社説:東日本大震災13年 経験と教訓生かせているか

 東日本大震災の発生から、きょうで13年となる。

 災害関連死を含む死者、行方不明者は計約2万2千人。今も約3万人が京都、滋賀を含む全国各地で避難生活を送る。

 被災した東北地方の沿岸では、大規模なインフラ整備が進んだ。一方、今なお復興の足かせとなり、住民の帰還を阻んでいるのが、東京電力福島第1原発の過酷事故である。

 昨夏には、漁業者が反対する中で処理水の海洋放出が始まった。開始時点で134万トンたまっていた処理水のうち、2023年度中は約3万トン放出し、30年近く続くとしている。

 東電は処理水の放出で廃炉作業の用地を確保すると説明するが、肝心の廃炉の見通しは依然として不透明だ。最も困難な工程である溶融核燃料(デブリ)の取り出しは、23年度中の開始を予定していたものの、技術開発の遅れを理由に今年10月へ先送りした。

 延期は3度目である。デブリが除去できなければ処理水は発生し続ける。東電は、廃炉と処理水放出の完了時期について「見直す必要はない」とするが、疑問を抱かざるを得ない。

 処理現場では、作業員が廃液を浴びて入院するなどトラブルもみられる。国と東電は地元の不安に丁寧に耳を傾け、情報公開を徹底せねばならない。

 廃炉の道筋を示せない中で、岸田文雄政権は原発推進へ回帰した。昨年は最長60年としてきた運転期間の延長を認める法改正を進め、次世代型原発の開発まで打ち出した。事故の収束も核ごみ処分のめども立たず、原発の無理押しというほかない。

 帰還困難区域が残る福島県だけでなく、津波被害を受けた沿岸部は人口減が加速している。岩手県と宮城県の6市町では、昨年10月時点の人口が震災前と比べて3割前後も減った。内陸部よりも減少割合が大きい。

 国の復興予算で道路や住宅、防潮堤の整備が進んだとはいえ、長期にわたる維持管理費は自治体で賄わねばならない。人口減で財源や人員の確保はさらに厳しくなってくる。支援の枠組みを改めて検討したい。

 東日本大震災の発生から復旧、復興への道のりを教訓として生かせたのか。依然多くの課題があぶり出されたのが、1月に起きた能登半島地震だった。

 過疎地に散在する避難所には物資や情報が十分に届かず、長引く断水で厳しい生活環境を強いられた。他府県の自治体やボランティアによる支援の受け入れにも時間を要した事態を含め、今後の検証が欠かせない。

 石川県の志賀原発の周辺では、住宅倒壊や道路寸断で事故時の屋内退避や避難路に使えない実態が浮き彫りになった。

 能登は今なおインフラの復旧が続き、暮らしとなりわいの復興はこれから本格化する。東北の教訓は重みを増している。

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