

東京電力の広報担当者「結果として閉め忘れた状態だったということになります」

また、去年10月には作業員が汚染水を浴びるトラブルも起きています。この時、作業員は、本来着るべき防護用のカッパを着用していませんでした。

いずれも原因は、「人為的なミス」。相次ぐトラブルに廃炉作業の責任者は…。

福島第一廃炉推進カンパニー・小野明代表「我々が扱っているものが重大なものというか、放射性物質を含む何かがあれば重篤な事態になるという意識が足りなかったというのが間違いなくある」

多くの協力企業のもと、成り立っている廃炉作業。相次ぐトラブルは、東京電力の「管理体制の甘さ」をあらためて浮き彫りにしました。

福島第一廃炉推進カンパニー・小野明代表「帰還した人が不安にならないように、今回の事案の再発防止を含めて取り組んでいきたいと思います」

廃炉の目標は2041年から2051年。組織としての「廃炉作業の在り方」が、いま問われています。

1~3号機の廃炉に向けたスケジュール

1号機では、がれきの撤去の際に放射性物質が飛び散らないよう建屋全体を覆う大型カバーの設置工事を行っていて、来年夏ごろの完成を目指します。さらに、現在ドローンを使って内部の調査を行っています。

内部調査が最も進んでいる2号機では、遅くとも今年10月ごろまでに試験的取り出しを実施する予定です。

3号機では、2024年度から25年度までに、実施方法は決まっていませんが、内部調査を行う予定です。

スケジュールを立てることはもちろん大事ですが、これまでのようなトラブルが起き続け、計画倒れにならないような対策が何より求められます。

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