スーパーフォーミュラ2024年シーズン開幕!話題豊富なシリーズ初戦を制したのは?

3月9日から10日にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開幕したスーパーフォーミュラ2024年シーズン。同シリーズの開幕戦は毎年4月上旬に行われてきたが、鈴鹿サーキットで開催されるF1世界選手権の日本GPが今季から4月にスケジュールが移ったことも影響し、例年より1ヶ月早い開幕となった。国内の2輪ロードレースの最高峰であるJSB1000クラスとの併開催である2&4レースということもあり、サーキットには多くのファンが来場。2日間で3万3000人が現地に足を運び、国内最高峰のバトルに酔いしれた。(文:河村大志/写真提供:井上雅行、日本レースプロモーション)

オフシーズンから話題豊富だった2024年シーズン

JRP(日本レースプロモーション)が推し進めている「SUPER FORMULA NEXT50」プロジェクト。原材料や製造過程で出るCO2排出量を約75%抑制したバイオコンポジット素材を使用した新型マシン「SF23」や、再⽣可能原料を活⽤した横浜ゴムのレーシングタイヤが採用されたりと「カーボンニュートラルへの対応」と「エンターテインメント性の向上」実現に向けて動き出している。

インパルから参戦するF2チャンピオンのテオ・プルシェール。

今季からは、レースで使用される燃料が「102オクタン以下の市販無鉛ガソリン」から「シリーズ所管団体が指定する燃料のみ」にレギュレーションが変更。シリーズ中盤あたりからカーボンニュートラル燃料の導入も予定されている。

また、大きな変更点としては、これまでさまざまなメーカーのものが使われていたダンパーがオーリンズ製に統一化されたことだ。セッティングにおいて大きな役割を担う箇所だけに、ダンパーの統一化は各チーム悲喜交々である。

そして何よりオフシーズンを賑わせた話題といえばドライバー市場だ。今季は多くのルーキーが参戦、そして移籍の多い年となった。

トヨタ陣営はディフェンディングチャンピオンである宮田莉朋がFIA F2とELMSに参戦するため国内レースを卒業。チャンピオン不在の中での戦いとなる。また、前年までホシノインパルから参戦していた平川亮は、マクラーレンのF1リザーブドライバーに就任したため不参加。平川のチームメイトだった関口雄飛はコーディネーター兼リザーブドライバーとしてKCMGに加入した。

レギュラードライバーが3名抜けたトヨタ陣営に、ホンダから福住仁嶺と大湯都史樹が移籍。福住はKCMGで小林可夢偉のチームメイトに、大湯はCERUMO・INGINGで阪口晴南とともに参戦する。

そして、昨年FIA F2でチャンピオンに輝いたテオ・プルシェールがスーパーフォーミュラに参戦。KCMGから移籍した国本雄資とともにインパルで今季を戦うことになった。

現役高校生Jujuが、レギュラードライバーとして参戦

宮田が抜けたTOM’Sには坪井翔が加入。継続参戦となった笹原右京がチームメイトを務める。KONDO RACING、docomo business ROOKIEは昨年と同じ体制で変更なしとなっている。

海外から帰ってきた岩佐歩夢。最強チームであるMUGENからチャンピオンを狙う。

福住と大湯が抜けたホンダ陣営。ドライバーズタイトル3連覇を逃したTEAM MUGENは、昨年ランキング2位のリアム・ローソンがレッドブルのF1リザーブドライバーとしてチームに帯同するため卒業。ローソンが抜けたシートには、昨年FIA F2でランキング4位となった岩佐歩夢が加入した。野尻智紀が同チームから継続参戦し、TEAM MUGENは強力なラインナップを維持。今年もタイトル最有力候補だ。

B-Max RACINGは1台体制に縮小。同チームには昨年のスーパーフォーミュラ・ライツでチャンピオンに輝いた木村偉織が加入し、ステップアップを果たしている。福住が在籍していたスリーボンドには三宅淳詞が加入。三宅は同シリーズで2022年以来の参戦となる。

そして最も注目を集めたのは現役高校生Jujuの参戦だ。昨年まで欧州で活動していたjujuは昨年末に行われたスーパーフォーミュラの合同テストに参加し、ルーキー枠として3日間のプログラムを消化。テストでステアリングを握ったTGM Grand Prixからレギュラードライバーとして2024年シーズンを戦うことになった。

また、昨年までB-Max RACINGに在籍していた松下信治が開幕直前にTGM Grand Prixのシートを射止めている。

史上最年少、そして初の日本人女性としてスーパーフォーミュラに参戦するJuju。

本人もびっくり!?阪口晴南が初のポールポジション獲得!

今年初の予選は気温、路面温度ともに低い難しい状況。予選Q1のA組はプルシェール、岩佐とF2組を含めた11台で競われた。

スーパーフォーミュラで自身初のポールポジションを獲得した阪口晴南。

強力な名前が並ぶ中、トップでQ2に進出を決めたのは、昨年の最終戦で初優勝を挙げ勢いに乗る太田格之進。太田がマークした1分36秒284を上回るドライバーは現れず、山本尚貴、岩佐、木村、松下とホンダ勢が上位を占めた。Q1を6位で終えた山下が上記の5名とともにQ2に駒を進めている。

B組はフリー走行から好調の野尻、注目を集めているJujuら10台が出走。トップタイムを叩き出したのは全セクターでベストを並べた野尻だった。開幕前のテストで常にトップタイムを記録していた牧野任祐が2番手、以下、阪口、坪井、福住、佐藤蓮までがQ2進出を果たしている。

ポールポジションが決まるQ2。大方の予想はQ1で圧倒的な速さを見せた野尻だったが、最速タイムを刻んだのは阪口だった。

阪口は太田が記録したトップタイムを塗り替えて暫定1位に浮上。その後ろでは前半セクターで最速を刻みながら野尻がアタックするも、後半ではタイムが詰めることができず3番手でチェッカーを受けた。これにより阪口がスーパーフォーミュラで初のポールポジションを獲得した。太田、野尻に続いたのは佐藤、山本のNAKAJIMA RACINGの2台。昨年の怪我からの素棋戦となった山本は上々の出だしとなっている。

苦しい戦いが続いていた阪口にとって大きな自身となるポール獲得となった。

2024年 スーパーフォーミュラ 開幕戦 予選結果(Q2)

1 38 阪口晴南 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING 1’35.789
2 6 太田格之進 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 1’35.880
3 16 野尻智紀 TEAM MUGEN 1’35.926
4 65 佐藤蓮 PONOS NAKAJIMA RACING 1’36.034
5 64 山本尚貴 PONOS NAKAJIMA RACING 1’36.057
6 3 山下健太 KONDO RACING 1’36.124
7 8 福住仁嶺 Kids com Team KCMG 1’36.156
8 5 牧野任祐 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 1’36.295
9 55 松下信治 TGM Grand Prix 1’36.351
10 36 坪井 翔 VANTELIN TEAM TOM’S 1’36.387
11 15 岩佐歩夢 TEAM MUGEN 1’36.446
12 50 木村偉織 San-Ei Gen with B-Max 1’36.851

スタートでトップに立った野尻が隙のない走りで開幕戦優勝

スタートでレースを決めた野尻。

日が差し始めたこともあり、午前中に比べ気温と路面温度が上がるも、気温12℃、路面温度22℃とレースを行うには厳しいコンディションには変わりない。

そんな中、決勝レースが31周で行われた。ポールポジションの阪口は無難なスタートを決めるも、好スタートを決めた野尻がホールショットを奪いトップに浮上。この時点で勝負は決してしまった。

その後方ではデビュー戦となるJujuがターン1でコースオフ。しかし、体勢を立て直したjujuはコースに復帰してみせた。

低い路面温度が影響したか。Jujuはタイヤをロックさせターン1でコースオフを喫してしまう。

トップの野尻が快調に飛ばす中、4番グリッドスタートの佐藤が2番手に浮上。ポールシッターの阪口は3番手、以下、山本、山下の順で周回を重ねていく。

2周目のターン1で国本と小高一斗が接触し両者リタイア。このアクシデントによりセーフティカーが出動となった。レースは6周目に再開するが、野尻は関係なしとばかりに後続とのリードを広げていく。

スタートで2番手に上がった佐藤だったが、野尻を捉えることができない。

10周終了にピットストップが可能になると、上位勢では山本や牧野がピットイン。トップの野尻も13周終了時にピットに入り実質トップでコースに戻る。

路面温度が低い今大会ではアウトラップでのロスタイムが大きくなる。セーフティカーが入らない限り、先にピットを消化する方がロスが少なくなるので、上位勢の早めのピットストップは正解。このピットストップで山下が順位を2番手まで上げることに成功している。

ピットを引っ張った佐藤とは対照的に、いち早く動いた山下が大きくポジションを上げることに成功した。

そんな中、1人ステイアウトを選択したのが岩佐。残り5周となった時点でようやくピットに入った岩佐はコールドタイヤで苦しいアウトラップで坪井を抑えきり10位にポジションを上げることに成功し、ポイントを獲得してみせた。

そんな岩佐をよそにトップの野尻は安全マージンを築き余裕のチェッカー。タイトル奪還を狙う2度の王者がこれ以上ないシーズンスタートを切った。

2位はピットで順位を上げた山下、3位には昨年の怪我から復帰を果たした山本が表彰台を獲得してみせた。以下、太田、佐藤、福住、阪口、松下、新品タイヤで追い上げを見せた岩佐は9位でチェッカーを受けている。

初レースとなったJujuは17位で完走。予選では大差をつけられたJujuだったが、決勝のレースペースはまずまずのタイムを刻み、トップと同一周回で無事チェッカーを受けている。

3度目の王者を目指す野尻が完璧なレースを披露した。
まずはホンダが1勝を挙げた今シーズン。トヨタの巻き返しはあるのか?

2024年 スーパーフォーミュラ 開幕戦 決勝結果

1 16 野尻智紀 TEAM MUGEN 31Laps
2 3 山下健太 KONDO RACING +1.855
3 64 山本尚貴 PONOS NAKAJIMA RACIN+3.091
4 6 太田格之進 DOCOMO TEAM DANDELION RACING+3.845
5 65 佐藤蓮 PONOS NAKAJIMA RACING+13.705
6 8 福住仁嶺 Kids com Team KCMG+15.716
7 38 阪口晴南 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING+16.833
8 55 松下信治 TGM Grand Prix+17.836
9 15 岩佐歩夢 TEAM MUGEN+18.425
10 5 牧野任祐 DOCOMO TEAM DANDELION RACING+23.912
11 36 坪井 翔 VANTELIN TEAM TOM’S+25.770
12 50 木村偉織 San-Ei Gen with B-Max+30.377
13 14 大嶋和也 docomo business ROOKIE+33.224
14 12 三宅淳詞 ThreeBond Racing+45.170
15 37 笹原右京 VANTELIN TEAM TOM’S+52.160
16 39 大湯都史樹 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING+53.621
17 53 Juju TGM Grand Prix+1’09.374
18 19 T.プルシェール ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 1’18.873
19 7 小林可夢偉 Kids com Team KCMG DNF
– 20 国本雄資 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL DNF
– 4 小高一斗 KONDO RACING DNF

© 株式会社モーターマガジン社