春告げる舞 4年ぶりに 福島県会津美里町の西勝の彼岸獅子 保存会員、伝統継承の思い胸に練習

4年ぶりの披露に向け練習に励む保存会の会員

 福島県会津美里町西勝地区に伝わる町無形民俗文化財「西勝の彼岸獅子」は春分の日の20日、地区内で繰り広げられる。新型コロナウイルスの影響で中止が続いていたため、4年ぶりとなる。保存会の会員は伝統継承への思いを胸に、練習に励んでいる。

 「笛の音がでねぇな」「久しぶりだから忘っちゃ」―。6日、西勝地区公民館で本番に向けた練習が始まり、会員約20人が笛や太鼓の音を響かせた。踊り手として臨む伊藤雅人さん(42)は「踊り切るために必要な基礎体力を練習でつけていきたい」と額の汗を拭った。

 彼岸獅子は雄、雌、太夫の3匹の獅子が笛や太鼓の音に合わせて舞う春の風物詩。江戸時代に集落で発生した大火や疫病からの復興を願い、始まったと伝わる。保存会によると、西勝の彼岸獅子は動きが激しいのが特徴という。踊り終えた踊り手は、筋肉痛でしゃがむことができなくなるほど下半身を使う。

 踊り手はかつて20~30代の若者が担っていた。後継者不足などで年齢層は上がり、現在は42歳、44歳、50歳の3人が務めている。新たな踊り手が現れなければ近い将来、披露することが困難となる。

 状況を打開するため保存会は昨年から、地区住民に限っていた担い手を町内外から広く募ることにした。古来のしきたりを見直すことは「苦渋の決断」だったが、彼岸獅子を残していくためかじを切った。「プレーヤー募集」と書いたポスターやチラシを各所に掲示している。

 今回、町内の別の地区に住む農業大島武生さん(24)が新たに加わり、笛役としてデビューする予定だ。保存会の小池健一会長(70)は「地域の財産を守っていくために、若者の加入はうれしい」と喜んでいる。

 4年ぶりとなる今回は規模を縮小して行う。午前10時から伊佐須美神社で参拝した後、同10時20分から町内竹原地区、同10時40分から西勝地区の各所を練り歩き、舞を披露する。

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